鬼畜男子の称号
こうして僕達は今日の時間割を確認し、鞄に教科書を詰め込んだのだけれどそこでリフに、
「……明らかに鞄入らない大きさの本が入っていくのを、俺は見た気がした」
「え? あ、いつも使っている鞄に入れてる。えっと指定の鞄は……これだ」
リフに指摘されて僕は、学校指定の鞄に教科書を入れ替えていく。
そして筆記用具やノートの全てを入れてから、一息ついているとリフが、
「それでその小さいのに大きい物を収納できる鞄は何だ?」
「これですか? 師匠が使っているものを真似して作りました。何でも、師匠の世界の“げーむ”というものでは日常的に使われるもので、大きな甲冑なども収納できるそうです」
「……嬉しそうに師匠の自慢話をしているつもりだろうが、それはもしかして危険な“時空魔法”系の魔法を使っているんじゃないのか?」
「そうですが、危険? お姉さん達も使っていましたが」
「……その“時空魔法”系を使える人間は一部しかおらず登録が義務付けられている。小さな魔法でも危険だから。つまりその鞄を使うだけで、犯罪者予備軍になってしまう」
「……便利だったのに。あ、そうか、この鞄から出せるようなものだけ出していればいいか」
そう僕はそこで納得した。
そして教えてくれたリフにお礼を言うと、
「このままだとモブになれないぞ」
「そんな!」
「そもそも普通の魔法じゃないと思う。どんな魔法なんだ?」
「え、えっと、この鞄の内部をい空間内に作り上げた魔法の部屋のようなものに接続して、欲しいものがある時は手を伸ばして、内部に保管する時にそれぞれに付けられている魔力的な印に手で触れて、手繰り寄せてから取り出す形です」
「それを一瞬でやっているのか?」
「はい、そうですけれど。あ、でもお姉さん達は、これでもない、あれでもないって急ぎの時は、中にあるものを取り出して捨てていたような」
やはり整理整頓は大事だと僕は思った。そこで、リフが、
「やっぱり話す先からボロが出るから、ローデルはモブにはなれないな」
「そんな!」
「ははっ、さて、少し早いがいくか」
という訳で、更なる絶望を与えたリフと共に僕は決められたクラスに向かったのだった。
おかしい、なにかおかしい。
周りの視線が冷たい。
遠巻きにする男子。
女子はまるで、ゴミクズでも見るかのように僕を見ている。
何でこんな事に。
隣りに座っているリフには皆こう、お近づきになりたいといった感じなのに。
僕が一体何をした、そう僕が思い、耐え切れなくなり、
「あの、僕が何かしたんでしょうか」
そうリフと話している男のクラスメイトに聞く。
けれど彼には無視されてしまう。
と、そこでリフが、
「彼、ローデルは僕の友人だ。出来れば答えてやってほしい」
「! あんな汚らわしい人物とリフ様は近づくべきではありません」
「汚らわしい? 彼はそんな人物ではない。どういうことか説明してもらおうか」
まるで逃さないというかのように、目の前の僕が聞いたその人物にリフが言う。
命令しているような口調なのは、暗に自身の王族としての権力を使っているからか
そしてそれに従ったらしい彼が渋々といったように、
「私も今朝聞いた噂ですが、嫌がるエルザ様を細い路地に引きずり込んで服を剥いで、裸で外を歩きたくなければこれを着て行けと、わざと小さな服を渡しして屈辱を与えたという……」
「え? 俺はエルザ様が“誘った”と聞いたぞ、そこの“鬼畜男子”」
別の彼の横にいた男子がそんな風に付け加える。
噂に尾ひれがつくどころか歴史改変まで起こっているようだった。
そしてそれを皮切りさらに酷い話が次々とでて、僕が鬼畜男子の称号を手に入れているのを知ったのだった。
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