学園までの道のりにて
それから、魔法学園までの道を案内してもらうことになった。
その間にエルザから“リナブレド学園”について聞くことになった。
「つまりこの“リナブレド学園”はこの国で一番初めの魔法使いの学校で、それゆえに最難関と言われている。そしてこの国は魔法が他国よりも特に発達している、つまりこの世界で最も優れた魔法使いの学校なの」
「そうなのですか。ローデルはここの学校に受かるレベルだから行ってらっしゃ~い、ってお姉さんが言っていたので」
「……お姉さん?」
「はい。師匠の周りにいる、師匠の事が大好きな僕より何歳か年上のお姉さんです」
そう告げた時のエルザの顔はなんとも言えないものだった。
そしてそれ以上何も言わなくなって代わりに、
「……もし試験に落ちても、都市観光楽しんでいられるようにするわね」
「! 僕、落ちません!」
「うん、そうだね、受ける前から言うのはよくないよね。うん……あ、でも、もしもってことがどんな時でもあるから、もしそうなったらその分都市の案内をしてあげるよ。楽しい所も、美味しいお店もいっぱいあるし」
「でも、そこまでご迷惑をかけるわけには……」
「いえ、私がそうしたいと思っただけだから。良いでしょうそれくらい、ミルフィも」
そうエルザがミルフィに言うと、ミルフィは僕をちらりと見てから、
「そうですね……危険のない範囲で少しぐらいなら構わないと思います」
「本当! ありがとうミルフィ!」
「その代わり私も一緒ですよ? エルザが魔法の扱いに長けていると言っても一人で出歩かないように。もしエルザに何かあったら……」
「でもミルフィの方が怪我をしたら大事だと思うな」
「……エルザ、怒りますよ。いくら私でも」
「うう、ごめんなさい、ミルフィ」
といった話をしている。
もしやこの人達は、お忍びで市井に訪れている貴族のご令嬢なのだろうか?
確か以前、お姉さんの一人が奏している所で師匠に出会ったって言っていたな、と僕が思い出しているとそこで僕は手を引かれて、近くの路地にエルザに引きずり込まれた。
「あ、あの……」
「ちょっと待って。うるさい人が遠くに見えたから」
「うるさい人?」
「私にお姉様と呼ばせるのよ。私だってもう大人なのに……行ったわ」
そこで路地からこっそり顔を出して様子を見ていたエルザが安堵したように息を吐く。そして、
「さあ行きましょう。学園までもうすぐよ」
「エルザは以外に面倒見が良いのですね」
良い人だなと思って僕が言うと彼女は変な顔をして、
「何よ、悪い?」
「いえ、良い人だなって」
「なっ!」
エルザがまたも顔を赤くした。
僕、変な事を言っていないですよね? と僕が思っているとそこでエルザが小ホント一回咳払いをしてから気を取り直してじっと僕を見て、
「何だか見ていると不安になる」
「? 何がですか?」
「……放っておくと、悪い人に騙されてしまいそうな気がする」
「そんなはずないです。こう見えても荒事には長けているんです」
師匠達と一緒に、命がけの冒険に何度も繰り出したのだ。
だから僕は、何があっても大丈夫……だと思う。
力技に限れば、だが。
けれどエルザは僕を信用出来ないという目で見て、ミルフィにまあまあと宥められている。
酷い。
そう僕が思っていた所で、人相の悪い三人組に僕達は声をかけられたのだった。