不穏な予兆
光に当たると同時に、小さく震えだす小さな石。
魔力の発露を感じる。
破壊された時に、地下に埋まっていた遺跡に光が当たったのまずかったかもしれない
元々遺跡には幾つか種類がある、もしくは複合しており、どうやら大まかに見た壁などの模様や構造からこの見えている遺跡は、珍しい“暗闇”の遺跡であるようだった。
それを見ながら、先ほどの青い石に注視する。
光に当たって震えた、それはこの“暗闇”の遺跡によくある罠や、防御機構の一種だった。
“暗闇”であるがために本来存在しない“光”が現れる=敵といったように認識して、その光を追うかのように現れて襲い掛かってくる。
また、遺跡の外に出たたとしても、一番初めに“光”――師匠が言うには、可視光――を与えた存在を延々と追ってくる怪物もいるために、“暗闇”の遺跡に入りたがるものはあまりいない。
以前師匠が面白半分で、あれと同じような青い石に光を当てて、戦ったことはあった。
もちろんその時は圧勝だったのだけれどあの青い石は“魔の潜む石”、ちなみに魔の潜む石は遺跡に存在する罠や防御機構などの総称であり、あの青い石自体がレーシーと呼ばれる種類のものである。
さてここで大穴を開けられたことによって、見ていて確認できる範囲の“魔の潜む石”は一つ。
本来なら以前師匠が作っていた、師匠の世界に原型のある魔道具“あんしすこーぷ”を利用して暗闇の中を観察しながら進むような遺跡である。
そんなある程度装備が必要な危険な遺跡が、このような学生の学び舎というか生徒がいるような場所の地下にどうして存在するのかと僕は、物申したかった。
「でもそんな事が言ってられる状態じゃない、か。……“探査”」
“無詠唱”で発動させた周辺の探索魔法の一種。
これは対象の魔力に向かって走り、単純なものであれば同化し傾向を読み取り、無理であれば片鱗を“情報”として複製し、僕のもとに戻ってくるものだ。
これで大体の傾向が分かる。
光にあたった“魔の潜む石”はまだ出来かけのようであったけれど、属性傾向が炎であるらしい。
今の“探査”で場所の特定が済んでいるために後は、
「相手が動き出す前に攻撃するだけ。魔力量からの逆算した場合の最適な攻撃は……うん、“無詠唱”でいける! “氷の息吹”かける~“5”」
僕は“魔法陣”タイプの魔法を“無詠唱”で水色の光の円陣を宙に5つほど浮かべる。
すぐにそれらから光の粒が舞い降りて、次々とそれらが鋭い大きな氷となっていく。
声が聞こえた。
炎の形をした人型の人形のようだ。
けれどすでに僕は攻撃用の魔法は完成している!
「行け!」
その号令とともに一斉に氷が発射される。
炎の怪物であるためか、氷が蒸発しているらしい音、けれどそれもやがて乾いた音と硬いものがぶつかり合う音だけになっていく。
それがしばらくして何も聞こえなくなり、そして僕は先程まで膨れ上がっていた魔力は消え去った。
どうやら倒せたらしい。
周りにも特には魔力は感じないので、第二、第三の“魔の潜む石”はなさそうだ。
僕一人だけれど、何とかなったと安堵しているとそこで、
「……まさか、これだけの力があるとは思わなかったわ」
エルザの声がしたのだった。
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