2話
どうやら転移には成功したようだ。
森の中に出ている。
コールも隣にいる。
しかし、転移の副作用なのか体は動かないし、吐き気や頭痛もひどい。
そもそも転移先の環境や大気の事を考えていなかった。
幸運にもどちらも大丈夫なようだが(おそらく体調不良は世界線の移動に体が耐えられなかったのだろう)、転移してから半日も動けないとなると流石に辛い。
人が通るような気配もないし、僕はこのままの垂れ死ぬのだろうか。
こんな所で物語が終わるのかよ、とブラウザバックしようとしている諸君、もう少しまってほしい。
僕はこの後、無事生還する。
もっとも動けるようになったのは更に一日たってからだったが。
なんとか歩けるまで回復し、すこし辺りを散策することにした。
暫く辺りを見回すと、焚き火のような跡がある。
何かを食べたのか、動物の骨らしきものも転がっていた。
人がいる、というか『居た』痕跡だ。しかもまだ数ヵ月前のものだろう。
僕が異世界転移するにあたって一番懸念していたものが
『移動した世界線に人間がいるのか』だったので、
人間、ないし人間に近しい知能をもつものは存在しているらしい。
となると、することはおのずと決まってくるだろう。
異世界人のすむ集落ないしそれに準ずる何かの探索だ。
とりあえず今日は夜を明かし、明日人里を探しに行こう。(ちなみに季節は春だった。すこし肌寒いが耐えられる寒さだ)
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夜中、慣れない環境で寝付けず、物思いに耽っていたら
ふと大事なことを忘れていた事に気づいた。
この世界の人達の言語は何なのだろうか。
日本語だとは思えない。
しまった、一番大事な所に目を向けていなかった。
…まぁいい。成せばなるだ。
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夜が明け、森を抜けると
すぐそこに街道のような物が通っている。
しかも、そこに着いていた足跡は
明らかに人間のものである、(靴の跡だったので厳密には人間のものではないのだが)
とにかく、人の住む場所はそう遠くないはずだ。
街道に沿い一時間ほどあるくとすぐに人里が見えてきた。
ただ、やはり異世界もののお約束というか
石壁に囲まれた中世の城下町のような形だ。
規模から察するに、王都のようなものだろうか。
というか、僕のこと入れてくれるのか…?
いろいろと考えていないことが涌き出てくる。
自分の無能さにほとほと愛想がつきそうだ。
都に近づくにつれ、全貌が見えてきたが
門は解放しっぱなし、兵士こそ立っているが
半分寝ているような状態でザルにもほどがある。
大丈夫なのか、ここ…
この調子なら余裕で入ることができそうだ。
正面突破といこうか。
「あの、ちょっときみ」
「え?」
「見ない格好だけど、何処からきたの?」
はい、僕の人生おわった。