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勉強を口実にお断りしよう

 魔力が表示されないという、“普通”とは違う存在だと明確に示された僕は、別の方法でモブになることにした。

 そう、普通っぽく振る舞う事によって、平均的で空気のような人間になれるはずだ。


「よし、それで行こう」

「何かを決めたみたいだが、でも魔力が高過ぎるとあんな制限が付けられるんだな。一度でいいからそういうのを付けられてみたいな」

「いえ、自分の能力が数値で表せないなどと普通とはかけ離れた……あれ?」


 そこで僕は奇妙なことに気づいた。

 つまり僕は、“ステータスオープン”をした時に僕の魔力数値が出せたはずなのだ。

 それがこの都市の装置で測定できないというのは……。


 僕は、気づかなかった事にした。

 この“ステータスオープン”は師匠がホイホイ、敵が現れる度に使って攻撃していたのでそういうものだと思っていたが、そういえば師匠以外に使っている人を見たことがない。

 僕だってここまでの魔法を作り上げるのに凄く工夫し改良して、お姉さんにも驚かれてローデル君は努力型の秀才だねと頭を撫ぜられて……。


「うん、“ステータスオープン”は使わないようにしよう」

「ん? “ステータスオープン”? そういえば、ローデルの師匠が使う気が狂ったような高度な“分析魔法”だったか」

「ど、どうしてご存知なのですか?」

「いや、どんな人物か面白半分で調べたらそう書いてあったぞ。だが、今の話だと、ローデルも使えるようだな」

「ぼ、僕のは不完全で、魔力と体力しか……しかも失敗すると服が破けるんです」

「いー、女の子に使いたい技だな。折角だから俺に使ってみないか?」

「え?」

「そのルーデルの魔法と測定装置の魔法の数字がどの程度違うか見れるぞ」


 それはとても魅力的な案だった。

 そもそも僕は、師匠基準の数値表示しかしていなかったから。

 なのでもう一度服が破れていいかを聞いてから、


「そもそも男が裸を見られてもなんとも無いぞ」


 と言われたので、やってみた。


「……“ステータスオープン”」


 同時に体力魔力が表示される。

 どちらも、大体、お姉さん達と同じくらいの強さだった。

 そしてそれを見たリフが、


「結構正確だな。俺の魔力体力と同じ数字だ。……おや?」


 そこでピリピリという布の裂ける音がして、パンっと服が布切れに変わり落ちる。

 ちなみにここは学園内。

 休みと言っても、着ている生徒たちもいたようで……黄色い女の子の歓声が上がった。


 やはり、イケメンは敵だと僕は思った。







 リフは裸でいたものの、


「ふう、仕方がない、制服を着るか」


 との事で今日もらったばかりの制服に着替えていた。

 それから先程の僕の“ステータスオープン”は、実際に魔力測定したものと一致していたらしい。

 リフはこれからもよろしくな! と言っていたけれど、別れてから寮に荷物を持って行く時に僕は気づいた。


「ひょっとして、冒険するのに都合のいい力だと認識された?」


 確かに相手の能力が分かるのは便利だ。

 それを見て状況も把握しやすくなる。

 でもだからといって気軽に冒険に行ってしまっていいのか、そもそも。


「僕、途中で編入したから勉強を頑張らないとついていけないんじゃないかな? お姉さん達に勉強は教わったけれど、それだと足りないよね」


 よし、勉強を口実にお断りしよう、そう僕は決めたのだった。

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