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VS妖怪リモコンずらし

作者: みくた
掲載日:2021/02/25

 ある日の夕方。洗濯が終わったことを告げる電子音のメロディーが家の中に鳴り響く。

「家主よ。洗濯が終わったぞ。」

 先日から我が家に居座っている妖怪、ハンガー隠しが呼び掛ける。

 彼女は今、台所で夕飯の支度をしている。

「はいよ。」

 リビングでテレビを見ていた俺は適当に返事をした。

「妾は干して来いと言っておるのじゃが・・・」

 少ししてハンガー隠しがリビングに顔を出す。

 十二単にフリル付きのエプロンと奇妙な格好をしている。

「え?ああ、今良い所だからこれが終わったらやるよ。」

「全く、大人にもなってその調子でどうする。」

 ハンガー隠しは溜息をつくと、ぶつぶつと文句を言いながら台所へ戻って行った。

 完全に母親である。


「・・・さて。」

 十分ほどして番組が終わり洗濯物干しに取り掛かるため、傍らのテーブルに置かれているであろうリモコンを手探りで探す。

「あれ?」

 リモコンが無い。

 テレビをつけた時、手の届く位置に置いた筈だ。

 テーブルの上を探る手元に視線を移す。

「・・・。」

 思考が一瞬停止する。

 テーブルの奥に誰か居る。

 細身で茶髪でグレーのセーターを着た若い男が無表情で座っている。その手元には俺が探していたリモコンがある。

「・・・どちら様ですか?」

 自宅で知らない人に出会うことに対し、若干の慣れを覚えていた俺は聞いた。

「どうも、妖怪リモコンずらしです。」

 男は静かに口を開く。

 やはり妖怪の類だったか・・・

「・・・ああ、うん。とりあえず、リモコン返して。」

「どうぞ。」

 あっさりとリモコンが返却され、俺はそのままテレビの電源を切った。

「・・・ええと、帰っていただけますか?」

 先ほどと変わらぬ様子で居続けるリモコンずらしに退去を促す。

「いやぁ・・・」

 表情に薄っすら苦笑い成分を入れながら彼はそう言った。

「いやぁ・・・じゃねぇよ。」

「家主、さっさと洗濯物を干さぬか!」

 ハンガー隠しの声が台所から飛んでくる。

「はーい、ただいま。・・・とりあえず、お前も手伝え。」

「はい。」


 そして、俺はリモコンずらしを引き連れ、洗濯物を干しに行くのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ハンガー隠しの和服+エプロン、可愛いですね。 家事を手伝ったり仲良く会話したり、家族みたいで微笑ましいです。
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