13話 クズはどこまでもクズ
トールはその場に跪くと、私達を睨みつけた。
〈なぜだ……なぜ正義であるはずの俺が負ける……?〉
〈トールお坊ちゃま。あなたは正義ではありませんよ。さぁ、カミラお嬢様に謝りなさい〉
〈ふざけるな。こいつが細工したのは間違いないんだ! 謝るのはカミラの方だ!〉
〈まだそのような妄言をおっしゃるのですか。それは恐らく単純にあなたのミスでしょう〉
ニコラスはため息をつくと、トールにこう諭す。
〈トールお坊ちゃま。人間なら誰しも失敗ぐらいありますよ。でもそれを人のせいにしてはいけません〉
〈人のせいになどしていない! 実際にカミラが悪いのだからな〉
――お兄ちゃん、そろそろいい加減にしてよ。そろそろ私怒るよ?
〈あ、やんのか? いいぜ、兄妹喧嘩と行こうじゃないか〉
トールは立ち上がると、剣を構え戦闘態勢を取る。私は手話で魔法を唱えられるよう両手を空ける。
トールは私に突進すると、こちらに剣を振るってきた。私はそれをしゃがんで躱すと、手を素早く動かし爆発魔法「バースト」を使いトールを吹き飛ばす。
〈グハッ!〉
トールはさっきのニコラスの一撃の影響もあってか、あっさりと倒れた。
〈なんだ、瞬殺じゃん〉
横を見ると私の隣でアランが弓を構えていた。恐らくいざとなったら矢を放つつもりだったのだろう。
〈……カミラお嬢様。どうしますか?〉
――放っといていいでしょ。どうせこの人なに言っても自分のせいと認めないよ。
〈そうですね。では放っといて先に進みましょう〉
〈え、大丈夫なんですか……? この調子だとまた襲いに来ますよ?〉
ハルちゃんは不安そうな顔をしている。当然の反応だろう。
――じゃあ衛兵にでも突きだす?
〈はい。正直それが一番安全だと思います。私がこの人連れてきましょうか?〉
――いや、それなら私達皆で行こう。一人だと危険だよ
〈分かりました。それでは連行しますか〉
ハルちゃんはそう言って旅用のロープでトールを縛り上げると、そのまま連行する。
〈気のせいかな。ハルさんやたら手慣れてない?〉
〈私よく犯罪に巻き込まれるので、連行するの慣れちゃったんですよ。慣れたくなかったですけど……〉
ハルちゃんはうなだれ、目を閉じる。その様子を見てアランは苦笑いを浮かべる。
それから私達は衛兵に彼を届けると、再びパン屋さんに向かい、美味しいパンを食べた。正直、もうあんな兄の相手は二度としたくない。
私はパン屋の帰り道で、そんなことを考え、深くため息をついた。
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