どうしようかな
第二回戦、再びの戦闘。
そこでリフが僕に、
「エルザが起こった時は何をするか分からないから気を付けてくれ。出来るだけエルザを怪我させないようにしてくれ~、特に顔! 嫁入り前だし」
「お義兄様! さっきからどちらの味方なのですか!」
「はははは」
またもエルザの言葉に、リフが笑って誤魔化した。
それがエルザの怒りに油を注いでいるように見える。
僕は挑発するよりも気づかれない間に倒せればいいって思う、穏健派なのに!
でも怪我をさせないようにというと、取れる手段が限られてくる。
氷で滑って倒すという方法は次は取れない。
さてどうしようかなと考えていると、エルザが呪文を唱え始めた。
とりあえず、口の動きから呪文を確認。
手練れになると唱えている呪文と唇の動きを変えてくるという技を使ってくるのだが……そもそもそれはお互いが呪文を唱えて攻撃しあう場合において有利に働くだけなのだ。
つまり、“無詠唱”である程度火力が保証できれば、それほど意味のある特技ではないのだ。
そのために、そのような技術を獲得した、村に“呪い”をかけて作物を荒らした悪徳魔法使いが、師匠の“無詠唱”によって一撃で倒されていた。
あの時、『今、何かやろうとしたのか?』と嗤って師匠が見下ろして、その悪徳魔法使いは恐怖で毛髪を白くさせながら逃げていったのを覚えている。
ただ、そういった小手先技を使うようなタイプでは、エルザはなさそうだったので、そのままの魔法だろう。
炎系の比較的強め……であるらしい、“炎の刹那”だろう。
となるとまずはその一撃を防ぐのを目撃として僕は選択する。
「“氷の壁”」
「“炎の刹那”、って、なんで私の魔法が分かったの!?」
ふむ、実戦経験はあまりなしとみてよさそうかな、と僕は見当をつける。
“無詠唱”で作ったものは、氷の分厚い壁を目の前に作り上げるだけの“単純”な魔法だ。
対して“炎の刹那”は複数の炎の塊を生み出しやろうと思えば個別にコントロールして攻撃できる優れものである。
ただその炎の塊の支配できる範囲が、未熟者と熟練者では範囲が異なり、前者であるとエルザを判断した僕はこの闘技場を半分に分断する程度の氷の壁を作った。
そして炎がこの氷の壁に当たる。
音と光に透ける氷の薄さからも、エルザの魔法の威力を僕は推定する。
「僕の予想よりも強力な魔法だ。エルザを僕は侮っていたかもしれない」
もう少し気を付けるべきだったと僕は反省した。
それから、僕が人差し指で軽くこんとやると氷の壁が薄くなっていた所から亀裂が入り、崩れていく。
予想以上のダメージだ、もしかしたらしばらく机に向かって勉強ばかりしていたので、体がなまっていたりしているのかもしれないと思う。
そんな僕を驚愕したかのようにエルザは見ていたが、僕が見ているのに気づくとすぐにエルザが、
「なるほど、お義兄様がああいうだけの事はあるわね。そして初めて会った時も、確かに……実力はあるようね。でも、今の魔法も私にとってはちょっとした小手調べ程度の物よ? 落ち着いているようだから聞くけれど、全く分からないのかしら」
余裕めいた笑みを浮かべるエルザ。
その会話から僕は、小さく呻いて先ほどの戦闘から分かった事を思い出して、
「そうですね、分かったのは、今日のエルザのパンツが縞パンだったこと位しか……」
エルザくらいの魔法使いは優秀ではあるだろうけれどこの程度なら今まで師匠と沢山見てきたので、それほど“分かった”と言えるほどの重要なことではない。
となると唯一の収穫はというと、と思った所で僕は失言に気付いた。
「は、しまった、つい口に出し……ひぃ」
目の前には怒りに震えるエリザがいた。
本気で切れている時の女の子のそういった威圧感を感じる。
僕がそれにガタガタ震えているとそこでエルザが、呪文を唱え始めたのだった。
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