本日は、水色の縞パン
“決闘”開始の合図が鳴った。
空砲のようなものが数回、風船が破裂するような音を立てる。
「行くわよ! まずは……」
とエルザがこちらに走りながら獰猛に笑っている。
接近してから攻撃を仕掛けようとしているようだ。
小さく呟いて、彼女の周りに風が集まっていく。
そういえば、以前であった彼女もいきなり敵に突っ込んで行こうとしたり挑発したりしていた。
猪突猛進タイプなのかもしれない。
師匠と同じだ。
何だかよく似ているなと思いながらも、師匠の場合は裏打ちされた実力があったからだ。
そして彼女の場合は、まだ僕が言うのもなんだけれど“未熟”だ。
力を過信して溺れていた高慢な人達には、何人にもお目にかかっていたけれど、その人達にも“似ている”。
そういった人たちは、ほどほどにプライドを折るのが大切なんだぞと師匠は微笑みながら言っていて、お姉さん達は、一番酷い攻撃だと笑っていた気がする。
でも取り返しのならないことになる前に修正できるのだから、いいことなんじゃないかな? そう僕は思った。
なので実践することにした。
「“氷の平原”」
「ふぎゃああああああ」
“無詠唱”で僕が使った魔法が僕を起点として放射状に地面を凍らせる。
ほどほどに暖かい気温のせいで氷がすぐに少し解けて、表面に薄い水の膜ができている。
後は分かるな?
そこでエルザが僕の数メートル前に、ふわっとスカートが舞うのが見えた。
そのすぐ後に黒いローファの底が見える。
どんと大きな音を立てて何かが地面に落ちる音がする。
エルザが後ろに落ちて尻餅をついたらしい。
「痛たたたっ、何よもうっ……え?」
そんな尻餅をついたエルザに僕は近づく。
そして両手首をつかんでそのまま僕はエルザを地面に押し倒した。
エルザは、えっ、えっ、と小さく顔を上げて顔を赤くして見上げている。
何かを勘違いされている気がしたけれど、僕の目的を果たすには仕方がない。
服が濡れてしまうかもだけれど、これは“勝負”なので手を抜くことができないのだ。
あと少し、あと少し。そこで、
「勝者、ローデル!」
審判の先生が告げる。
どうやら今ので一本勝利が確定したようだ。
これで一つ、僕の女装メイドへの道が閉ざされた。
よかったよかった、そう僕が思っているとそこで、僕の下から恨めしそうな声が聞こえた。
「よーくーもー」
「うっ、で、でも、“勝負に妥協は許されない”って師匠も言っていましたし、これは勝負なので……」
「ふん、この私から一度でも勝利をもぎ取った、その点は……あなたの実力を認めていいわ」
「あ、ありがとうございます」
「それで、手首をつかむのを放してもらえるかしら」
「は、はい……うわっ」
そこで手首を放した瞬間身軽な動きでエルザが僕にけりを入れてこようとしたので慌ててそれをよけて、僕はエルザから間合いを取る。
次にエルザがどのような手を使ってくるのだろうかと僕が警戒している目の前で、エルザがゆらりと立ち上がる。
同時に何かの呪文を唱えられて、僕が地面に張った氷が瞬時に蒸発した。そして、
「覚悟なさい。貴方は簡単には、“敗北”なんて優しいもの、あげたりしないのだから」
「そ、それは悪役みたいな台詞になっている気が……」
けれど僕の突っ込みは無視された。
そして第二回戦に突入しようとしている。
だがこれまでは一応手加減してくれていたのか、本来のエルザの能力がそこまでわからなかった。
“ステータスオープン”を師匠並みに使えれば、速攻で相手の能力が分かるのだが、僕が未熟なのでそれは一回で出来ないし、警戒もされているので難しいだろう。
それにあの制服自体に何か効果があるようだ。
実際に先ほど転ばせたはずなのにエルザの制服は濡れていない。
おかげでエルザに関しては今の所、“未知数”といった表現が適しているだろうか?
ただ、今日、この第一回戦でエルザと戦ってみて一つだけ分かったことがある。
本日のエルザのパンツは、水色の縞パンだった。
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