一話
異世界転生。聞いたことの無い人は少ないだろう。
何かの要因で死ぬことにより、異世界で生き返る。
そんな小説のジャンルだ。
大半がトラックや車による事故、
珍しいものじゃ落雷なんかで死ぬこともある。
その殆どが神の手違いで死んでおり、
また、その詫びとしてら何らかの能力や武器を授かり、
異世界で生き返る。
僕はそんな物語はクソだと思っている。
神なんているわけないし
よしんば居たとして何故全知全能の神が手違いなんてするのか。
しかしながら、神は存在しなくとも『異世界』は存在するのではないだろうか。
異世界、言い換えるのならば、並行世界。
一つや二つの世界線ならば移動しても殆どかわらないだろう。
しかし、数百や数千、一万を越える世界線を移動すれば、
あるいは夢物語のような、
亜人や翼竜がいても
なんら可笑しくはない世界線に行けるのではないだろうか。
そんな考えを、僕は中学生の頃に抱いた。
回りに話そうが、子供の妄言だの中二病だのといわれ、同調するものは誰も居ない。居るわけがない。
しかし、僕はそんなことじゃ諦めない。
独学ではあるものの、様々な文献を読み漁り、遂にめぼしい書物を見つけることが出来たのだ。
もっとも、その書物はいわゆる非科学本で、
根拠なんてあるはずもない胡散臭い物だったが、
もうこの節を思い浮かべてから5年立っている。
具体的な方法が書いてあった本はこれしかないのだ。
藁にもすがる思いでその書物の内容を実行することに決めた。
方法自体はとても簡単で単純なものだ。(ここで記すのは控えておこう。万が一があると困る。)
しかし、特筆すべきはその代償だ。
この世界線のすべての命、生命の消失。
即ち、それは一つの世界の滅亡を意味する物だった。
とはいえ、異世界に行けるのであればこの世界に未練など毛頭ないし、あったとすれば愛猫のコールくらいだ。
ふと、今気づいたことがある。
猫一匹くらいであれば連れていけるのではないだろうか。
すべての生命を消費するとはいえ、猫一匹くらいは多めにみてくれるのではないだろうか。
異世界へ転生(今さらだが死んでいないのだから異世界転移だ)する時にそばにいれば着いてこれるのではないか。
よし。コールも連れていこう。
成功するか失敗するかは神のみぞ知る、と言う奴だ。
結局すべては神頼みなんて、皮肉なものだが。
よし、それでは決行するとしよう。
世界のすべての生命(二つを除く)を消費し
何万もの世界線を越えたらそこには何があるのだろうか
一周回って戻ってきたりして。
大いなる希望と一抹の不安を抱え、僕は異世界へ転移した。