第4話 生徒会長③
ガガガガガガン、今度はマシンガンだ。正義の右手の先からから銃弾が放たれる。
「MP40、急所は外した。早く病院に行け。」
不良たちもそうでない人も、すぐに気付いた。『生徒会長は、こいつはヤバイ。』
涼星もその一人だ。圧倒的過ぎる差に気付けない方がどうかしている。
「こいつ、手から銃弾を打てるのか…僕の能力で支配するのがますます厳しいな。」
涼星は密かにそう思った。先程はリボルバーガンを、今はマシンガンを使っている。おそらく、あらゆる重火器を使用できるのだろう。対人間の能力で、これほど優れた能力はない。殺しの天才生物[人間]が、人間を殺すために作った道具。何よりも信頼できる殺戮道具だ。
「う…うひゃッ」
「に、逃げるぞぉぉおおお‼︎‼︎」
各々撃たれた箇所を抑えて逃げ出す。その姿に正義が怒鳴る。
「タバコを拾えぇ、クズがぁ!」
タバコを捨てた不良が震えながら駈けもどり、すぐに拾って逃げていく。
「フン」
正義はその場を離れる。と、涼星に気付いた。
「あ、涼星君…付いてきてしまったのかい?今見たことは忘れてくれないか?保安委員会はまだ活動開始していないからね。まずいのだよ。」
「えぇ、言いません。今のあなたの行いは正しい行いです。」
「分かってくれて嬉しいよ。因みに今のは舞律中だね。ここと同レベルの不良中学校だ。だがね、私はこの学校を信じているんだ。ここの生徒たちは皆気高い意志を持っている。それを教えてくれたのは、先代生徒会長だよ。私はあの人の意志を継いでいる。」
涼星は言葉を失った。どこが気高いのだろうか。全くわからない。だが、正義の目には曇がない。信じ切っているのだ。そのことだけは分かった。
その放課後、涼星は正義に呼ばれた。場所は三階の一番奥の部屋、3-1の教室。
「失礼します。」
入ると、意外にも正義しかいなかった。
「早速本題に入ろう。君、能力者だね?」
「なんのことで…」
「とぼけなくていい。君の今朝の発言。『あなたの行い−」というアレだ。あれを見て私の仕業と断定するのは能力者でなければできない。あんなものを見て私の能力だと気付けるのだからね。」
「…はい、私は能力者です。今朝も、あなたに能力をかけに来ました。」
「やはりな…君の能力の発動条件は触れることだね?それも、直接だ。」
「何故そう思うのですか?」
「君は能力をかけに来た。と言ったが、それはつまり『かけることはできなかった』ということになる。そして、『かける』というのだから、私のような能力でもない。また、目を合わせたり、一定以上近づいたりという条件なら私はかかったことになる。そう考えると、触れることが条件なら納得がいく。」
「その通りです。ただ、能力は教えません。あなたは悪人ではないでしょうけど、あなたが、仲間とは限らない。」
「それは、君が敵だと?いや、私からすれば、敵だな」
急に空気が変わる。
「|【Guns of the King】《王の懐刀》…SAA、敵は排除だ。」
ガゥーーー、涼星は紙一重の差で壁に隠れる。涼星の能力はこう言う時に向いていない。命令も20メートル以上離れたところからはすることができないため、応援を呼ぶこともできない。
「教師どもなら来ないぞ?ここの不良は教師どもにはどうにもできないからなぁ。いつも、喧嘩が終わるのを見計らってからくるんだ。」
正義は威圧的な態度で、追い込みをかける。
「どこかに虫でもいれば‼︎射撃の精度を落としてその隙に攻撃できるのに!」
正義は親指を一度クイッと動かし、こちらに向かってくる。
「虫…生物…保存林だ!でもどうする、保存林に近いのはこの部屋だ!隣からじゃ飛び降りても届かない!」
廊下を駆け出し階段に向かう。
ガガゥーーー、早打ちで2発1発目は躱したが、2発目は左の脹脛に当たる。激痛が走った。だが、右足だけで床を蹴り3-3の教室に逃げ込む。
「クソッ、これじゃ階段を降りてる間に撃たれる。どうしたら…」
コツコツ、正義は廊下を歩いて近づいている。3-2の前まできただろう。涼星はドアから離れ窓に近づく。
「⁉︎これは…。三年の教室には来ないから気づかなかったが、こんなものがあるとは…」
正義が中に入り右人差し指を構える。いない。触れられれば能力がかかってしまう以上迂闊にも近づけない。教卓の下、掃除用具用のロッカー、どちらも撃つが反応がない。ふと気付き、正義は笑う。
「血痕が残ってるゾォ?フフ、S&W M19…コンバットマグナムとも言うな、次元の愛銃だ!」
ガァーーン、ベランダに飛び出し血痕の向かった先に放つ。が、外れた。なんと涼星はベランダの手すりを乗り越え下に落ちて行く。
「なに⁉︎」
驚きつつも、指先で涼星を追って行くとその先に保存林が見える。が、3階から落ちればいくら土でもただでは済まない。さらに、左足を負傷しているのだ。より、大きなダメージは確実だろう。だが、事実は異なった。涼星は保存林の木に触れた瞬間にその木の枝を増やしたのだ。それに絡まり涼星はダメージを免れる。
「だからなんだ!動かないまたは外さんゾ!」
狙いを定める。と、いきなり蜂が群がってきた。
「ここの保存林は、手入れがずさんでな!蜂の巣があるんだ!」
涼星は勝ち誇ったように叫ぶ。正義はそれどころではない。群がる蜂に襲われ振り払うのに必死だ。だが、本来そんなことをしても意味はない。が、なぜか刺されない。そこに気付き始めると、涼星が木の枝を伸ばし3階までくる。
「僕はあなたの敵ではない。僕の能力は触った生物を操ることだ。蜂は今、あなたを指すことはない。だが。これ以上戦うなら刺すことになる。」
「私の負けだな…君の言葉を信じよう。」
涼星は蜂達を巣に戻し、ベランダに降りると木を元に戻した。そして、傷口に触れる。弾は中に入っていないが貫通もしていない。
「弾は残っていない。私の意思で消すことができる。」
なんとも便利な能力だと感心しながら涼星は能力を使う。すると、傷がみるみるふさがって行く。
「君はそんなことまでできるのか?」
「僕も生物ですしね。まぁこれが初めてで、できるかどうかは分からなかったんですけど…」
「今気づいたんだが、さっき私に触れてしまった方が楽なんじゃないか?その方が、動きやすいだろう?」
「そうですね。ですが、僕はあなたの敵ではない。そして、悪人でもない。それに、今朝の不良を追い払った時の『私はこの学校を信じている』と言う言葉、僕は同意しない。だが、あなたの目には曇がなかった。心の底から信じている目だった。だから、その成り行きが気になった。あなたによってこの学校がどれだけ変わるかが見てみたくなった。だから、能力をかけなかったんだ。」
「成る程な、その期待に応えてみせるよ。君、クラスは?」
「1-3です。」
「君…いや、春影涼星!1-3の保安委員になってくれ!いいかい?」
「わかりました。この学校のために、あなたの信頼に応えるために、尽力致します‼︎」
「ありがとう!」
1ヶ月後に涼星は保安委員会に入ることが決まった。
キャラクター紹介
名前:春影涼星
能力:【Mud Love】
触れた生物を操ることができる。また、穴が空いたくらいのケガなら直すことができる。
趣味:マンガ、好きなジャンルはラブコメとバトルもの。映画、好きなジャンルは海賊ものや魔法ものアメコミ原作のものなど。
嫌いなもの:弱者を選んでカツアゲする不良。
好きなもの:信念があり、それに真っ直ぐな人。と、十道ひめか。