表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/34

19話 空飛ぶイルカ その2

 あの後私は、真っ赤になった肌と目が元の色になるのを待っていた。幸運というべきか、その間にイルカは来なかった。


 ――ねえ、さっき言ってたアランが初めて空飛ぶイルカを見たっていう話の下りの続き教えて


 〈ああ、あれね。単純な話だよ。あの時も確か誰かが泣いててね。そのときにやってきたんだよ、イルカが〉


 ――なんだ、アランが悲しくなってたわけじゃないんだ


 〈いや、俺も正直その時色々あったけどね。ま、そんなことはどうでもいい。二人が待ってるから行くよ〉


 アランは座り込んでいた私の手を掴み、私を立たせる。私は素直にアランに従い、二人の元へと歩き出した。 


 ――そういえば、今度どこの街に向かうかとか決めてあるの?


〈あー、ユグって街に行こうかなとは前々から考えてたんだよ。森の中にある街なんだけど、中々レアなモンスターとかがいるからさ〉


――あー、あそこね。魔法の木のフルーツが有名だよね。


〈そうそう。ここらへんより強いモンスターが多めになってくるから気をつけないとね〉


 私達がそんなことを話していると、ハルちゃんが遠くで手を振っているのが見えた。私達は走って二人の元へと着く。


〈ついつい遊んじゃって結構遠くまで行っちゃってました!〉


――楽しそうでなによりだよ。イルカは見つかった?


〈いいえ! 全く見つかんないです!〉


〈……だろうね〉


 アランがぼそりとそう呟く。確かにここまで楽しんでいたらイルカが来ることはないだろう。いや、楽しんだ方がいいのだろうが。


〈あ! あれもしかしてイルカさんじゃないですか!?〉


 突然、ハルちゃんが叫ぶような口の形をしたかと思うと、私達の前方の空を指さした。


 私はそれに釣られて上を見上げると、そこには確かに空飛ぶイルカが居た。イルカは予想よりも低い場所で飛んでいた。もっと高い上空を飛んでいると思っていたから意外である。


 私が突然のイルカの登場に面食らっている間に、イルカは更に下へと飛行をした。


 そして、私達の方に向かってきたかと思うと、私の横を通り過ぎてそのままUターンして海に帰っていった。


 その時、私はなにか心の中のわだかまりが解けた感じがした。なんというか、心がすっきりしたというか、つっかえが取れたような、そんな感じだ。


〈空飛ぶイルカは生き物の感情、特に悲しみを主食にしていると聞いたことがあったのですが、本当みたいですね。なんか心がすっきりしました!〉


 ハルちゃんは興奮しながら早口で喋る。


――へー、そうなんだ! なんかロマンチックな生き物だね


〈僕も心なしか疲れが少し取れた気がします。ここまで遠かったですけど来たかいはありましたね〉


 ニコラスはそう言って肩を回している。どうやらそこそこ疲れていたらしい。まあニコラスにはかなり荷物を持たせてしまっているので当然ではあるが。


〈さて、イルカも見れたしそろそろ帰ろうか。本当ならもう少し居たいところだけど、もうそろそろ夜が来る〉


――名残惜しいけど仕方ないね。


 そうして私達は、夕暮れの太陽に照らされながらハレントへと帰っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ