私の認識する範囲
色々話し合った結果皆で移動することになった。
先ほど調べた場所に魔法攻撃を打ち込み罠を破壊していく。
他には起動条件がありそうな所も、単純な構造であったのでそのまま解除していく。
他の皆は黙ってついてきているようだ。
隊列は僕が先頭、次にエルザとリフとセンリ、最後にルルとミルフィだ。
いざとなったらミルフィの能力を使うためなのと、治療能力の高い聖女であるルルを一番最後にして、イザという時に治療に回ってもらうためだった。
こうして皆が来てくれるのはありがたいと僕は思う。
だが、親切に甘えられるような相手ではないのは十分僕は熟知していたので、エルザたち含めて全員、地上に出れそうな場所に来たら全員放り出そうと決めた。
後は、それに気づかれないように進むのみである。
“彼女”は“遊び”だと言っていた。
だからしばらくは、ここの罠を起動させたり魔物を放ったりわなを仕掛けたりを繰り返すのだろう。
飽きるまで。
けれど飽きた頃には、多くの熟練で強い冒険者を葬ったように、それこそ壊れた玩具を気に入らないからと踏みつけるように砕くのだ。
それまでに散々罠で消耗した所での攻撃は、熟練と言っても抵抗はきつかったのだろう。
ましてや返り討ちにして、ぎりぎり抹殺まで追い込まれた経験は“彼女達”にはなかったのかもしれない。
それを考えるとあの師匠に遭遇したのが、“彼女達”に取っては不運だったというべきか。
そのおかげで気に入られてしまった。
不愉快だが。
師匠も一緒になって愚痴を言っていたので、同じ気持だったのだろう。
見かけは僕や師匠と同い年ぐらいの彼女達。
けれど恐ろしい存在だったし、今だってそうだ。
そもそも今は突発的な出来事なので、もう少し装備を整えられたらと口惜しく思う。
そこで僕はあることに気づいた。
僕とリフの服は防御系の魔法がかけられていない普通の制服だ。
リフは王子様だ。
王子様に怪我なんてさせたら、イケメンだから今後僕は普通の女の子達に冷たい目で見られてしまうかもしれない。
確か師匠と冒険していた時は、お姉さんが服を作ってくれていたが、今はその服は全部おいてきてしまった。
「あの袋さえ持ってきておけば。くぅ、エルザの決闘を受けている場合じゃなかった」
「ちょっと、どういう意味よ、それ」
「いえ、僕とリフの制服は、ただの布なのでどうしようかと。防具関係はおいてきてしまったので……とりあえず簡易的な防御の魔法を制服に付しておきましょう」
エルザが黙ったので僕は真剣に考える。
どの程度効果があるかは分からないが、やれるだけの事はしておこう、そう僕は思った。
「リフ、防御の魔法を服にかけておく」
「あ、ああ」
「“光の膜”」
呟き魔法をかけておく。
これでとりあえずは大丈夫だ。
そして僕にもその魔法をかける。
出来る範囲の準備は整った。後は、
「もしもの時はミルフィにお願いします」
「あ、はい」
「それで能力を使うとどんな感じになるのかな?」
「え、えっと、予言や予知ではなくタイムリープなので私の認識する範囲が分かる形で、いわば、今の私が未来の自分と同期する感じです」
「ミルフィが知っている範囲、か」
そうなっているとミルフィが知らない、気づかないものは分からないだろうけれど、それでも予知などよりはよほど情報が多い。
いざという時は結構役に立ちそうな力だと僕は思う。
でも、出口を見つけたら放り出すつもりでは有るが。
そう僕が考えていると、何かがやってくる音が聞こえたのだった。
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