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怪盗なんて泥棒と一緒だろ?(1)

 俺は珍しく早くに目が覚めた。こういうことってたまにあるよね。ぺたぺたと歩いてリビングへ出ると、朝食の用意をしている片桐がいた。


 彼女は相当早起きだ。前に聞いたが朝に強く夜に弱いらしい。


 そんな片桐の後ろ姿に声を掛ける。


「おはようクローバー」

「ふふ、おはようっすホムさん! ねぇちょっとこの記事見てくださいよー」


 そう言って片桐は振り返って、テーブルに置いてある新聞の様な物を俺に渡してきた。


 どれどれ……


 俺は書いてある大きな見出しを読み上げる。


「『怪盗マルク、美術館から女王の瞳を盗む!!』か……これがどうした?」

「いやホムさん怪盗っすよ! あの怪盗がこの世界にも居るんすよ!」


 片桐は目をキラキラさせながら言う。なんで?


「いや……つってもただの泥棒だろ? 」


 怪盗なんてシャレた名前使っているが、やっている事はただの泥棒と一緒だ。


「違うっすよ! 怪盗は予告状を出して、誰も傷つけずに悪い人の物を盗むかっこいい人なんすよ!」

「ふーん? なら美術館は悪い人なの?」

「なっ、ち、違っ……あーもううっさいっすよホムさん!」


 そう言って俺を突き飛ばして、台所へと戻って行った。反論するならもう少し考えるんだな。


 俺はその新聞を読み続ける。


『怪盗マルクは三日前に予告状をレール美術館へ送って来た事が判明した。警備を80人配置したにもかかわらず、不意をつかれ盗みを許したと報じている……』


 ガバガバ警備すぎない? なんでそんなに人いて盗まれるの?


 そんなことを思っていると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。


「あ、ホムさん今手が離せないので出てもらっていいっすか!」

「いや別にいいけど……こんなに朝早くに来るの? 常識ってのは無いのか……」


 そう愚痴をこぼしながら俺は扉を開く。



 ……目の前にはドクロの仮面を被った黒いコートを着た背の高い人が立っていた。


「……誰?」

「クックックッ。我の名は……マルクと言えば分かるだろうか?」

「いや、イタズラならお帰りください」


 そう言って扉を勢いよく閉める。バン。


「ホムさん? 誰だったっすか?」

「いや……なんか怪しい人だった」


 するとまたノックの音がドンドン聞こえてきた。


「ねぇ! 待ってよ!! 本当にマルクなんだって!!」

「なんか言ってるけど……」

「えっ、マルクって言いましたか!? あのマルクっすか!?」


 片桐は急ぎ足でこちらへやって来て、ガチャりと扉を開いた。


「あっ……ん、んん……クックック。やっと我の事を信じたか。今回ばかりは許してやろう。寛大なるマルク様だからな!クックック……」


 おい。キャラ作るならしっかり作れ。


「あの! 本当にマルクさんっすか!?」

「如何にも。この小娘は物わかりが良いな……」

「……ん、小娘じゃないっす」

「あ……ごめん……」


 だからキャラをしっかり作れ。


 ───


「クックックッ……ここが便利屋ホームズだな。噂には聞いている。何でも驚異の依頼達成率を誇るとか」

「そりゃあどーも。で? 要件をとっとと言えこの変態仮面」

「へ、変態だと……? ……まぁいい。依頼は我の盗みを手伝ってほ──」

「よーしクローバー、能力でコイツを捕らえろ」

「ちちちょっと待てぇ!!!」


 マルクは立ち上がって手をブンブンさせた。


「何が待てだ。盗っ人のくせに」

「……なぁ小娘、何故奴は怒っているのだ?」


 マルクは片桐に話しかけだした。


「ホムさんは空き巣やスリに合いまくってるんすよ。だから盗っ人が大嫌いなんっすよ」

「……フン。哀れな男よ」

「ぶっ飛ばすぞてめぇ」


 片桐が言った通り、俺は盗っ人が大嫌いだ。まぁ盗っ人なんてみんな嫌いだろうが、俺はみんな以上に嫌いだ。それは覚えておいてほしい。



「とにかく! お前のような犯罪者の手伝いなど俺らはしない! 分かったか変態仮面野郎!」

「クックックッ……少しキミは勘違いしているようだが……我はその辺の盗賊なんかとは違う」

「何が違うんだよ」


 そう言うとマルクはクックックと笑って語り始めた。



 ───


 我は庶民の味方、正義の味方だ。無論庶民などからは奪った事や殺生をした事は1度もない。


 そして盗みを働く理由だが……簡単に言えば「復讐」だな。


 我は金持ちにとことん苦しめられた。歩けば貴族の息子に石を投げられ、家に篭れば火をつけられ、親は貴族の気まぐれで殺された。


 ……だがどうだ? 金を払えば罪にもならず、そいつはのうのうと今も生きているんだ。腐ってる。キミらはこんな奴を許せるか?


 ……少なくとも我には無理だった。許せなかった。


 そして我は逆襲の方法を考えた。しかし殺しをすれば奴と同じだ。同じような人間には死んでもなりたくないからな。だから殺しは選択肢に無かった。


 ならどうするか。考えた。──死よりも辛い絶望を味あわせてやろうと考えたのだ。……盗みだ。


 奴の大切なもの全部を盗んでやろうと考えた。全てを盗み、絶望させるまで我はこの怪盗を続ける。そう誓ったのだ。


 ───


「という訳なんだが」

「「……」」

「あ、ごめん……ちょっと重たい話だったね……な、何か明るい話でも……」






「キャラを守れ!!!!!!」


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