第7話「冒険、それはファンタジーの証」
早く宿屋に行かせてあけたいのに、妄想が邪魔をして着かなかった……。すまぬ咲空よ……。
「ギッル~ドカ~ドッ、ギッルドカ~ドッ!!」
異世界に来て色々なテンプレがあったけど、この感動を越えるのはかなり先になりそうだ。
手に持ったギルドカードを夕日に当てる。そこには確かに異世界の言葉で、私の名前が刻まれていた。
「……私、本当に冒険者になったんだ……!!」
ファンタジーには冒険が付き物。そして冒険をする者を《冒険者》と呼ぶ。その一員になったんだ……。
ファンタジー小説の主人公達は私に様々な冒険を見せてくれた。
時には世界を救いながら、魔王と戦ったり……。
またある時は悪に手を染めながらもなお、己の正義を貫き影で勇者を助けたり……。
中には普通の人生、スローライフを目指し森を開拓したり……。
「私にもできるかな……」
平成のゆとりッ子で勉強は中の下、運動は好きだけどイコール得意ってわけじゃないし……。
それに知らない異世界で頼れる人も全く居ない。
…けど。
「いつか冒険、出来るかな」
いや……そうだ、私は見てきたんだ。
冒険は《出来る》《出来ない》じゃない……。
冒険は《するか》《しないか》だ。出来る出来ないなんて問題じゃない!
「私は絶ッ対に冒険する。この世界を……!!」
私は決めた。この知らない世界、地球とは異なる異世界を冒険することを……
そして、すっかり忘れていた。
宿屋を探すという元々の目的を。
「それが今日はもう満室でね……」
「そんなぁ………」
これで三件目……。
「すまないねぇ」
「いいんです、本当に……」
「大丈夫そうには見えないけど……」
確かにそうかも知れない。今の私は転移前に着ていた学生服でなく、この街で買った謂わば見た目も普通な服なのだ。そんな街の外で野宿するような格好には見えないだろう。
けど、困ったなぁ……。このまま野宿なんてしたら凍死、もしくは魔物に喰われてゲームオーバーなんて可能もあるし……。うむむぅ……仕方ないか。
「あの……一番高い宿屋ってどこですかね?」
私は宿を回って探すより、高い宿でも確実に早く泊まることを優先した。転移初日ということもあり、とても疲れたのだ。あぁ愛しのベッド……
「それなら知ってるわよ、シジュって宿ね。」
シジュ……ほうしょう?
「シジュですか」
「確かにそこなら絶対に空いてるだろうけど、大丈夫?本当に高いわよ……?」
「多分大丈夫です、ありがとうございました!」
「暗いから気をつけてねぇ~!!」
「気をつけまぁ~す!!」
「大丈夫かしらぁ……?」
心配する乙女……フェリオは咲空の後ろ姿が見えなくなるまで見届けるのだった……。
書いていて「テンプレ要素が薄いなぁ」って思ったけど、「まぁ、たまにはいいか」って作者は思うんだ。
毎日同じ味だと飽きるの一緒かなぁって。
あとなんか別の小説書いてて改めてこっち書いてるの見直したら全然書き方が違ってて、
「これ、違和感あるけど大丈夫かな……?」
って思ったけど………まぁ、いっか!!
………え…手抜きじゃないよ?本っ当だから、うん。