おずおずと手を挙げた
とりあえずは蝙蝠の敵を倒した僕達。
現在、ルルが治療にあたってくれているのでそちらの方は心配はないけれど、
「どうしてここにこんなものがあるんだろう。……ミスティアのアレとも関係があるのかな? 師匠はどうしているんだろう?」
僕は考えてみるけれど、当たり前だが答えは出ない。
ただ少なくとも以前ここに、もしくは今でも“彼女達”がいるのかもしれない。
それはとても危険だ。
そう思いながら僕は、大きな刃に付された“呪い”を解除する。
何かの拍子に罠が修復、起動した時、たまたまここにきてしまったりしたなら危険だからだ。
というか、そもそも有効利用するなら危険な部分は一通り処理を施しておけばいいのにとも思う。
結構長い時間、ここの学園が作られてから立っているのだから。
怠慢だなと僕は思いつつ、そこで、
「はーい、ではこれに手治療を終了しました」
「あ、ありがとう。えっと、ルル、だっけ」
「そうです。今まで一緒のクラスじゃなかったからお話したことがありませんでしたが、ふむふむ、なるほど」
「な、何よ」
「いえ、魔法耐性が高いなと。この“呪い”はここまで短時間で解除はできませんでしたからね~。……どこかの存在すらおかしい、誰かさんの師匠を除いて」
ぽつりと、どことなく師匠の悪口を言うかのようなルル。
確かにあの時、ルルのプライドがある意味で傷つけられるような事態があったが、あれは緊急事態だったわけで、そのおかげで皆助かったからいいと僕は思うのだ。
そこでリフがエルザに近づいていき、
「それで体がおかしい所はないか?」
「……大丈夫です、義兄さん」
「本当だ。でも、まさかエルザが怪我を負う事になるとはな。“遺跡”がこんなに危険とは思わなかったな……」
リフがエルザの怪我の様子を見ながら、大丈夫だと安心したような顔になったかと思うと、すぐに深刻そうに言う。
けれどそのリフの言葉にエルザは少し口ごもり、
「……罠の、魔力のようなものをまったく感じなかったのです」
「え? でもさっきは俺でも分かったぞ?」
「そうですね、今は良くわかりますが、先ほどは全く分かりませんでした」
そこまで話してから、全員は沈黙する。
僕も嫌な予感がして、そっと壁に触れてから、
「“探査”」
壁を伝い、今度は魔法の痕跡を探す。
僕の触れた場所から、天井と床に光の線が走り、この廊下を輪切りにするような光の帯ができる。
黄色い色の光のそれに向かって僕は、先ほどの刃が連なる方向を見て、
「行け」
そう呟く。
同時にその光の帯が動き出し、動いた場所の壁が黄色に輝き色付けされる。
けれどそれは途中から所々、穴が開いているようだ。
その部分は先ほどの魔力の光が“無効化”されているらしき場所だ。
本来は“探査”をした場合に調べ残しがないかを確認する光の色付けの魔法であったのだけれど、実際に使ってみると所々に奇妙な穴がある。
だが、こうしてみると逆にわかりやすいが。
「あの光が灯っていない所が罠がある所みたいです。それでエルザは気づかなかったのかも。そこを一通り解除してもいいのですが罠の偽装を考えると……この先もこのようなものが沢山ありそうですから、来た道を戻りませんか?」
そう僕は提案した。けれどそこで、
「あの、少しよろしいでしょうか?」
そこでミルフィがおずおずと手を挙げたのだった。
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