R-Day 1: 雪の幻影<後編> -Side S-
更新遅くなり申し訳ございません。最近、課題の追い込みで全く書けていませんでした。これから、また亀更新ですが書いていくと思いますので、評価、感想等お待ちしております。
歩き始めてからどれくらいの時間が経っただろうか。見知っている場所の見知らぬ光景を注意深く観察していく。一階の探索を終え、廊下と特別教室とを一周する。変わっていたように見えたのは廊下の様子と昇降口のみだ。廊下はリノリウムが剥がれたり、古びたりしている他に、鍵の閉まっていない部屋と廊下を見終えたので、最初に目が覚めた場所にあった階段を昇り二階へと進む。
二階からは生徒の教室がある。どの教室も部屋も時間だけがある時に突然静止したように、穏やかな光景が広がっている。教室の一つに入ってみると、生徒たちの机の横には少ない授業の道具がかけられていて、教科書を机の中に入れている子もいればそうでない子もいる。人それぞれだ。それに、椅子の上には防災頭巾が置かれたままだ。災害だとしたら、防災頭巾は持ち出されているだろう。もし、何かしらの災害が起こったのが平日ならばだが。ただ、教室の中の静けさは、昇降口と一階の廊下の荒れ具合の差と一致しない。昇降口や廊下では、あれだけ地震があったかのように物が倒れていたのに対し、教室の中はそうでもない。
また、生徒たちの道具が残っているのを見る限り、事が起こったのは長い休みの間ではないだろう。そうすると、何かが起こったのは、平日の夜のうちか土日だろう。他の教室も確認していこう。部活などがあった日ならば、道具などが散らばっている事もあるかもしれない。そう考え、二階の体育棟へと伸びる通路へと足が向かう。
廊下を歩くと両脇の窓から外が見えるが、そこからはただ降り積もった雪が見えるだけだ。木は見えるものの何か記憶の中から変わったようには見えず、大きくなったとか、木が倒れているとか、そんなことは全くなかった。
「時間が経っているようで経っていない。経っていないようで経っている。」
そんなフレーズが、つい口をついて出てくる。
「まさかね。SFじゃないんだから。」そう、一人ため息をつきつつ口から漏れる。左腕についたアナログ腕時計を見る。もう十四時半をそれはさしていた。さっき一階の探索を始めてから一時間以上経っていることになる。「妙だな。」心の中でつぶやく。そんなに歩いたかと思いつつ、集中していたらそんなこともあるのかとも思う。
そうこう思考しつつ歩いていると、いつの間にか体育館の入り口に立っている。アリーナとも呼ばれていたこの学校の体育館は、めちゃくちゃ広い。
「失礼します。」
誰かがいるわけでもないのに、口をついて言葉が出る。そして引き戸に手をかけて引っ張る。鍵が開いている。扉が低い音を立てて開く。灯りは点いていない。光は全く見えない。
重い戸を引き終えると、真っ暗闇が広がっていた。カーテンが閉まっているのだろう。確か、スイッチは左側だ。携帯のライトで照らして照明のスイッチを押す。照明が灯ると、そこにはガランとした体育館が広がっていた。ネットが出ているわけでも、バスケのゴールが降ろされているわけでもない。ただ、静けさがそこには広がっていた。
「一応、証拠を撮っておこうか。」
そう考え、携帯を再び開く。時間を側目にかくと、そこには十三時五十分と表示がある。
「おいおいおいおい、時間が戻るわけがないだろ。」と、思わず口にしてしまう。アナログ時計を確認すると十四時四十分をさしている。
「どっちがずれてるんだ、これ…。」と、思わず口から言葉が出るとともに、気づいてしまった事態に混乱しつつあった。