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17話 自己中母、襲来

 私とハルちゃんはあの後、宿に戻るとガム海に行かないかと後の二人に提案した。


 その提案に対し二人は合意した。まあ否定する理由がないから当然だろう。むしろアランはその提案に積極的に乗ったぐらいだ。


〈あそこは面白い場所だよ。たまに空飛ぶイルカが見れるし〉


〈え、空飛ぶイルカ見たことあるんですか!?〉


 アランの発言に、ハルちゃんは目を輝かせる。アランはその様子に少し驚きつつも、笑顔でこう答えた。


〈一回だけだけどね。そもそも俺あんまりガム海行かないし〉


――なんで行かないの?


〈この辺にしては珍しくモンスターがほとんどいないからだね。だから行く理由がないんだよ〉


〈なるほど。ところで空飛ぶイルカはモンスターなのでしょうか?〉

 

 ニコラスはアランの隣で水を飲みながらそう聞いてくる。私も正直、そこは気になっていたが、言い出せなかったので少しありがたい。


〈モンスターではないんじゃないかな。あくまであのイルカは飛べるだけで後は普通のイルカと同じだと思う〉


〈空を飛べるイルカさんは一匹しかいないのでしょうか?〉


〈それは分からないかな。まあ一匹だけなんじゃない?〉


 私達はそんな会話をしながら寝支度をし、ベッドに入った。


 翌日、私達がガム海に向かっていると、後ろから何者かに声をかけられた。正確には、声をかけられたことをニコラスに教えられた。


 私は後ろを振り返ると、そこには母であるラスクと、姉であるエルダが立っていた。


――お母さんにお姉ちゃん。何のよう?


 私は警戒心を(あら)わにしながら二人に筆談で話しかける。


〈元気にやってる、カミラ?〉


――ええ、おかげさまで。とっても


 私は皮肉を込めてそうコメントすると、ラスクは嬉しそうに笑い、エルダは苦笑いした。どうやらラスクには皮肉が通用しないらしい。


〈そう、なら良かった。それで……お願いがあるんだけど、いいかしら〉


〈お待ち下さいラスク様。何やら随分本題に入るのが早いのですね。なにか急いでいるのですか?〉

 

〈ああ、居たのねニコラス。それあなたに関係あるかしら。私は今カミラと話しているのだけど〉


〈ええ、関係ありますね。一応これでも保護者ですので〉


 ニコラスはラスクを怒りと不快感の籠もった目で睨みつける。


〈ふーん、まあいいわ。それよりカミラ。親孝行だと思ってお金を貸してくれないかしら〉


 私は唇の動きを読み取ったとき思わず吐きそうになってしまった。この人がここまで開き直れるのはなんの魔法だ? 


――お断りします。私に人に貸すだけのお金はありません 


〈ちょっとだけでいいから! ね? ね?〉


 ラスクは食い下がり、私へと近づこうとした。だが、それは叶わなかった。アランが炎で境界を作ったからだ。


〈お引取りください。我々はあなた方にビタ一文たりとも貸す気はありません〉


〈あら、あなた誰かしら。首を突っ込まないでいた――〉


 ラスクの口から続きが出ることはなかった。ハルちゃんのダーツがラスクを掠めたからである。


〈率直に言って不快です。さっさと視界から消えてください〉


〈何よ! 皆して私をいじめるって言うの! いいわよ、そこまで言うなら――エルダ! やっておしまい! ……エルダ?〉


――あなたに呆れてどこかに行っちゃいましたよ。体の運び的にこのまま旅にでる気だと思いますよ


 実を言うと、私は最初にやってきたエルダの表情を見た瞬間、エルダが逃げようとしているのが分かっていた。ここまで来るにしては荷物も装備も過剰すぎるのだ。


〈チッ……どいつもこいつも親不孝者が! こうなったら私一人であんた達全員片付けて金ぶんどってやる!〉


 もはや言う必要すら感じないが、この後ラスクは無様に負けた。なぜ、四対一で勝てると思ったのだろうか。私は凄く疑問に思う。

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