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この服にかけられた魔法は防いだが

 現れたものは、“魔物”の一種で、今回はネズミを大きくしたようなものだった。

 それほど強い魔物ではないが数が多く、集団で襲いかかり冒険者を食いちぎるのだ。

 けれど個体数が多ければ一度に倒してしまうのも手ではあるので、一斉に焼き払おうと僕がする所で……僕の後ろから、次々とリフ、センリ、エルザが追い越して行って先ほどの魔物を倒していく。


 それほど強い魔物ではないが、こんなに簡単に倒せるのは彼らの実力である。

 そして全てを魔法やら件やらで倒しきった彼らは僕に振り返り、ドヤ顔だ。

 しかもエルザは僕に振り返り、にっこりと笑って、


「魔力は温存しておいたほうがいいでしょう?」

「え、えっとこの程度は、大して僕の魔力は使わない……」

「そしてまったくローデルの力が必要なくなったら“役立たず”って言ってあげるからね?」

「え?」


 だがそんな僕のつぶやきを無視して微笑んだエルザは次の戦いへ。

 今度は蛇のような魔物だった。

 それをザクザクと切り裂き、倒していくのを見ながらそういえばエルザは、“決闘”でもそこそこの魔力を使っていたのにまだ元気なようだ。

 

 から元気ではないといいと思いつつ僕は気づいた。


「そこはまだ調べていません! 罠が!」

「「え!」」


 エルザとリフが一番前に出て(一応王子様だったり貴族なので、そんな危険な所に真っ先に出ていくのは僕としてはやめて欲しいけれど、言うことを聞いてくれない)魔物に対処しようとしている。

 そこでヒュンッと風をきる音と共に風の魔力で殺傷性を上げた矢が飛んできて、エルザとリフに向かう。

 複数本、とっさの事で防御が間に合わないらしい。


 初めに聞こえたのは、ビリッという服が破れる音で、次がカンカンと矢が硬いものにぶつかって下に落ちる音だった。

 エルザに向かって飛んできた矢が胸のあたりの服をかすめて、形の良いわやらかそうな胸とブラがあらわになる。

 今日は白いレースのものであるらしい。


 しかも驚いた時にエルザの胸がぽよんと揺れて……。


「何を見ているのよ!」

「は、はい!」


 僕は慌ててエルザからそっぽを向きリフの様子を見る。

 どうやら怪我はないらしい。

 服への防御の魔法は上手く機能しているようだった。

 そこでリフが自分の制服を引っ張りながら、


「この制服、矢が当たっても破けることもなく、突き刺さることもなかったな」

「はい、防御の魔法が効いていますから。あと服以外にも全身防御にもなっています。師匠だったら、今みたいな魔法で肉体強化まで出来るのですが、僕はそこまでです」

「……そういえば、ローデル。知っているか?」

「? 何ですか?」

「こういった学園の制服ってそれなりの職人が、それぞれ役割分担をしているから一週間で作れるのであって、普通は一月以上かかるシロモノだからな?」

「え、えっと、え? で、でもお姉さん達は……」

「そのお姉さん達が何者かは知らないが、いいか、今の矢をこの服にかけられた魔法は防いだが、エルザの服は防げなかったぞ!」


 そこでリフが指差すと、丁度ルルが長く太めのピンク色のリボンで胸のあたりの敗れた部分を覆い隠して、リボン結びにしている所だったのだった。

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