次の授業までに
魔法を使った僕にエルザはそういう。
そんな彼女に、じろりと睨まれて僕は震え上がる。
けれど彼女は僕を睨んだまま、
「どうして私にその力を使わないの? そんなに力に自信があったの? それとも、女装メイドになりたい、そんな趣味があったのかしら」
「そ、そうじゃなくて、エルザに怪我をさせないようにしないと。女の子に酷いことをする男は最低だって師匠も言っていたし」
「師匠? ふーん、その魔法は師匠って人に習ったの」
「は、はい、あとはお姉さん達に」
「お姉さん達?」
怪訝な表情で返されて僕は、慌てて、
「し、師匠の事が好きな、お姉さん達で、いつも一緒にいて……」
「何、それ。女の子を何人も囲っていると?」
「囲う?」
知らない表現が出てきたので僕は首を傾げると、またもエルザは黙ってしまう。
これは一般的な、知っていなくてはならない知識だろうか? そう僕が不安に思っていると、再びエルザに睨みつけられる。
「そうやって知らないふりをして、私の口から説明させる気だったのかしら? その手には乗らないわ」
「ち、違います、僕、本当に知らないんです!」
「どうだか。その師匠って人の話、今聞いた範囲だと碌でもない人物のように聞こえるけれど」
そこでエルザが、嘲笑う。
けれど僕は今まで以上に衝撃を受けていた。
一瞬、呆然としてしまったと言っていい。
カラカラに口の中が乾いて、けれど、かすれた声でも言い返さずにいられないような激情が走り、
「……さい」
「? 何?」
「師匠、の悪口、は言わないでください! 師匠は僕にとって憧れの人なんです! 強くて、優しくて、僕の持っていないものを持っている、あんな人になりたい、そんな人なんです!」
僕を悪く言われるのは我慢できた。
でも師匠を悪く言われるのは絶対に許せない。
思わず睨みつけてしまった僕に、珍しくエルザが驚いた顔をして、すぐにうつむき、
「……ごめんなさい、私も少し言い過ぎたわ。……まさかそんな貴方にとって大切な相手だとは思わなかったわ」
と、素直に謝った。
意外に思いながらもそこで僕は、自分らしく無く感情のままに言ってしまい、恥ずかしさを覚えながら、
「いえ、僕の方もつかっとなってしまい……え、えっと。それでその、僕が手加減というかそうしたのはその、本当に僕、エルザに誤解されていてそれが解きたくて、もし欲を言うなら友達になれたらなって思ったんです」
「……」
「だって僕が都市に来てすぐに道案内もしてくれましたし。本質的には親切で優しい人なのかなって」
「……もしもその今の言葉が本心だとしたら、貴方、凄く騙されやすい人物でいつか痛い目にあうと思うわ」
「ええ!」
「でもまあ、そうね。私に本当に勝てたら、信じてあげてもいいわ」
「本当ですか! じゃあ……」
「でも、闘技場はこのように破壊されて試合は続行出来ない。だから代替案を示すわ」
そこでエルザが遺跡を指差して
「これからこの遺跡に入って、どちらがいいものを取ってこれるかで勝負しましょう!」「! 危険です、何の準備もなくって……話を聞いてください!」
けれど僕の話を聞かずにエルザは穴の中に飛び降りて、遺跡の内部に入ってしまう。
遺跡の危険性を全く理解していない“素人”としか思えない行動。
ミルフィがエルザを追いかけていくのを見ながら僕は、まさか、と思った。
「エルザ、遺跡にはいるのって初めてなんじゃ……」
「そうだな、知識でしか無いな」
「……リフ、何でそんなに楽しそうなのかな?」
「え? 遺跡に行くみたいだから。それにローデルがいるなら安全だろうし」
「……」
「断られてもついていくからな」
そんなとぼくは思った。
しかも、ルルとセンリもついてくるらしい。
この二人の実力は知っているけれど王子様はどうなんだと僕は思いつつ、別の問題にも気づいた。つまり、
「授業はどうなるのでしょうか」
審判の先生に聞く。
先生はちょっと考えてから、次の授業までに帰ってくるようにと、僕はそう言われてしまったのだった。
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