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14話 戦闘(銭湯)

 私達はパンを食べた後、この街の外れにある温泉へと足を運ばせていた。


 私は誰かと風呂に入るのはあまり好きではない。筆談ができないため会話が不可能だからだ。手話で会話しようにも唯一手話のできるニコラスは男だ。


 一人で風呂に入るときも、私は使用人を使えない。いや、使う気は全くないのだが。むしろ、なぜトールなどが使っているのかが理解できない。使用人に頼らずとも一人で風呂ぐらい入れるだろうに。


 私がそんなことを考えていると、ハルちゃんが心配そうにこちらを覗き込んできた。


〈なんか憂うつそうな顔してますけど、大丈夫ですか? もしかしてさっきのお兄さんの件で……〉


――大丈夫、それとは無関係だよ。単純にちょっと考えごとしてただけ。


 どうやら顔に出ていたらしい。アランの時といい、私は意外と顔に出るタイプなのかもしれない。


〈ならいいんですが。家族にああいうことを言われるのって凄く辛いですよね〉


――そうだね。正直、結構心に来るものがあったよ。


 口振りからみるに、ハルちゃんもそういうことがあったのだろうか。正直気になったが、聞くのはやめておこう。彼女の為にはならない。


 温泉は意外と空いていた。ここの近くは温泉地帯になっていて、客が分散されているからかもしれない。


 そこで私はハルちゃんと共に湯船に浸かると、吐息を吐く。


 ここ最近、本当に色々ありすぎて疲れた。家から追い出されたと思ったら今度は伝説のモンスターに遭遇して。それで気づいたらなんかお兄ちゃんが襲ってきて、それで連行する羽目になって。


 正直なところ、私は家を追い出されたことは嫌だった。家族は私を愛してはくれなかったが、それでも私は家族を愛していた。


 いや、妹のアリスだけは私のことを慕ってくれていたな。アリスは今頃何をしてるんだろう。


 私が物思いにふけっていると突然、横からお湯が飛んできた。


 私はお湯の飛んできた方向を見ると、そこにはハルちゃんがいたずらっぽい笑顔を浮かべていた。


 全体的に小柄な彼女だが、性格も割と子供っぽいのだろう。笑顔には無邪気さが感じられる。


 私は反撃をしかけるが、お湯はえらく遅い速度で飛んで行った。


 そのお湯をハルちゃんは避けると、私に向かってこう言ってきた。


〈ふっふっふ。私の力を使えばお湯なんて簡単に避けられるんですよ〉


 卑怯だ。どう考えてもずるい。そう伝えたくても伝えられない。いや待てよ。魔法で文字を空中に書けば……。


 そう考えた私は、絵画魔法「ペイント」を使い文字を書く。


――ずるいずるい! 卑怯者!


〈勝てばいいんですよ勝てば!〉


――なんかキャラ変わってない? まあいいや、そっちがその気なら――


 私はそう書きながら手を動かし、動魔法「ムーブ」を唱える。


 そして、お湯の塊を複数私の頭上に掲げると、ハルちゃんに向けて発射する。


〈うわっ!〉


 ハルちゃんは慌てて湯船に潜り、私の攻撃を回避する。ちえっ、意外と勘良いな。


〈いきなり全力じゃないですか! いいですよ、ならこちらも――〉


 そう言ってハルちゃんはお湯の時を圧縮し、すごい速度でこちらに飛ばす。


 それに対しこちらは反射魔法「ミラード」を使いお湯を跳ね返す。お湯はハルちゃんに直撃し、彼女は怯む。



〈うわっ! 反射するなんてずるい!〉


――時を操ってる人にだけは言われたくないね


 私はそのまま再び動魔法「ムーブ」を使いお湯を発射しハルちゃんに止めを刺す。


 〈うぅ……なにも追い打ちかけなくてもいいじゃないですか……〉


 ハルちゃんは頬を膨らませると、こっちに苦情を言ってきた。私はその姿がかわいくて、少し笑ってしまった。


――ごめんごめん、ちょっとやりすぎちゃった


 私はそう書くと、ハルちゃんの頭を軽く撫でる。なんというか、妹がもう一人できたみたいだ。


 私はそう思ってまた笑ってしまった。すると、ハルちゃんはますます頬を膨らませ、〈なんで笑ってるんですか!〉と言ってこちらを睨んできた。


 私は更にそれで笑ってしまい、結局この後五分ぐらい、似たようなやり取りが続いた。


 



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