第2話 生徒会長①
肩まである金髪、毛先はクルリと外向きにカールしている。きっちり着こなされた制服、胸元には校章が光っている。姿勢の良い立ち姿に、整った澄まし顔。気品に満ちたその男は、全校生徒の前でマイクを握っている。
「皆さん、おはようございます。生徒会長の御社正義です。一年生の皆様も入学して2ヶ月がたちました。そろそろ、この学校には慣れてきましたか?そう簡単なことではないですよね。何と言っても、県で一二を争う不良中学と呼ばれるほどにこの学校の治安は最悪だ。なので私は、この学校の治安を守るための委員会[保安委員会]を作ろうと思っています。この学校には風紀委員会というものがありません。それは以前あった風紀委員会が、学校にて風紀を守ることをしなかった…いえ、できなかったからです‼︎しかし先程述べた[保安委員会]は、確実に守ることができます!理由は単純です。メンバーを私が選抜し、生徒会本部が指揮をとるからです。もう既に委員会に入っている人でも、今回に限り[保安委員会]に選抜される可能性があります。心していてください。しかし、強制ではありません。校内の保安を目的とする委員会なれば、危険性は高いのですから本人には、断る権利があります。詳しい活動に関しては、後日各学級にプリントを配布しますのでそれを読んでください。皆様!より良い学校にする為、今後とも私達に力をお貸し下さい‼︎以上です。」
「「ウオォォォォォ!」」
歓声が上がった。何を隠そうこの男は、選挙で支持率96%を獲得し生徒たちから熱烈な支持を受けているのだ。力のある言葉に、恐怖さえ抱くほどの行動力、そして[王]としての堂々たる振る舞いに、男女問わず惚れてしまう。しかし、この学校は不良ばかりの学校だ。不良を取り締まる[保安委員会]など言い出したにも関わらず歓声が上がるとは、いったい何故だろうか。それはこの男の実績に基く信頼だ。当選当初はブーイングも飛んできたが、その政策で誰一人として不快な思いはしなかった。しかし、学校は正しい方向に向かっている。それが、この男の不思議なところである。
この2日後に、各学級にプリントが配布された。涼星はいち早く目を通した。
“保安委員会についての詳細”
•人数は各学級より1名ずつの12人に、生徒会長を加えた総勢13人。
•委員長は、生徒会長が兼ねる。
•権限には強制連行、及び中央議会での公開裁判がある。連行の際、抵抗する場合は武力行使も許される。その際にけがを負わせた場合は、負わせた保安委員も裁判にかける。なお、裁判の制度は以下の通りである。
裁判長:中央議会議長
裁判官:各委員長及び生徒会長
処罰に関しては、主に校内清掃や挨拶運動などの校内奉仕活動とし、場合によっては謝罪もある。
•連行及び任意同行の対象となるのは校則違反者ではなく、何かしらの事件、事故を起こし人に危害を加えた者及びその疑いのある者である。なお、意図的に冤罪をかけた場合は、その者を裁判にかける。
•事情聴取については、任意同行、強制連行どちらの場合も部屋を生徒会室とし中央議会議長の立会いのもと全て録画する。
•選抜の基準は、非公開とする。ただ、一定の基準があり、生徒会役員内での厳密な話し合いのもとに決める。第一候補者は7月5日に公表する。
•辞退する場合、生徒会役員の誰かに伝えること。その際に理由を問うことはない。
ぜひ、皆さんの正義の心を私達に貸して下さい‼︎
お願いします!
生徒会長 御社 正義
涼星はプリントを眺めながら、黒い前髪をいじる。考えごとをする際の涼星の癖だ。
「どう…したものか…?生徒会長、中々の実力者だ。正直舐めていたが、こんなことを通すなんて…⁉︎この学校の教師たちは大丈夫なのか?」
何故悩むのかといえば単純な話だ。不良のボスと同時に生徒会長も目指している涼星にとって、一度でも捕まればどちらにもなることは叶わない。だが、不良達を相手するなら暴力と縁遠い生活など不可能だ。
そして涼星は、考えるのをやめた。
「本人に会ってみよう」
三年生の使うA棟3階、3-1の教室で金髪の男は一人落ち着き読書に耽っていた。
キャラクター紹介
名前:御社 正義
役職:生徒会長
年齢:15歳
座右の銘:正義も悪も結果ありき
過程に宿る正義はない。
怖いもの:自分の知らない存在。
好きな事:自分に敵意を向けるものを、心から服従
させる事。
嫌いな事:机上の空論。
嫌いな人:綺麗事だけの偽善者。
好きな人:信念のある者。野心家。
性格:カリスマ性があり、人を惹きつける魅力があ
る。一般的、普通、常識などといった考えを
偏見として切り捨てるため、自ら人の輪に入
ることもない。生徒会の役員は信頼する人で
固めているため、正義を中心とした団結力と
行動力のあるチームになっている。慎重だが
大胆性もあり、人を引っ張っていくのに十分
な実力がある。