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小さいものは大抵かわいいっす!(2)

「……と言う訳で育てることにしたんすよー」

「……いやいやちょっと待って」


 ボクは小さな桜井さん……ゆうと君を連れて喫茶店メルシーハウスへとやって来た。


 そしてボクはドリンクとケーキを注文して、メルちゃんにさっきあった事を全部伝えたのだ。


「ええっと……このちっちゃいのがホームズなの?」

「そうっす!とってもとってもいい子で優しいんすよー!」

「いやそうじゃなくて……うーん……ねぇ、クローバーちゃんは本当にこのままでいいの?」

「どういうことっすか?」


 メルちゃんは、はぁ……と一息ついて「いや……分からないならいいよ」と言って食器を洗い始めた。


 うーん? と考えていると


「お待たせしました。オレンジジュース2つとケーキです」


 と店員さんが飲み物とケーキを持ってきてくれた。ボクはその声に聞き覚えがあった。


「ありがとうっす……あ、エミリオさんじゃないっすか!」

「あ、クローバーさん! お久しぶりです!」


 エミリオさんはペコペコ頭を下げている。


「バイトってあなただったんすか! でもどうしてバイトを?」

「え!? ええっと……お、お金に困ってて……」

「そうっすか、大変っすねー。……でもすごろく大会の賞金があるのでは?」

「え!? あ、あはは……」


 と笑いながら奥の部屋へと消えてった。……うーんなんか訳ありっぽいっすね……


 ゆうと君の方を見ると、小さいというのに暴れたり騒いだりするわけでもなく、ただじーっと座ってオレンジジュースを飲んでいる。


 ああ、なんていい子なんでしょう。まぁ天使ですものね。


 ボクはジュースを飲んでいるゆうと君をじーっと見つめる……


 ……おっと忘れるとこだった。ボクにはあの魔法について一応調べる必要があるのです。


 ボクはゆうと君にケーキを差し出して、話を聞いてみることにした。


「ねぇ、ゆうと君は今何歳なの?」

「5歳だよ!」


 5歳……桜井さんは22歳なのでマイナス17歳されたってことっすかね。 それとも確実に5歳になるということかな。分からない。


「じゃあ昨日はどんなことをしたの?」

「えっとねーサキちゃんといっしょにすなばであそんだよー!」


 サキちゃん羨ましいぞ。ボクと変われ。


 ……うーむ、ということは完全に5歳児に戻っている。だから5歳の頃の記憶しかないみたいだ。


 ふとゆうと君がボクに話しかけてきた。


「ねぇ、おねーちゃん。ボクもしつもんしていい?」

「ん、いいっすよ? なぁに?」

「ここはどこであなたはだれなの?」


 ああーそういや説明してませんでしたね。といってもこのことを理解出来るとは思えないし……大人の状態の桜井さんもなかなか理解出来てなかったみたいですしね。ならば……


「ええっとですねー君は今夢を見てるんっすよ」

「ゆめ?」

「そうっす夢の中なんっすよ。それもとっても長い夢。なかなか醒めない不思議な夢っす」

「そっかーゆめかー」


 そういうことにしておこう。


「そしてボクの名はクローバー! 最強の魔法使いっす!」

「魔法使いなんだ! すごい!」


 ゆうと君は目をキラキラさせながら言った。少しも疑ってない……なんてピュアなんでしょうか。


 ちょっと見せてあげましょう。


「ブレイズ!」

「もえたー!!」

「フリージ!」

「こおった!!」


 楽しい。何しても喜んでくれる。


 するとゆうと君はボクに話しかけてきた。


「ねぇ! ぼくもまほうつかえるよ? おねーちゃんくちあけて?」

「……ん? こ、こうっすか?」


 ボクは言われた通りに口を開く。するとゆうと君の持ったフォークがボクの口の中に入ってくる。


 パクっ


 甘くて美味しいショートケーキの味が口の中に広がる。うまい。うま……ん?


 ……えっ。ボク……ボク……!! 今……今!! 桜井さんにアーンをされたんすか!?


「おいしい? まほうつかいのおねーちゃん?」

「あ……あ……うん……!! とっても美味しいよ……!!」

「えへへ、これがえがおにさせるまほうだよ?」


 ……ああ。これが……幸せってやつなんっすね。


 なんか涙出てきた。

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