“決闘”開始
エルザとの“決闘”の時間がやって来た。
なぜ学園内にこう言った小さな闘技場があるのか僕は聞きたい気持ちになったけれど、どうやら魔法の演習でこういった場所は良く使われるらしい。
そして、僕はその闘技場の上でエルザと10メートルほど離れて向かい合っていた。
審判らしい先生が、場外で僕たちの間にいる。
そこでエルザが、
「ルール、覚えているわね。一応確認しておくけれど、先に相手を三回地面に10秒間ひれ伏せば勝ち。魔法を使ってもいい。わかっているわね」
「は、はい。三回、地面に倒れればいいのですよね? そうすれば勝利と」
僕がじゃあどうやってエルザを転ばせようか考えているとそこでエルザが、
「あら、三回も挑戦できると思っているの?」
「え?」
「私は初めの初戦であなたを倒して、しばらく戦闘不能にして二回戦、三回戦はなしにしてやろうと考えているの」
「それは時間制限があると?」
「そうね、授業中だから授業の範囲内って事になるわね」
それを聞きながら僕は、一回でも勝てば後はエルザの攻撃を回避し続ければ勝利だと気付く。
僕としてはエルザの誤解を解きたいのと、女装メイドにさせられる悪夢のような未来の回避さえどうにかなれば、それでいいのだ。
欲を言えばエルザとも友達になりたい。
だから僕は頑張って勝利するのだ!
と意気込んでいると場外だけれど、出来るだけ近くで観戦しようとしているらしいリフが僕に手を振り、
「ローデル、エルザに怪我をさせないようよろしく~」
「分かっています。女の子は大事にします!」
「よし、いい心がけだ。あ、エルザもがんばれよ~、ほどほどに」
リフがエルザにも手を振りながらそのような応援? をしている。
それにエルザの顔に朱が走り、
「ほ、ほどほどにって、お義兄様はどちらの味方なのですか?!」
「え? いや、頑張れ」
「お義兄様!」
怒ったようなエルザの声に、ハハハと笑ってリフは誤魔化している。
そこでエルザがリフたちから離れて様子を見ていたミルフィを見て、
「ミルフィ、貴方は誰の味方?」
「……エルザ、むきになって苛めないようにしなよ~」
「! ミルフィまで私を裏切るのね! いいわ……この私の悲しみ全てを、お前にぶつけてやる!」
闘争心が増してしまったらしいエルザに、僕、何も挑発していないのにと思った。
そこで今度は別の方から声援が。
「ローデル君、がんばって~」
「かんばれ」
ルルとセンリがそう応援してくる。
それに僕は元気良くお礼を言って、どうやってエルザを倒そうかと考え始めたのだった。
声援を送っているルルとセンリの近くにリフが近づいて声をかけた。
「どうもこんにちは。初めまして、リフです。寮でローデルと同じ部屋なんですよ」
「あら、そうなのですか」
ルルが面白そうに笑い、けれどルルのそばにいるセンリはリフが初対面なために警戒をしているようだ。
神聖騎士という存在には幾度かお目にかかったことがあるが、彼女も優秀だとリフは心の中で思いながら、違う事を聞く。つまり、
「率直にお聞きしますがローデルが勝つと思いますか?」
「ローデル君が負けるはずないよ」
「私もそう思います。やる時はやる男の人ですから」
即答するルルとセンリにリフは、
「くぅ、俺もそう言われてみたい! よし、ローデルの近くにいてそれにあやかろう」
自分から頑張るのではないリフの発言に、ルルとセンリが小さく笑う。
そこで、“決闘”開始の合図がなされたのだった。




