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FILE-1「無知の始まり」

もうじき昼時に差しかかる頃に、男女2人が部屋にいる。

男の方は坂戸さかと 連斗れんとと言う名前の高校生。

髪の色は黒色で少しだけ寝癖が立っている。

女の方は成宮なりみや 彩音あやねと言う名前で連斗と同じく高校生。

髪の色は茶髪で髪の長さは肩にかかる程度だ。

彩音は部屋の中心に置いてある机に向かって魔法陣を書いていて、連斗の方は部屋の端っこに置いてあるベッドの上で寝転がって漫画を読んでいた。


「……出来た?」


「……そろそろ出来るから待っててね」


「……わかった」


連斗は時間が経つにつれて落ち着かない様子でゴロゴロと寝返りを何度もする。


「まだ……?」


「……そろそろ」


「…………まだ?」


「……そろそろ」


「……ま―」


彩音はスクっと立ち上がると、スタスタと連斗の前に立つ。


「……怒るよ?」


「……すみません」


彩音はすぐに作業に取り掛かる。

連斗は、近くにある漫画を再度読み始める。


「……ねぇ、本当にこれで出来るの?」


「やってみるまで分からん」


「もし……精霊召喚なんて出来たらどうするの?焼く?煮る?」


「う〜ん、とりあえず焼くと煮ると言う選択肢は無いかな〜……」


「それじゃあ、どうするの?」


連斗はどうしようかと考えるが、興味が湧いたので召喚したいだけとしか考えられない。


「……う〜ん、興味が湧いたから召喚したいだけって言ったら?」


彩音は少し考えると、ボソッと呟く。


「私は異世界の事でも聞いてみたいかな……」


「なるほどね……、確かに異世界の事も知りたいな」


「……ふぅ、出来た」


彩音はそう言うと油性ペンをペン立てに置いて机の上に魔法陣の描かれた紙を広げる。


「おぉ……、綺麗に書けてるなぁ……」


連斗は彩音の向かい側に座って魔法陣をマジマジと見る。


「ありがと……、それですぐに召喚するの?」


「いや、軽く食事してからにしよう」


連斗がそう言うと、連斗の腹が鳴る。


「……ふふっ、わかった軽く食事作って来るから待っててね」


そう言うと彩音は、部屋から出てキッチンの方に歩いて行く。

連斗は彩音が出ていくのを確認すると、魔法陣の描かれた紙をベッドの上に置いて、食事をする為に机の上を片付けていく。


「今日は何を作るのだろうか……、お手頃なやつだったら……おにぎりかな?」


数10分ぐらいで彩音が一口サイズに切り分けられたサンドイッチが、2人前ぐらいの量が盛り付けられてある皿を持って部屋に入ってくる。


「おっ……今日はサンドイッチか」


「えへへ、美味しいよ?」


「よし、いただきます」


そう言うと連斗はパクパクと一口サイズのサンドイッチを片っ端から食べていく。


「うん、この卵とハムのサンドイッチの調味料はマヨネーズだけか……美味しいな……」


「あと、レタスも入れてあるよ?」


「こっちの…………何これ?」


俺は中心に置かれてあるサンドイッチに目が移る。


「それは……イチゴとホイップクリームを挟んだデザート代わりのサンドイッチだよ」


「ほぅ……頂こう」


連斗はすぐに中心に置かれてあるサンドイッチを食べる。


「おぉ……うまい」


「でしょ!?」


「これなら……いくらでも食べれそうだな!」


と言うと連斗が同じものしか食べなくなると、彩音は皿を持ち上げる。


「はい、軽く腹ごしらえは出来たから召喚をしよ?」


「……そうだな、終わってから食べさせて貰おうかな」


彩音はサンドイッチを連斗の勉強机の上に置き、連斗はベッドの上に置いた魔法陣を机の上に広げる。


「あれ?なんか……薄くなってないか?」


連斗は先ほど見ていた魔法陣がさっきより薄くなっていると気づく。


「……彩音!急いで召喚するぞ!?」


「えぇ!うん、わかった!」


連斗は棚から30cmぐらいの蝋燭を取り出して、火をつけ、彩音は部屋のカーテンを閉めて部屋を暗くすると、連斗と彩音は魔法陣の置かれてある机を挟むように座る。


「さて、再確認をするぞ?……彩音」


「まず、魔法陣を机の上に置くだよね?」


「そうだな、魔法陣は精霊を呼び出す為の門となるからな」


「次は、部屋を真っ暗にする……だったよね?」


「そうだな、精霊によっては太陽の光を苦手とする者が呼ばれたらいけないからな」


「最後、蝋燭を魔法陣の上でつけるだったよね?」


「違うぞ?これは俺達が精霊を見るために必要なだけだろ?」


「え?最後は何だったっけ?詠唱?」


「あのな……最後は魔法陣から光が出るまで待っておけば良いんだよ……」


「あ……そうだったね」


「そして、蝋燭の火が消えるまで何も起こらなければ失敗という訳だ」


「……忘れてました」


「おいおい、しっかりしてくれよ」


連斗は確認を終えると現象が起こるまで黙ったまま待ち続けるが、彩音はかなりそわそわと落ち着かない様子だ。


「ねぇ……連斗」


「静かに……」


「……連斗」


「トイレは召喚が終わるまで我慢しろ」


「違うよ……まだ召喚できないの?」


「はぁ?まだ、成功するか失敗するか分かんないんだぞ?」


「蝋燭は何分まで消えないの?」


「1時間ぐらい」


「えぇ……それまで暇なの?」


「……俺は召喚する前にいってたよな?召喚時間はかなり長くなるからトイレは済ませとけって」


「……うぅ、忘れてました」


「……おいおい」


連斗と彩音が会話を終えて数10分立つが何も起こる気配は無い。


「ねぇ……実は失敗したんじゃ無いの?」


「なぁ……今何分経った?」


「今は20分ぐらいだけど?」


「……早すぎる」


「……何が?」


連斗は蝋燭に向かって指を指す。


「見ろ、蝋の減りを……」


「あれ?……残り3cmしか無いよ?」


「この蝋燭は60分で消えると言ったよな?」


「という事は……この部屋で現象が起こるって事?」


「今起こってるんだよ!?」


「ま、まさか……」


「あぁ、多分だが……召喚は成功するぞ」


「実はこの魔法陣は時を加速させる効果だったりして〜……」


「やめろ、その考えを捨てなさい」


連斗はベッドの下にあるハリセンで彩音の頭をぺしっと叩く。


「あぅちっ」


「次……くだらんことを言ったら2回叩くからな?」


彩音は涙目になりながら叩かれた所を抑えて「……はい」と涙混じりで言う。


「とりあえずだ、火が消えるまでま―」


連斗が最後まで言おうとしたその時、蝋燭の火が消える。


「消えちゃったね、蝋燭の火が……」


「現象は何も起こってない……な」


連斗はため息をつくとカーテンを開く為に立ち上がる。


「ねぇ、実験って失敗なのかな?」


「……あぁ、しっ―」


連斗は彩音の方を見て慰めの言葉を掛けようとするが、彩音の後ろに光の玉がふわふわと浮いているのを見つけてしまう。


「……彩音さん?後ろのは何かな?」


「はぇ?後ろ?」


彩音は後ろを見ると、そこには先ほどより大きくなっている光の玉がある。


「え……っと、何これ?」


「何かまではわからんが、とりあえず言えることは……どんどん大きくなっている」


光の玉は少しずつ少しずつ大きくなっていく。


「彩音!俺の後ろにさがってろ!」


連斗が指示をすると、彩音はすぐに連斗の後ろに立つ。


「………ん?どうして?」


「俺が1番最初に精霊を見たいからだ」


「……連斗、私の後ろに下がってて!」


彩音が指示をすると、連斗は彩音の後ろに立つ。


「なんか……危ない感じがするのか?」


「ううん、連斗より先に精霊が見たいだけ」


「彩音!俺の後ろにさがってろ」


「…………」


連斗は彩音に指示を出すが、完全に無視される。


「……はぁ、仕方ない」


連斗は前に立っている彩音の横腹を触り始める。


「あれれ?彩音さん?ここら辺……昨日より1cmぐらい大きくなってませんか?」


「……ねぇ、連斗」


彩音は後ろを振り向くと、連斗に見えるように指を鳴らし始める。


「アームロックor腕ひしぎ十字固め……どっち?」


「はっはっは、暴力には勝てませんな〜……」


ちなみに、紹介が遅れたが彩音は総合格闘技を嗜んでいる。


「私が先に見ても良いよね?」


「どうぞ、どうぞ……」


連斗は脅されてからと言うもの、ずっと体が小刻みに震えている。


「やったー!……あれ?」


彩音が光の玉の方を見るとそこには……部屋の半分以上大きくなった光の玉がある。


「……連斗、やっぱり私……後に見たい」


「お?そうか?それなら仕方な―」


連斗は部屋をほとんど包み込んだ光の玉を見るとささっと彩音の後ろに下がろうとする。


「や、やっぱり……彩音が先に―」


彩音は連斗に見えるように指を鳴らす。


「……ん?何?」


「いえ、先に見させて貰います」


連斗は前に見える、時間が経つにつれて大きくなる光の玉、後ろには自分より強く恐ろしい幼なじみに挟まれて体はガクガクと震え始める。


「彩音……場所のこうた」


「……(がしっ)」


彩音は連斗の体をしっかりと自分の前に固定する。


「彩音……お願いが―」


「連斗、あっちの世界でも……友達をちゃんと作ってね」


「彩音……ちゃっかり俺だけが死ぬ宣言するなよ」


「なら!どうすれば助かるの!?私達2人は!」


連斗は魔法陣の方に指を指す。


「召喚を取り消せばいい、魔法陣をビリビリに破いてな」


連斗がそう言うと颯爽と彩音は、魔法陣を細切れに破く。

光の玉はゆっくりと小さくなっていく。


「ふぅ……」


「……いつ見ても、可笑しすぎるほど高い肉体能力と反射神経だな」


彩音は連斗が魔法陣を破いたら良いと言ってから1秒も経たないうちに、魔法陣が描かれた紙を細切れにしたのだから。


「ふふん、褒めても良いのよ?」


「よし、こっちに来い撫でてやろう」


「え?ホントっ!?わ〜―」


連斗は彩音の頭に右手を置くと、ベッドに置いてたハリセンをもう片方の手で握ると、笑顔で彩音の頭をスパーンッと思いっきり叩く。


「きゃんっ!?どうして?私……叩かれたの?」


「彩音……次は尻を出せ、俺を盾にしようとした罪は重いぞ?」


「え……え〜っと、ごめんなさい?」


連斗は笑顔で彩音の頭を何度もスパーンと勢いよく叩いていく。


「痛いっ!痛いよ!許して!お願い!」


彩音はべそをかきながら謝り続けるが、連斗は謝るにつれてヒートアップしていく。


「あ、そうだ!連斗!光の玉は!?」


「知るか、そんな事よりお前の罪を裁く」


すると、ビー玉ぐらいの大きさになった光の玉が連斗の目の前に現れる。


「あれ?これってまだ消えてな―」


光の玉は連斗の目の前で消滅すると同時に時空にヒビをつける。


「……彩音、この部屋から……急いでにげるぞ!」


そう言うと、連斗は部屋から急いで出ようとしたが彩音の足につまづいて転び、彩音は連斗に勢いよく足を蹴られたので苦痛で動けなくなった。

そして、身動きが取れなくなった2人は時空の裂け目に吸い込まれてしまった。

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