21話 再会、そしてユグへ
なんでアリスがここにいるのだろうか。私はそれを聞くためにアリスに筆談で話しかけた。
――アリス、こんなところでなにをしているの? もしかして迷子?
〈……もしかしてカミラお姉様?〉
アリスは首を傾げ、目を細めながらそう聞いてくる。
――そうだよ。それで、なんでここにいるの?
〈森で遊んでいたのですが、ふと気づいたら迷ってしまいまして〉
――ああ、やっぱり迷子だったんだね
私はそこまで書くと、後ろを振り返りこっそり三人に違う文字を見せる。
――どうしよう、この子の家ラスクの家なんだけど
〈……私が連れて帰ります。三人は先に行っててください〉
〈あ、もしかしてそこにいるのはニコラスさんではありませんか?〉
そこでアリスはニコラスの声に反応し、彼に話しかけてきた。ニコラスの声量がどのぐらいかは知らないが、大きかったのかもしれない。
〈ええ、そうです。アリスお嬢様、僕がワトソン家まで案内しますので、ついてきてください〉
〈あ、わたくし実はもうワトソン家の者ではないのですよ。使用人の方々に拾われまして。だから今はユグに住んでます〉
――え、家出したっこと!?
〈そうですね。使用人の方々に誘われたのです。一緒に家を出ないかと〉
アリスはどこか遠くを見るような表情をしている。そして、一瞬憂いを帯びた表情に変化したかと思うと、一気に話を進めた。
〈わたくしはその誘いに乗りました。わたくしとしてもあまりあの家は好きではなかったので。虐待もされてましたし〉
アリスは一旦ここで言葉を切った。
〈それに、カミラお姉様が既にいなくなってしまった以上、わざわざ家にいる必要を感じなかったので〉
――そうだったんだ……。ごめん、虐待の件については気づいてなかったよ
〈いえ、カミラお姉様にだけは絶対に悟られないようにしてましたから。わたくしもカミラお姉様のことを見殺しにしてしまっていましたし〉
アリスはそこまで言ったあと、急に顔を赤らめた。そして、その隣ではニコラスが昼食用のパンを差し出している。
〈申し訳ございません。ここ一日飲まず食わずでして……〉
なるほど、お腹が鳴ったのか。それも多分、かなり大きいのが。
私は荷物から水筒を持ってくると、アリスに差し出す。それに対しアリスは、〈ありがとうございます〉とお礼を言って受け取った。
〈なんだろう。最近君達二人の家族に遭遇しすぎてない?〉
さっきまで黙っていたアランが、そうツッコミを入れてくる。正直、その件については全く否定できない。
――そんなこと言われても知らないよ。アリス以外皆追ってきてるから必然的遭遇だし
〈カミラお姉様……一体ここ数日で何があったのですか……?〉
――私にも分からないよ。それよりアリス。私達はちょうど今からユグに行くつもりだったからそこまで送るよ
〈ありがとうございます! それではお願いします〉
――次から森に入るときは大人と一緒にね……
次回ユグ編です