表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

R-Day 1: 雪の幻影<前編> -Side S-

毎回、読んでいただきありがとうございます。

第一日目です。

平日は毎日更新できないと思いますが、お許しください。

 やけに明るい光が瞼を閉じた目に降り注ぐ。その明かりで目を覚まし、体を起こす。自分に何があったのだろうと考えるもやけに記憶がぼんやりしている。いつの間にか室内に入っていたんだろうか。確か、確か僕は…。

「そう、道を歩いていたはずだ。」

 記憶をたどるように、自分の体を確認するかのように声を出す。大丈夫、声は出る。うっすらと記憶が回復する。やけに真っ暗な道、突然途切れた記憶と電話、そして手に持っていたはずの携帯。

「そうだ、携帯。」

 現代人特有の不安に襲われ、どこにあるか確認しようとつぶやく。コートのポケットに手を入れる。硬い感触と合成皮革のキュッとした手触りを感じる。いつしまったのかはわからないが、ポケットの中に携帯をしまったらしい。取り出して確認をする。スリーブとロックを解除すると、三件の通知が来ていることがわかった。

「携帯、使えるってことか?」

 そう、つぶやきつつも誰からの通知か確認する。Mと表示された名前からの着信が二件とメッセージが来ている。「大丈夫だけど大丈夫なわけない。」そう思いつつ返信を打つ。そうだ、今の場所の写真を撮ろう。場所の確認をしていなかった。

 改めてあたりを見渡す。見覚えのある場所だ。そこは埃にまみれ、整然と並んでいたはずの金属製の下駄箱が乱雑にスノコの上に倒れてはいるが、紛れもなく自分の通っていた中学校の昇降口だった。

「どうやってこの場所に入ったのか」、「どうしてこんな状況になっているのか」とい疑問と恐怖、そして不安に駆られるものの写真を撮って状況を確認しようと考える。「意外と冷静かもしれないな。」と、心の中で言う。今度は声に出してみる。

「冷静なんだよ。」


 まずは目の前の昇降口を写そうと思い、アプリを開きシャッターを切った後、確認する。大丈夫だ、何も変なものは写っていない。次は後ろにある階段に対してレンズを向ける。シャッターを切り、確認する。古びて所々床のリノリウムが剥がれているが変わりは無い。ただ、掲示物だった紙が階段の上に乱雑に散らばっていた。そして、もう一枚撮るために場所を移動する。座ったまま撮影をしていたため、立ち上がって歩いてみる。大丈夫だ、問題なく動ける。


 おそらく防火シャッターのためにあるだろうと思われる壁に沿って歩き、壁の切れ目から反対側に回る。そうすると一気に明かりが目に飛び込んできた。やけに眩しい。ここにあるのは「屋根のある」中庭のはずだが、目の前に広がっていたのは「雪が積もりに積もった」中庭だった。これが一晩で降ったとは思えない。なぜなら昨夜は雪が積もっているどころか降っていなかったのだ。

「なんてこった。」

 呟いてみると、天井の高い昇降口に声が反響する。「なんてこった。」僕は心の中で繰り返す。しばらくその光景に呆然とするも、太陽の光が雪に反射して目眩がしたため、視線を落として手元の携帯を見る。

「そうだ、写真を撮っていたんだった。」

 そして、この光景は写しておかないと思い直し、雪の降り積もった中庭を撮る。撮った写真を確認する。雪に埋もれた中庭が、そこには…写っていない。あるのは落ちた屋根がある中庭だけだ。

「これはいよいよおかしい。」

 うん、明らかに全てがおかしい。だって、僕の目の前には雪が確かに降り積もっている。これは夢なんだろうか?そうとしか思えない。今撮った写真をそのまま残し、もう一度写真を撮る。結果は…同じだ。何度撮ろうとも同じ光景しか写らない。

 とにかく、今撮った写真の中から、三枚をそれぞれ違う場所から選んで、さっき打ったメッセージとともに送る。何がおかしいのか、向こうの置かれている状況も聞いた方が良いのか?そんなことを考えつつ追加のメッセージを考えつつ再び思考の海へと潜る。


 そもそも、今この状況に陥っている人は他にいるのではないかと考える。なら幾つかSNSアプリを開いてみようと思い、SNSを片っ端から開く。青いSNSを開くとまず飛び込んできたのは、昨日最後に見た投稿だ。更新をしてみる。が、一番上に来ている投稿は一日前のものから変わらない。「まずいな。」と、ここで初めて明確な焦りを感じ始める。違うSNSアプリを開く。状況は、ほぼ変わらない。昨日見たページのままだ。しかし、上に並んでいるアイコンの中に一つだけ最新の投稿があった。Mの投稿だ。開いてみると、僕の安否を心配してくれているようだ。ありがたい。でも、なぜMだけ見られるのか、今の僕には全く見当もつかない。ただ、巻き込まれているのは自分だけじゃないのだろうと、少しずつだが今の状況に推測を立て始めた。


「これは、中学校の中?どうなってるの?」

 振動とともにメッセージがディスプレイの上側に表示される。

「わからない。ただ、三枚目の写真は全く違うんだ。実際、俺の目が合ってるなら雪で覆われてる。」

とだけ返すとすぐさま既読が付く。

「私もすぐ行く。」

 そんな言葉が送られてくる。だが、今何もわかっていない状況で来させるのはまずい。学校の中の最低限の状況だけでも掴まないといけないだろう。向こうが家にいて、家の中が変わっていないなら、何か必要なものを持ってきてもらうことも可能なはずだ。

「状況を確認するから待って。もう少しだけ情報を仕入れたい。そっちも身の回りの状況を確認できる?」とだけ送ると、しばらくして「了解」と短く返ってくる。


 さて、とりあえずは、このフロアだけでも探索しよう。それでわかることを、まとめておこうと考え、僕は校内を巡ることにするのだった。探索の前に時間を確認する。携帯の時計は十三時二十分を表示していた。「まだまだ昼は長そうだ」と、頭の片隅で考えつつ荒れた廊下を僕は歩き出した。

読んでいただきありがとうございました。次回は第一日目-side M-です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ