FILE-2「無知の自己紹介」
「起きろ……連斗」
金髪の女性が連斗の肩を持って軽く揺さぶる。
連斗は女性の顔を寝ぼけた顔で見る。
「……先輩、起きてますよ」
連斗はそう言いながら再度顔をふせる。
「はぁ?今から精霊召喚の儀式の仕方を教えてやろうと思ったのに……その言い草とは……」
女性は連斗の横腹に手を添える。
「さて、連斗……世界大会経験者の正拳突きの感想を後で聞かせてもらおうか?」
「……いりません」
「なら、起きろ」
連斗はしぶしぶと起きると、女性は笑顔で連斗の頬を叩く。
「これで目が覚めたな?」
連斗は叩かれた頬を抑えながら転げ回っている。
「あ、│桃華先輩」
桃華が声のした方を見るとそこには彩音がいた。
「どうしてこの教室に?」
「あぁ、どうしてもそこに転がっている奴が……精霊召喚等をしたいそうだから……私が教えてやろうと来たわけだ」
「なるほど……ところで連斗はどうして転げ回っているのです?」
「私の魅力に萌え苦しんでいるのだよ」
「なわけあるか!」
連斗はすぐに立つと桃華の方に指を指す。
「確かに顔は可愛いとは思います!だけど……胸にぶら下がるものも無い人を好きになるわけが―」
桃華は再度笑顔で連斗の頬を叩く。
連斗は鉛筆みたいにたったまま倒れる。
「ひどい……親父にも打たれた事ないのに……」
桃華はため息をつくと、連斗が座っていた椅子に座る。
「さて、オカルト研究部部長がお前ら2人に精霊召喚の儀式の仕方を教えてやるが……しかしだ」
「え?危ない儀式ですか?」
「いや?そこまで危なくは無いな……失敗しなければ……な」
「「……失敗しなければ?」」
連斗と彩音は同時に疑問をぶつける。
「まさか、蝋燭が倒れてしまってそこから……魔法陣の書いてた紙に火が移って……火事に―」
「連斗……考えすぎだ」
「まさか……、召喚が完成した後に精霊を殴ってしまう事―」
「彩音……絶対に殴るなよ?」
「「じゃあ、何をしたらいけないんですか!?」」
「声をハモらせるな……そうだな、召喚が終わった後に精霊を呼び出した魔法陣の描かれた紙を細切れにするなって事だな」
「「どうしてです?」」
「だからハモらせるな……精霊が異世界に戻れないと思って時空に切れ目をつけてお前ら事異世界に引きずり込まれるからな」
「……あれ?」
「どうした?連斗……疑問が出たのか?」
「どうして……桃華先輩失敗した事も分かつてるんです?」
「精霊に聞いた……呼び出した」
連斗と彩音は顔を見合わせると桃華の方を見ると、連斗はカバンから油性ペンを取り出し、彩音は桃華の両脇に手を通して身動きが取れないようにする。
「や、やめろ!お前ら……やめてくれ!そ、そんな事をしたら……」
「だって先輩……1人で精霊召喚したんですよね?」
「お、お前らの安全を考えてだな―」
連斗は不敵な笑みをこぼしながらゆっくりと油性ペンを桃華の顔に近づけていく。
「さてさて、桃華先輩の泣き顔を拝ませて貰いましょかね、んふふふふ」
「……彩音この拘束を解かないと後で酷い目にあうが大丈夫か?」
「はい?なんですか?」
彩音は桃華の顔を見ずに答える。
「決定だ、貴様らを処刑する」
「はっはっは、確かに桃華先輩は空手で全国大会まで行きましたが……そこで桃華先輩を抑えているのは女子総合格闘技で世界大会優勝者の彩音先生がいますよ?これで勝てると―」
桃華は両肩の関節を素早く外して、彩音の拘束をスルリと抜けると彩音の顎を掠めて殴って彩音を気絶させるとすぐに関節を戻す。
「……さて、連斗覚悟は出来ている……か?」
桃華が連斗の方を見るが、すでに連斗の姿は無くなっていた。
〜〜〜〜〜
連斗は先ほどいた教室からかなり離れた場所に身を潜めていた。
「……はぁはぁ、くそっ!彩音がやられるとは……しかし!俺さえ生き残っていれば問題は無い!」
「そうだな、生き残っていれば……な」
「桃華先輩、最後にお願いが……」
連斗は澄ました目で桃華の顔を見ると。
「最後に……あなたのパンツ見せてくださ―」
桃華は連斗の頭の横の壁に拳をめり込ませる。
「さて、記憶が無くなるまで私は君を殴るのを止めない」
「……ごめんなさい」
「すまんな、私の小さい胸はお前の助けを求める声を受け止められないようだ」
桃華はそう言うと、連斗が気絶するまで殴り続けた。
〜〜〜〜〜
「……きて?起きて?連斗」
連斗が目を覚ますと、目の前には彩音がいた。
「……彩……音?」
「……ねぇ、連斗」
「あぁ……桃華先輩の熱い拳確かに受け取ったよ」
「何言ってるの?」
彩音はきょとんとした顔で首を傾げる。
連斗はすぐに立ち上がり周りを見渡すとそこには薄暗くて、壁は血が固まって黒くなっていて、床は血が飛び散った後が残っていて、目の前の方は鉄格子が見える。
「……何これ?桃華先輩鬼畜すぎませんか?」
「桃華先輩?ううん、違うよ?」
「……まじで?」
「連斗……忘れてない?部屋での出来事」
「……部屋での出来事?」
連斗は記憶を探ると、連斗が冷蔵庫を開けて彩音のプリンを勝手に食べてデンプシーロールを喰らった事。
連斗がベッドの下に隠してたエロ本を彩音に見つかってアイアンクローを喰らった事。
連斗が彩音に指示して魔法陣を破らせて、時空の裂け目に吸い込まれてしまった事を思い出した。
「あぁ、なるほど……プリンを勝手に食べてしまったからそれの罰って事か」
「……違うよ」
「それならエロ本の事か?」
「……違う」
「じゃあ……精霊召喚に失敗したって事か?」
「そうそう、精霊召喚に失敗し……た?失敗?」
「だって、光の玉は精霊なんだろ?それが出てきてたのに俺達が、精霊の帰る道を破いてしまったから精霊が怒って時空に切れ目をいれて、俺達2人を引きずり込んだんだろ?」
「……そうなの?」
「お前……絶対に忘れてたな?俺もさっきまで忘れてたけども」
「忘れてたって……先輩が、絶対にするなよって言ってた事を忘れてただなんて……」
「……まぁ良いや」
「良くないよっ!?」
「考えてみろ、あの桃華先輩から離れられるってことをな」
彩音は連斗の前に立つと、正拳突きの構えを取る。
「……プリン」
「わかった、彩音……ここで作れるように頑張ろう……な?」
「……うん!わかった!」
彩音が心地いい程の笑顔で返事をすると、連斗は彩音が見えないように悪意のこもりまくった笑顔でこいつちょろいわ〜と考えていた。
「よし、そうと分かったら……彩音その鉄格子壊せ」
「うん!わかった!」
彩音は鉄格子の前に立つと、正拳突きの構えを取って、軽く息を整えると……素早く拳を前に突き出して風を切る音と同時に鉄格子がゴーンと言う音が響く。
「……ねぇ、連斗」
「……何だ?彩音」
「凄く手が痛い」
彩音は正拳突きで使った右手を抑えて半泣きの顔で連斗の顔を見る。
「ごめん、お前なら出来ると思ってたから……」
連斗は彩音が正拳突きをした鉄格子を見る。
鉄格子は壊れてはいないがしっかりと彩音の正拳突きの後が残っている。
「……あれで、殴られたらアバラ何本持ってかれるんだろう」
連斗がじーっと鉄格子を眺めていたら、音を聞きつけた鉄の鎧を着た金髪ロングの女性が駆けつける。
「な、何の音!?」
女性は腰に付けていた細剣を連斗達に向ける。
「いったい何をしたの!?」
「おい!人に剣を向けるな、それと銃刀法違反だぞ!?」
「連斗……それは異世界では通用しないと思う」
「もう一度聞きます、何をしたの?」
「「……彩音(連斗)が鉄格子を正拳突きで壊そうとしてました。」」
「素手で鉄格子を壊そうとしてたの?」
「「はい、彩音(連斗)が」」
「とりあえず、怪我をしてないかしら?」
連斗は女性に彩音の右手を女性に見せる。
「……とりあえず、怪我はして無さそうだけど、あなた連斗君だったかしら?」
「……そうだ」
「彼女に鉄格子を壊させようとしないの」
「……はい?」
連斗は女性の言葉に首を傾げる。
(彼女?彩音の事?)
「いえ、違います」
彩音は女性に見えるように手を上げる。
「連斗は私の―」
「彩音は俺の奴隷です」
「……はぇ!?」
彩音は思いがけない幼なじみの言葉に、疑問を持った声をだす。
「いや、そうだろ?」
「違うよ!?幼なじみでしょ!?」
「……彩音、お前と俺を一緒にするな」
「どうして!?」
「それはな……お前は頭は悪いが俺は頭が良いからだ」
「連斗、この前の連斗のテストの点数15点で、私は満点だったんだけど……」
「……うるさいやい」
そう言うと、連斗は彩音の胸を鷲掴みにする。
「―ひゃんっ!」
「いい加減にしな……さいっ!」
女性は腰に付けていた鞘を取り外して連斗の頭を叩く。
「―がふぅ!」
〜〜〜〜〜
「はぁ、水って美味しいですね」
「こら、連斗君正座を解かない」
「……すみません」
場所は移って、連斗達は壁は赤白のレンガで、床は正四角形の形の木を敷き詰められた部屋に移された。
連斗は正座をさせられて、彩音は椅子に座って水を飲んでいた。
「で、さっきの話しの通りだとしたら、あなた達2人は異世界から来たって事かしら?」
「……はい」
「どうも信じられないわね」
「……信じろよ(ボソッ)」
「何か言ったかしら?」
「信じろよ!ここに異世界から来たやつがいるじゃん!」
「……はいはい、そうですね」
連斗が熱弁するが、女性は軽く受け流して、彩音は連斗に寄りかかるように寝る。
「それよりも、自己紹介しとこうかしら?これから先は私があなた達2人の上司になるのだからね」
「はい?上司?」
「そうよ?セルフィ王国騎士団見習いであなた2人を勧誘するのよ?」
「……断ったら恐ろしい結末待ってそうなのでありがた〜く頂戴しよう」
「なんか腹立つ言い方ね」
そう言うと、女性は連斗と彩音の前に服と鎧を置いて上に鍵を3個置く。
「……鍵?」
「部屋の鍵よ?1つはあなた達の専用の部屋で、2つ目はあなた達の従者の部屋の鍵で、最後はあなた達の物置部屋よ」
「あれ?待遇良すぎませんかね?」
「当たり前でしょ?私の部下になるのだったら最低限の衣食住が必要でしょ?」
「あ、そう言えば自己紹介まだだった……」
「すっかり私も忘れてたわ、それと彩音ちゃん起きなさい」
「……はぇ?」
彩音は女性の声に目を覚ます。
「とりあえず私からね、私の名前はエリシアよ、しっかりと覚えてね?」
「はい、分かりました!エリシアさん」
「しっかり覚えましたよ!エリーシャさん」
「彩音ちゃんはしっかりと覚えたのに、連斗君はすぐに忘れないの……」
連斗はエリシアに見えるように手を上げる。
「何かしら?」
「エリシアさんの御趣味をお聞きしても〜……」
「しっかりと名前覚えているのね……、そうね……編み物かしら、2人は何か趣味あるの?」
「私は……、連斗のそばにずっといれれば良いから無い」
「本当にそんなんで良いの?連斗君が彼女作ってもそばにいるの?」
「大丈夫です!連斗に彼女は出来ませんっ!」
(あれ?さらっと悪口言われたよ?)
「そうなんだ、ふ〜ん、ところで連斗君は?」
「俺は……心霊写真集めと心霊スポット巡りかな」
「心霊写真?心霊スポット?」
エリシアはなんの事だろうと思い首を傾げる。
「いつかきっと見せてあげますよ、幽霊をね」
「まぁいいわ、私はあなた達の名前を覚えたから良いけどね」
連斗は笑顔でエリシアに言う。
「あ、そう言えば、エリシアだけ?名前って……」
「ん?そうでしょ?あなた達2人も連斗と彩音って名前だけでしょ?」
「いや?俺は坂戸連斗で、彩音は先に成宮って氏名がつく」
「ん?んん?どういう事?」
「あ……説明が面倒いのでわすれてくださ―」
「最後まで言いなさい」
連斗はエリシアから視線を逸らすが、エリシアは連斗の顎を掴んで視線を戻す。
「家名見たいなものです」
「へぇ、家名ね……異世界にはそんなのもあるんだ……ふ〜ん」
「顎が痛い……」
「あ、あぁ……ごめんなさいね?」
「ゆるさん!絶対にゆるさん!くらえ必殺技のスカートめぐ……り……」
連斗はエリシアのスカートをめくり上げようとしたが途中で動きが止まる。
「あれ?どうしたの?連斗君?」
「エリシアさん、あなたの年齢は……?」
「女性に年齢を聞かないの……23よ」
「必殺!スカートめく―」
彩音は連斗の右手を掴むと、素早く背負い投げをして連斗を壁に叩きつける。
「必殺……背負い投げ」
「それは……必殺とは呼ばな……い(ガクッ)」
連斗は言い終えると、連斗の意識は途絶える。