表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

呪いにかかった少女の話

今回は小泉洸様(https://mypage.syosetu.com/1476529/)の企画に参加させて頂きました!テーマは「呪い」です。是非お読み下さい(*^^*)

R15は保険です!!

やーい!呪いが使えないなんて、お前やっぱり【忌み子】なんだろ!」


「そうだ そうだ!だからお前の父ちゃんと母ちゃんはお前を捨てたんだ!!」


二人の子供が一人の少女を取り囲んで笑っていた。


「捨てられてなんてないっ!パパとママはきっと帰ってくるもの!」


彼女はそう言って、負けじと笑っていたいじめっ子達を睨みつける。威勢はいいがその体は傷だらけで、足は棒のように細く、すぐに折れてしまいそうだった。


「このっ!生意気な!!」


いじめっ子の一人が手を振りあげる。か弱い少女に対抗する術はない。

ただ痛みに耐えながら、彼らを睨むだけ。



「こら!あんた達、こんな忌み子なんかに近付くんじゃないよ!」


遠くから聞こえた彼らの母親の怒鳴り声で攻撃が止まる。二人は彼女をひと睨みしてから帰っていった。


(あ、水汲み行くの忘れてた...)


よろよろと立ち上がった彼女は、ぼろぼろな桶を抱え、森に向かって歩き出す。



これが彼女の日常であった。全員が顔見知りと言っても過言ではない程の小さな村。そこは、呪いを使うことが出来ない彼女には厳しすぎる所だったのだ。


──忌み子。稀に生まれる、呪いの力を授からなかった子。呪いは神から授けられたという考えが信じられているこの世界で、その力を持たない者は差別され、忌み嫌われた。


(本当は分かってるの。パパとママはもう戻ってこないって...)


【忌み子】は遺伝するものでは無い。しかし、傍にいる者も同類と見てしまうのは人の(さが)。彼女の両親は彼女を置いて何処かに逃げてしまった。


「私も呪いが使えたらなぁー...」


森の中でひとり、ぽつりと呟いた。...が、その声は別の声に掻き消されてしまった。



「呪いなんて良いものじゃないよ」


全人類を敵に回しかねない発言に思わず振り向くと、大きな図体の男が立っていた。髭も髪もぼうぼうに生えていて、端正な顔立ちが台無しだ。


「なっ...!貴方は誰なの!?」


彼女のその質問には答えず、朗らかな声で男は言った。


「君、怪我しているじゃないか。放っておくともっと酷くなるよ?」


放っておくもなにも、大抵のことは呪いでどうにかなるのだからこんな小さな村に医者なんていない。いたとしても、治療費を支払える訳が無いのだ。


「だからっ...!」


自分は【忌み子】なのだと口を開きかけた少女は瞠目する。


男の手から柔らかな光が溢れ、彼女の身体に入っていく。気づいた頃には、あんなに沢山あった傷は跡形もなく消えていた。


「なんで...私の傷が......」


彼女が驚くのも無理はない。呪いは、自分以外のものには効かないのだ。しかも、一瞬で全回復出来るほどのものでは無い。


初めて見たその光景に混乱する少女に男は笑った。


「だって僕は魔法使いだからね。呪いと一緒にされては困るな」


「魔法...使い?」


【忌み子】と共に忌まれるのが【魔法使い】だ。呪いは『願い』が原動力だが、魔法は精霊の力を借りる。神の使いである精霊への侮辱だと、魔法使いは最も悪いものだとされていた。


男はにこりと笑い言う。


「うん。君は【忌み子】だよね。良かったら僕の元へ来ないか?お互い独りは寂しいでしょ」


異端者の傷の舐め合い──そう言われてしまえばそれまでだが、ずっと一人だった少女には誰かに必要とされただけで十分だった。


「......いいわ、一緒にいてあげる。傷を治してくれたお礼よ」


「随分大層なお礼だなぁ」


少女から溢れた涙を男は優しく拭った。



***



「師匠!朝ごはん出来ましたよー」


「ふぁあい」


師匠と出会ってから8年が経ち、私は18歳になった。初対面で一緒に暮らすことを決めたけれど、相手が師匠でなかったらと思うとぞっとする。私は恵まれていた。


村を出て二人暮しを始めてから、師匠は私に沢山のことを教えてくれた。生活の仕方、野菜の育て方、私も魔法が使えると分かってからは精霊との付き合い方も。師匠は家事能力を除いては色々なことを知っていた。


「君...ずっと僕なんかの世話を焼いていていいの?」


パンを頬張りながら師匠は言う。

最近の師匠はそればかり。魔法を覚えて、呪いが使えるふりが出来るようになってからは、結婚を勧めてくるようにもなった。


「8年前に声を掛けてきたのは師匠じゃない。それに私は、精霊の愛し子様以外の人とは結婚したくないわ」


「8年前のことはもう時効だよ。それに、精霊の愛し子なんて、ただのお伽噺(おとぎばなし)じゃないか」


精霊の愛し子。かつて全ての精霊に愛され、その強大な力故に命を狙われ、姿を消した人。

師匠の作り話なのはとっくにわかってる。

でも──。


『魔法を使える君は精霊に愛される程優しい人なんだよ』


私にかかった恋の呪いを守るためにはこの嘘が必要なの。


「早く呪いを解いて下さいね、師匠?」



その数年後、師匠が精霊の愛し子であり私の初恋の男の子だったことが判明し、「自分に素直になる」と宣言した彼に攻められるようになるのはまた別の話。

字数制限があったため、中途半端な終わり方になってしまいましたが、個人的に好きなお話だったので余裕があれば色々補足したものをこれとは別に上げたいと思います。

ここまで読んで下さりありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ