別な意味で、羞恥プレイ
説明を求められたので僕はちょっと黙ってから、
「……危険な敵とだけ伝えておくよ。“彼女達”は“名前”を口にされたり覚えられたりするのが“嫌”であるらしいから」
そう答えるとリフは、
「“名前”ね。まさか“未知”とか言わないだろうな」
「仮にそう呼んでいるのは知っているよ」
「マジか……まさかローデルは“未知”の本当の名前を知っているのか?」
「知っているよ」
「……よく無事だったな」
リフがそう言うのを聞きつつ、ルルとセンリが噴出しているのを見ながら僕は、笑い事じゃないのにと思いながら、
「僕、彼女に気に入られているから」
「気に入られている?」
「うん、“好き”なんだって。最近……一年位前は、殺さずに飼いたいって言ってる」
「……」
「でも出合い頭に一目惚れされたらしく、少しずつじわじわとなぶり殺しにして、私絵の怒りで、私の事ばかり考えるようになりながら殺してあげたいと……うっとりするように言われたのは悪夢のような思い出です」
「……とんだヤンデレに好かれたな」
「はい、でも師匠の方が、彼女の師匠に……いえ、何でもありません」
この辺りはあまり思い出したくないので、記憶から排除した。
さて、これからどうしよう、ここにいる全員を連れていくか。
僕はちょっと悩んでから、
「追いかける途中で地上に出れそうだったら、エルザ達は一度地上に戻った方がいい」
「ちょっと、私達が足手まといだというの?!」
「はい。エルザ達が怪我をするくらいなら僕が一人で行きます」
「ちょ……」
エルザが食って掛かろうとした所でセンリが嘆息し、
「だが、ローデル。以前は師匠や仲間がいたけれど今はお前一人しかいない。本当に大丈夫か? 優しいのはお前の美点だが、戦力があるに越したことはないぞ?」
「……大丈夫です、いざという時は、師匠にもらった“切り札”を使います」
そう答えながら僕は腕輪に触れる。
これを使うのは本当にいざという時だと、僕自身が決めているのだ。
まずは僕自身の力で解決する、そう僕が思っているとそこで、
「では、そんな危険な相手でしたら、私の力が役に立つのではないでしょうか?」
ミルフィが手をあげるけれど僕は、
「死んだらその能力は使えないのでは?」
「いえ、死んでも何だかしばらく前に自動的に巻き戻るようです」
「……そういえば師匠、危険な“彼女達”と戦う事になるって何日も前に準備をしていたような」
「そ、そういった意味で使えないでしょうか? 私やエルザの力が」
「……どうしてそんなに戦いたがるのかな?」
「や、役に立たないって思われるのが、その、エルザは……」
そのミルフィの言葉にエルザが反応した。
「べ、別に私は私の才能を腐らせておくわけにもいかないし。それに本当にローデル一人で大丈夫なのかを見届けてやろうと……」
「意訳:ローデルが心配だから、私が力になるならなりたいの、とエルザは言っています」
「……ミルフィ」
「だってもともとエルザはそういう子だもの。私、知っているから。この力で気味悪がられた時エルザは味方になってくれて、今だって一緒にいてくれているもの」
「別に、利用できると思ったから近くに置いているだけです」
ぷいっとそっぽを向きながらエルザが言う。
それを見ていたリフが嘆息するように、
「そういう悪役みたいな台詞を言うから、“悪役令嬢”と言われるんだ」
「べ、別に悪役っぽい事なんて言っていませんし!」
とりあえず僕はじーっとエルザを見ると
「な、何よ」
「やっぱり優しい人なんですね」
「……こ、このっ」
エルザが顔を赤くしていたりするが、罠の危険性があるためか逃走することなく、その場でプルプルと震えていたのだった。
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