美少女と遭遇しました
偶然ぶつかった彼女は、青いワンピースをした少女だった。
赤い瞳に金髪を白いリボンでサイドテールした、師匠と一緒にいたお姉さん達と同じくらい綺麗な美少女だった。
でも師匠の周りにいたお姉さん達は他では見たことがないような美人と評判だったので、この人も美人と称される美貌なのだろうと僕は思う。
そこで気づいた。
こういった所が、師匠が言うにはこの世界の一般社会に馴染むのに必要、と言われてしまう理由なのかもしれない。
僕はそう納得していると目の前の彼女が、
「ちょっと、何をじろじろ見ているのよ」
「ご、ごめんなさい」
半眼で怒ってくる彼女、おそらくは同い年の彼女に僕は謝っておく。
女の子が起こっている時はとりあえず謝ってそうだねといっておく、師匠から教わった処世術だ!
でも師匠は結構失敗して殴られていた気がするけれど、僕はもっと上手くやれる。
そう思ったけれど目の前の彼女はじっと僕を見て、
「貴方、変ね」
「な、何がでしょうか」
「私を見て、もっとこう……そういう目で見ないのね」
「? そういう目?」
「……そもそも美的感覚が違うのかしら」
「……えっと、美人だとは思いますです」
今の会話から僕は、彼女が僕にマニアックな美醜感覚を持っていると判断されそうなので僕は慌てて彼女にそう答える。
彼女は眼を瞬かせて次に顔を赤くして、
「しょ、正面からそう言わないでよ」
「え、えっと、僕、何か間違えたのでしょうか」
「……いえ、いいわ。何の下心もなく美人て言われたのが久しぶりだからね。うん、そうそう。というか、私が誰だか知らないの? その腕につけている腕輪、魔法道具でしょう?」
そう言って彼女が僕の腕についている腕輪を指さす。
これは以前、魔法学園に入る選別として師匠に貰ったものだ。
一見ただの輪っかに赤い石が入っただけの、安価な魔道具に偽装されたものだが、あの師匠が作り上げたものなので普通ではない。
僕もまだこれと同じものは再現できないけれど、そのうち作れるようになりたいと思っている魔道具の一つだ。
そんな彼女は僕の腕輪をじっと見て、
「それ、何かおかしくない? 普通じゃないような」
「! そ、そんなことないです」
「そう? ……そもそも魔法使いでこの年齢なのに私を知らないなんて、いったい何者?」
「あの、僕、今日都市に来たばかりで、今度、魔法学園の試験を受けることに……」
「貴方、外部の新入生……予定なの? どうりで……」
そこで彼女がようやく破顔した。
花がほころぶような笑顔に僕は一瞬魅入られてしまう。と、
「どうしたの? またじっと見て」
「いえ、笑うと凄く可愛いなって」
「か、可愛い……私が、可愛い……そんな事言われたことがない」
目の前の彼女が今度は顔に手を当てて更に顔を赤くしている。
僕、何か間違えたんだろうか。
そういえば師匠も、お姉さん達に可愛いというと顔を赤くしていた気がする。
でも僕が言ったら、ローデルは、私達に美人なお姉さんていってねと言われてしまった。
何が違うのかわからなかったけれどそういうものらしい。
僕が新たな謎に直面しているとそこでもう一人、水色のショートカットに緑色の瞳をした少女だ。
こちらも恐らくは美人に分類される女の子だけれど、彼女は、
「エルザ! また一人で何処に行く気なんですか」
「ミルフィ……ちょっとストレス解消に外に出ただけよ」
「でもエルザ、貴方は……あら、そちらの方は?」
不思議そうに新たに現れた、ミルフィという少女が僕を見る。
そこで、先ほど遭遇したエルザという少女がにたりと笑った。
「実は、この子と待ち合わせをしていたの。今日は都市を案内する約束をしていたから」
「「え?」」
僕とミルフィがそんな声を同時に上げたのだった。




