全部、お姉さんに教わった所ばかりだ
ミルフィにはエルザから説明がなされた。
色々とモノ申したくなるような説明だったけれど、
「またエルザ、早とちりをしたの?」
「! ミルフィ、貴方どちらの味方なの!?」
「えーと、ローデル君、エルザの事をよろしく」
「ちょ、ミルフィ、何を言っているの!?」
といったような会話があり、僕はミルフィにエルザをお願いされてしまった。
ミルフィはなんだか不思議な子だな、と思っているうちに教師が来てしまったのでそれ以上彼女と話す機会はなかった。
そして授業が始まる。
まずは“魔法学基礎理論”というものだったのだが、
「えー、魔法とは、我々の存在する“空間”に、炎などの本来そこにそれまで“認識”できなかった物を我々が持つ“魔力”により“存在”させる魔法です」
といったように基礎事項が始められる。
魔法。
呪文などを唱えることにより、現在、存在していない場所に“事象”を生じさせる魔法だ。
大まかに、火、水、風、土に分けられるが、すでにこの分類はあまり意味がない。
現在の魔法はどれかの属性のみを使って起こせるような、“原始的”な魔法ではない。
特に、“知覚”を中心とした魔法からさらに奥に掘り進められて、“知覚”の強化や“推定”からの“実証”といった様々な研究がなされている。
そして魔法といった、術者の望む“事象”を起こす方法には幾つかの手順が存在する。
呪文、魔道具、魔法陣などなど。
とはいえ、呪文は省略して魔法を引き起こせる“無詠唱”も呪文の種類に分類される。
この呪文という部分にだけ注目すると、この“魔法”についてある疑問が浮かび上がってくる。
それは、対象となる言葉と事象が一致している、という点である。
どんな言語でも同一の事象を表しているのならば、それぞれの言語で魔法を示し使ったとしても同一の事象が再現される。
この世界には複数の言語があるが、そういえば師匠は全てを“同一言語”と認識しているようだった。
もしかしたなら師匠は、この世界の“事象”自体をそのまま“認識”して僕達と会話しているのかもしれない。
“魔法”により近いといえるだろう。
違う言語という形で出力がされている、それが“魔法”であるらしい。
それを知るための実験でその昔、、炎を氷、氷を炎と教えて魔法を使わせたが、呪文通りの魔法しか行えなかったらしい。
言葉が発せられた時に、その起こす事象の“道”に魔力を一度通しているのではないか、といった仮説もあるがまだよく分かっていない。
また呪文などの道具を使うのは、複雑なものを発生させるための“道”やその“道”を通す間での増幅の効果を期待して使用するのだけれど、やろうと思えばその増幅や複雑な道などを自身の魔力で瞬時に引き起こせる。
特に師匠はそういったものに長けていた。
ただ強いもの相手であったり余裕のある時は、“選択画面”なるものを使い、一瞬にして強力な魔法を行使していたが。
これら以外にも細かい“魔法”についての知識が僕にはある。
そういったものはお姉さんに教わって学んだものだ。
そして現在僕は授業を受けて、青くなっていた。
「どうしようこれ全部、お姉さんに教わった所ばかりだ」
これでは、ただでさえ電流に負けて首席を取ってしまったというのに、モブへの道が閉ざされてしまう。
普通の試験はあの拷問のような椅子はないだろうか?
それを期待するしかない……そう思いながら授業を受けてそして、魔法演習という、エルザとの“決闘”の時間がやって来たのだった。
次回、明日0時頃に登場人物のまとめを追加します




