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とても柔らかいです?

 僕がルルの胸に顔をうずめているとエルザが現れた。

 そしてもう自分が王子様だと隠す気がないのかそもそも開き直っているのか分からないリフが、エルザに手を振っているが……エルザの目はまっすぐに僕をとらえていた。

 しかも現在の僕の状況というと、ルルの巨乳に顔をうずめている僕という……そこでエルザが、


「今、どんな気持ち?」

「とても柔らかいです?」


 聞かれたので僕はつい正直に答えてしまった。

 だがそれから凍り付くような沈黙後、エルザが怒りを秘めた声で、


「おかしいおかしいと思っていたのよ。そもそも失敗で服が破けるなんて、そんな魔法があるのかしら?」

「で、でも僕本当に……」

「一見純朴で何も知らないような顔をして、その実、ただれた欲望にまみれた人物だった、そういう事なのね」

「ち、違います!」

「そんな恰好で言われても説得力がないわ!」


 怒ったように言われて僕は、確かにそうですよねと思った。

 この状況で信じてくださいと言っても僕なら信じない。

 そこでエルザが、黒く嗤った。


「この私を騙した罪は重いわ。貴方の手の平で転がされているような気がしたけれど、全てが計算ずくだったのね!」

「ち、ちが……」

「言い訳は聞きたくないは。でもそうね、だったら機会をあげる。この私を謀った罪、でもこれを受けるなら見逃してあげてもよくてよ?」

「な、何をすればいいのでしょうか?」


 僕はこの誤解をもしかしたら解けるかもしれない、そう思って聞くと彼女は笑みを深くして、


「“決闘”よ」

「“決闘”、ですか?」

「そう、ちょうど今日のお昼前の授業が、魔法演習だったはず。その時に先生に話して“決闘”を行いましょう?」

「授業中なのにいいのですか?」

「ええ、むしろそういった時でないと、申請やら何やらが面倒だしね。授業の範囲内で、生徒同士の小さな小競り合いがどうにかなるのだったら、楽だというのが学園側の意見よ」

「ルールは?」

「先に相手を三回地面に10秒間ひれ伏せば勝ち。魔法を使ってもいい。ね? ルールは簡単でしょう?」


 確かにルール自体は簡単だ。

 受けるのは構わないけれど、ここで僕が鬼畜だのなんだのという不名誉な称号を消し去るという、言質が欲しい。

 だから僕は、


「それで僕が勝利したら、エルザはどうしてくれるのですか?」

「勝つつもりでいるの? ……私も舐められたものね。でもそうね、勝ったら奴隷でも何でも言うことを聞いてやるわ」

 

 僕を見下すように笑うエルザ。

 以前であった時はもっとこんな風な感じじゃなかったのにと思って、


「確かに誤解があるけれど、エルザはどうしてそんな風に高慢に僕に言うのかな?」

「当然でしょう? 私は……」

「僕、親切で優しい人だと思ったのに」


 正直に告げるとエルザは沈黙した。

 それから後ろを振り返り、大きく数回深呼吸してから振り向き、


「私を弄んで楽しいの? いえ、答えなくていいわ。私は貴方の甘言に乗らない」


 そう言って睨み付けてくるエルザ。

 完全に警戒されている。

 こうなってはエルザの言うように戦って勝利して誤解を解くしかなさそうだ、そう僕は諦めてから、ふと先ほどの言葉で気になる言葉があるのに気づく。つまり、


「それでその、エルザの言う“奴隷”になってもいいって、どういう意味なのでしょうか」


 そう、エルザの意図する僕の勝利したご褒美? について聞いたのだった。


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