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僕は、王都にやってきた

 少なくとも僕は、“普通”であると自覚している。

 この世界、“フレア・ルーン”のとある田舎町。

 突如現れた、タカギ・リョウスケという凄腕の魔法使いに村を救われ、その時まだ11歳になってそこそこ経った頃の僕は彼に憧れて、散々親に止められながらも、一年近く彼の弟子をやっていた。


「ローデル、お前を見ていると俺のチートもまだまだだって思うな」

「そうですか? 僕にはいくら頑張っても師匠に追いつけるどころか、遠くなっているような気がします」

「……俺としてはここまで追いついてきている時点で、ローデルが人間なのかどうか疑いを持ってしまったな」

「僕、人間じゃないんですか?」

「あー、悪い悪い、ローデルは“人間”だ。この世界の“神様”もそう言っているし」


 そう答えた師匠、リョウスケは僕の頭を撫でた。

 一緒にいた師匠狙いの仲間であるお姉さん達は、怖がらせちゃ駄目だと笑っていた。

 たった一年程度。


 その中であの師匠についていった時間は僕にとって大切なものになっていた。

 学んだ事も沢山あったし、何よりも楽しかった。

 危険な目に何度もあったけれど、時に僕は師匠の手伝いをしつつその危機を乗り越えてきた。


 そうやってずっと師匠達と一緒にいられたらと僕は思っていたが、ある日、僕は師匠に呼び出された。


「ローデル、ここ一年でお前は随分強くなった」

「ありがとうございます」

「同時に、最近気づいたのだが、俺の“常識”はこの世界では少しおかしい様だ」

「いいえ、僕から見ても結構おかしいです」

「やはりか。だが、お前も俺の影響を受けているようだ。この世界の人間として生活していくならばその感覚を正さなければならない。……俺が言うのもなんだが」


 この時僕は初めて、師匠のリョウスケが異世界から連れてこられた人間だと知った。

 それでも僕にとっての憧れの師匠であることには変わりない。

 しかもこの時僕は、一番最後にその事実を教えられたらしい。


 実は師匠の周りにいた仲間であるお姉さん達は皆、とっくにその話を知っていたのだそうだ。

 仲間外れだと怒っている僕に師匠は、一番最後まで気づかなかったのはローデルだけだったといわれ更に僕は傷ついた。

 しかも追い出そうとしているかのように感じて孤独感を味わったのだけれど、


「学校は楽しいぞ。特に友達との会話! 趣味が合うやつもいるし同じような実力者もいるだろうし、都市の学校は村とは比べ物にならないくらい同年代の人がいるぞ~」

「師匠達と一緒にいる方が楽しいです」


 そういうと師匠は困ったような顔をした。

 もともと僕には魔法の才能があったが、それ故に村では浮いていて友達はいなかった。

 だから師匠と一緒にいる時間は、確かに命の危険があったけれど居心地がよかったのだ。


 でも師匠は僕に、学園に行けという。

 だからとりあえずは弟子である僕は大人しく師匠のいう事を聞くことにした。

 呼んだらいつでも僕の力が必要なら駆けつけますと、ありがとうと師匠は言った。


 師匠の周りにいるお姉さん達も僕に、頑張って師匠のように、女の子にモテてくるんだぞ~、鈍感じゃだめだぞ~と言っていた。

 こうして僕はひとり実家に帰る、幾らかの試験勉強……けれどすでにその一年間で、師匠の周りにいたお姉さんに教わったものばかりだったので余裕でそれらはクリアできそうだった。

 他にも魔法の学校に行くには魔法の試験があるらしい。


 でも師匠に仕込まれた魔法で突破できる自信が僕にはあった。

 そして、試験日数日前、村から出た僕は王都グライユにやってきた。

 人が多い町であるけれど以前師匠に連れられて来たことがあるのでそこまで驚きはなかった。


 そして今日は試験の前日。

 これから僕は、魔法の学校である“リナブレド学園”の入学試験を受けに行くので、宿をとってから下見に行く予定だった。

 時間に遅刻して受けられないのでは困るから。


「さてと、何処の宿に泊まろうかな……」


 細い路地に入って少しでも安い宿を探そうと僕は思い、大通りから外れた灰色の石畳の道に入り込む。

 人が少なくなって、段々と大通りの喧騒が遠のいていく。

 治安もあまりよくなさそうだと思った僕は、引き返そうかと考え始めた頃。


 誰かが走ってくる音が聞こえて、突然目の前に人影が現れる。


「うわっ」

「きゃあ!」


 そこで僕はとある女の子とぶつかったのだった。


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