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美味しい干しぶどう

 エルザに連れられて、安くて良い宿を紹介してもらえることになった。

 彼女の後を歩きながら、村特産の食べ物について話したりもする。


「“ムリムの森ブドウ”を干した物は、地元だけにある物でしたね」

「聞いたことがないわ、そんな果物」

「色があまり良くないですし自然のもので、僕達の村の直ぐ側の森に生えているものですから。師匠に付いて行って色々な場所に行きましたが、そういえばありませんでしたね。凄く美味しいのに」

「美味しいんだ……良いな」

「あ、食べますか? 今、少しだけですが持っていますので」

「本当!」


 エルザが目を輝かせてそういう。

 くるくると表情が変わる人なんだなと思いながらも僕は、そんな所も可愛いなと思っているとそこでミルフィが、


「エルザ、そんな風に……」

「う、で、でも甘くて美味しいらしいし」


 ミルフィにタジタジしながらエルザがそう一生懸命言い訳をしている。

 やっぱり知らない人から物を貰うのには抵抗があるのだろうかと思いつつ、とりあえず僕は目の前で“ムリムの森ブドウ”を干した物を取り出して、口にする。

 もぐもぐとしていると優しい香りが口にいっぱい広がる。美味しい。


 そして次に僕は、


「今食べたものがそうなのですが、どうでしょうか。案内して頂いたお礼に、とも思ったのですが」

「! 食べたい!」

「エルザちゃん!」


 叱るようにミルフィが言うけれどエルザは手を出してきたので、さらさらと干しぶどうを渡す。

 手に小さな山ができるような量。

 エルザが恐る恐るといったように一粒をつまみ、口に放り込む。


「! 美味しい! こんなの食べたことがない! ミルフィも食べてみなよ」

「……ぱく。……美味しい!」

「でしょう!」


 二人揃って嬉しそうに夢中になって食べている。

 可愛い女の子が喜んで食べてくれるなら、作りがいがあるなと僕が思っているとそこでエルザが、


「でも地元にしかない特別なもの、貴重なものになるのかしら?」

「そうですね。でも僕、こういうのを探すのは得意ですから。特に今年は、魔法で探査する方法も手に入れたので、この前家に帰った時に沢山食べきれないくらいとってきて作ったばかりなんです」

「そうなんだ……」

「しかも今回は、都市に来た時のおやつとして、今も沢山持っているのです。一部は、大人の味というか、アルコールにつけて瓶詰めにしてあるのですが……それは保存が特に効くので食べるなら一番最後ですね」


 そう答えながらもそういえばこの干しぶどう、師匠やお姉さん達にも人気なのを思い出す。

 これは何かに使えたり出来ないかなと僕は考えた所で、


「ここの宿が安くていいのよ」

「あー、確かに看板に書いてある値段表は安いですね。ここにします」

「……信用ありすぎるのも何だか不安になるわね」

「?」

「いえ、それよりも早く宿をとってきたらどう? そうしたら、この都市を案内してあげるわ」

「あ、はい」


 急かされて僕はとりあえず宿を取り、荷物を部屋においてくる。

 そして外で待っていてくれたエルザ達の所に戻り、


「今日はよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ。それでまず何処に行きたいの?」

「明日の試験会場である、学園への道を教えてほしいです」

「分かったわ」


 こうして僕は、エルザに連れられて、魔法学園までの道のりを案内してもらうことになったのだった。


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