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含み笑いをこらえるように

 エルザが涙しながら去っていくのを僕は見送ったその後、僕は、今の会話の何が悪かったのだろうと真剣に考えていた。だが、


「どう考えても何がいけないのか、全くわからない」

「それは、エルザの事か?」

「はい、僕、認識が間違ったけれど謝りましたよね?」


 なのに、何で半泣きになってしまったのだろう。

 師匠は女の子を泣かせる男は最低だと言っていたけれど、僕は最低な人間にこの一年、でなってしまったのだろうか?

 そもそも、僕が駄目な人間だから師匠は僕の手助けなど必要ないと思って呼びもせずに、こんな学園に厄介払いに……。


「僕はそんなに駄目で最低な人間なのかな?」

「え? いや、今の話でどうしてそうなった?」

「エルザを泣かせてしまったので」

「あー……エルザはその、俺がいうのも何だかが負けず嫌いというか気位が高いというか、良い薬になったと思う」


 とリフが言って慰めてきたのだが僕としては、


「エルザは優しくて親切だと思いますが……」

「……くわしく」

「いえ、ここの都市に来た時に、あんな事になってしまいましたが都市の案内や、ここの学園への道を教えてくれたんです」

「あの、エルザが? いや、気まぐれという線もあるけれど、確かに昔はもう少し穏やかで優しい性格だったが、今は……」


 リフがブツブツ言っているが、僕としては普段のエルザが気になる。

 なんだかんだ言って、“いい人”の気がするのだ。

 お姉さん達の中でも昔はとてもプライドが高かったらしいが、僕が一緒になった時はずいぶん丸くなったっと言われた人がいて、その人にもエルザは似ている。


 それに何となくエルザは、師匠にも似ている気がするのだ。

 挑発してから強烈な力でぶちのめそうとする所が。

 だから僕は気になるのかもしれない。


 なので僕はエルザの性格についてリフに聞くと、


「気位が高い、我儘、性格がキツイ、魔法の腕も良くて勉強もできて美人。そして今は血が繋がっていないと言っても、この国で一番の高貴な“姫”出しその前も貴族だし。負けず嫌いもあって重圧があるからさらにそれに磨きがかかって今の状態というわけだ」

「……でも僕、エルザは本当は親切で優しい女の子の気がします」


 僕の知っているお姉さんも師匠も、本質的に優しい人だったから。

 それを告げるとリフが、珍しくはにかんだように笑って、


「やっぱりローデルは大物だ。義妹をよろしく」

「え? あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」


 そう答えた僕だけれど、何で僕に頼むんだろうと疑問が浮かんで、次にこのエルザと関わるとモブへの道がまた一つ閉ざされるのでは? と気づいた。

 でも、僕に出来る事があるならしたいと思うような子な気がする。

 美人だし。


 そういったことを思いながら寮に向かっているとそこで、僕は知っているけれどあまり関わり合いたくない女性の声で、背後から声をかけられた。


「やあ主席弟子くん、久しぶりだね。ちょっといいかな?」

「いえ、僕はこれから寮に教科書を取りに行く予定でして」

「話は数分で終わる。問題ないな」


 含み笑いをこらえるようにそう告げる声の主を僕は、そこでようやく、嫌々ながら振り返ったのだった。



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