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特殊能力:時間が巻き戻る?

 申し訳なさそうな、一歩引いたように手をあげたミルフィ。

 そんな彼女に近づいて行って、


「どうかされましたか?」

「いえ、あの……うまく言えないのですが、今、あちらに戻ると天井が崩れて下敷きになって、皆……死んでしまう」


 そう告げた彼女に僕はちょっと黙ってから、


「それはアレですか? 予知とかそういったもの?」

「いえ、ちょっと違うのですが大体そんな感じです」

「……天井が崩れた程度では僕が防御するから、死なないと思う。“無詠唱(ノン・スペル)”であの程度の重量……エルザのあけた穴の深さから推定しても、大丈夫だよ。いざとなれば魔法で打ち抜けばいいし」


 そう僕は、当たり前の事なのでそう答えた。

 この程度は、お姉さん達でもある程度は出来たものなので、多分、“普通”であるはず……だよね? と僕は最後に疑問符を心の中で付けた。

 なぜかというとみんなの視線がこう、お前は何を言っているんだというかのような……あ、あれ? 僕、何かを間違えたのかなと不安に思っているとそこで、リフが深々とため息をついて、


「ローデルの常識がおかしいのは放っておいて、それでミルフィ、それは予知なのか? だったらそれは避けるべきだと思うが……」


 リフがそう言うと、そこでルルが、


「聖女として、神殿の管轄内の予知に関わる話ですので口出しさせていただきますが……ミルフィのそれは“予知”ではありません」

「予知でないとすると、何になる?」


 リフがルルに問いかけるとルルは頷き、


「それはご本人に聞かないと。“予知”はそもそも、一つの事象に対して将来これが起こると、現時点では全く予想のできない、そして多くはあまりその予知者に関わりのない事象なのです。そんなに、あたかもミルフィ自身がその未来を見てきたかのようなものではないのです」


 そう告げると、ミルフィがびくっと震えて、そしてエルザがきっとルルを睨み付ける。

 それに気づいたセンリがルルを守るように前に出る。

 一触即発の雰囲気の中エルザが、


「ミルフィは嘘をつかないわ。そして私はミルフィが本当のことを言っているのだと知っている。今までもそうだったもの」

「エルザ……」


 ミルフィを庇うようにエルザが言う。

 けれどルルもセンリも、そしてリフも信じられないようだった。

 僕も疑わしい気もするけれど、今まで変わった力を持った人に何人も接触していたので、僕が予想もしない能力だったりするのかなと思い一応僕は聞いてみる。


「ミルフィの力が予知でないというと、どんなものになるのかな?」

「その……特定の時間で、それこそ特定の、ここ3年くらいの間だけなのですが、時間が巻き戻るんです。私以外の記憶はすべて消去されますが」

 

 話にならないとリフ達が嘆息するのが聞こえたが、それを聞いて僕は、


「そういえば前によく師匠が、今、時間が巻き戻らなかったか? と言っているのを聞いた気が……」

「「「……」」」


 僕の冷や汗を垂らしながらつぶやいた言葉に、リフ達が無言で僕の方を見た。

 ミルフィ達も、え? といったように僕の方を見ている。

 いやいや、まさかと僕は思いつつ、


「と、とりあえず、“熱の操り人形(フレア・パペット)”」


 僕は炎の人形のようなものを作り上げる。

 ここで議論するよりも実際に様子を見た方が早いと僕は考えたのだ。

 これも罠をさけたりするのにも使えるものだけれど、それを来た道、暗闇の中に向かわせるけれど……。


 ミシッと何かがきしむ音が聞こえてそして、破裂するような音がして……天井がガラガラと崩れているようだ。

 しかも完全にふさがれたらしく石ころが大量にこちらに幾らか流れ込んできている。

 明らかにミルフィが言ったとおりだった。


 でもこの状況から考えるに、


「とりあえずここを吹き飛ばして、地上に出た方が安全そうだからそうするよ。侵入者を確実に仕留めようと罠を張っているようだから、そこを行くよりはずっと安全だし」


 そう僕が告げた所で……声がした。


「えー、ローデル君、帰っちゃうの? つまんなーい」


 笑い声と共に僕は、僕自身がここでは会う事もないだろうと思っていた人物……。

 けれどミスティアのあの件を聞いた時から関係がありそうだと不安を覚えていたその人物。

 そんな彼女が、重なる刃のその先に現れたのだった。


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