ヤギも歩けば崖から落ちる
放課後の教室。
野球部の声を遠くに聞きながら、
オレは床にひざまずいていた。
「ひひひ、20cm程度の短い茶がかった髪・・・真由美だな」
一本の髪の毛を拾い
ビニール袋にいれる。
「おっと珍しい・・・この毛、TS〇BAKIのシャンプーを使っているな。瑞希のものか・・・」
再び髪の毛を拾う。
瑞希用のビニール袋は持ち合わせていなかったので、口にいれた。
「うっめぇええww」
舌でつやつやのキューティクルを感じながら、鼻から抜けるわずかなTSUBAK〇の香を楽しんだ。
オレの名は 井上 潤。15歳。
入学後1カ月にして、クラスの女子全員の抜け毛を判別できるようになった天才高校生だ。
最近は16時ごろに登校し、髪の毛を拾ってから椅子に頬ずりをして帰る、という生活を送っている。
ちょっぴりゲスい。
あぁ…。なんだか今日はまだ満たされないな。オレは教室を出て、校内の徘徊を始めた。
「ぱたっ、ぱたっ」
足音を感知。うん、これはjkのものだね。やせ型だろう。迷わず音の方へむかった。廊下を曲がると、予想通り、階段を昇る一人の女子。スリッパの色からして3年生だ。
オレは歩調を整え、その女子と適切な距離を保った。スカートからのびる、白い足。太ももからふくらはぎにかけて良質な筋肉を見て取ることができる。今すぐ後ろから・・・色々とちょっかいを出したいところだが、犯罪はいけません。
おとなしくしゃがみ、スカートの中をのぞいた。
「お、おおっ」
白色を基調として水色のストライプが入った下着に、
思わず感嘆の溜息がでた。
と、同時に振り返る女子生徒。あぁ、目があった。かわいらしいお顔ですね。
「はぇっ!?」
女子生徒は小さく驚きの声をもらし、早足で階段を昇って行った。リアクションも可愛いですね。
逃げる女子生徒の背中をしっかりと見送り、立ち上がる。よし、帰るか。
そう思い、立ち上がる。その刹那、オレを襲う、強烈な立ちくらみ。
「どんっ」
ふらついて勢いよく手すりにぶつかった。184cmあるオレの体は、簡単に手すりを乗り越えた。
って、えええええええええ!!!!!!!
浮き上がるからだに、未だかつてないほどの恐怖を感じた。頭から落下するまでほんの一瞬、様々なことが頭の中を駆け回る。これが走馬灯だろうか。もう覚えてないけど…
「ドシャ!!!!」
ほどなくして、1人のゲスがこの世を去った。