試験終了→合格
そんな話をしながらリファイン……名前が長いからリフと呼び捨てでいいと言われてそう呼ぶことにした。
よくよく考えれば、今回の件も含めてあの師匠とお姉さん達と一緒にいたり、村ではボッチ……だったのもあって僕は常識が欠如しているのかもしれない。
これまでこれが普通だと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
それにはやはりまずは友人から一般常識を学ぶのが先決だろう。
但しその友人が仮面を普段かぶっている王子様らしいのだが……いや、頑張って僕はここで他の普通の友人を作らなければならない。
「同化しなければ……一般社会のその他大勢のモブに僕はなるんだ」
「え? 無理じゃないのか?」
「……挑戦すればきっと僕でも、可能だと思うんです」
「ここに入学する時点で“普通”ではないな。魔法使いとしても、上位1%未満だぞ」
そう言われて僕は、すでに“普通”ではなくなっているのに気づいた。
だがこの場所で平均的な存在になれば、目立つことなく空気のような存在になれるはず!
僕は新たな目標、“この学園でモブになる!”を掲げた。
そうしていると、建てられた看板どおりに進んでいくと次の試験会場にたどり着く。
試験官らしき人達僕を見てぎょっとしたように見て慌てて何かを探しに行った。
「リフ、どうして僕はこんなに目立っているんだろう」
「魔力測定装置が壊されたからじゃないか? 今回は魔法適性もあって杖などの魔道具を見ることになっているが……使うときに魔力を通すだろう?」
「あ、僕、杖は使ったことが無いです」
「……今までどうやって魔法を使っていたんだ?」
「えーと、呪文やら魔法陣やらが中心で、お姉さんが『杖なんてものは邪道』と言っていたので。それに師匠も、『杖は殴るための棍棒だ!』と言っていたので使ったことが無くて……」
そういえば僕が旅の途中で出会った魔法使いは全員杖を持っていた。
と、リフがそこで、
「そういえば俺の“妹”も憧れの女性の影響を受けて妹も杖を使わないんだよな。魔道具は使うのに。杖の方が魔力効率が基本的に良いはずなんだけれどな」
「妹がいるのですか」
「ああ、最近、後から妹ができた。親の再婚の関係で」
「後から妹ができるなんて、羨ましい。勝ち組ではないですか」
「うーん、どうだろうな。恋愛感情も何も無いしな……。そもそも同い年だが俺のほうが一ヶ月早く生まれていたからお兄ちゃんなだけだし、ここの学園にはもっと前から通っているから俺の方が遅れているんだよな」
「? そういえばどうして途中入学を?」
「いや、まあ……色々あって」
どうやら王子様の関係で色々あるようだ。
けれどこの学校で同い年の妹となると同級生の女の子ということになる。
やはりそう聞いてしまうと僕も気になるので、
「妹さんはどんな方なんですか?」
「美人では有るな。でもちょっと難があるか」
「難ですか」
「そうなんだ。でもそういえば昨日は珍しく、ギャフンと言わされてきたようなんだよな。ストレス解消とかで、夕食、今日の朝食も食べずに必死で庭をランニングしていたからな」
どうやら何かがあったらしい。
僕にはよく分からず、リフも詳しく知らないそうだ。
そこで試験官がやってきてリフは普通に杖の試験を。
そして僕は触ると華が咲く杖。
地面に突き刺して触れると木が一本できて、美味しそうな果物が実る。
後で聞いた話ではジャムにするととても美味しいらしいのだが、
「ふむ、土属性が強いようだな。合格」
「え? あの、他の属性の検査や相性は」
「うむ、土属性が強いようだな。合格」
試験官は微笑みそれ以上何も言わなかった。
言外に他の杖を壊されたまるかと言われている気がしたので、僕は沈黙した。
そして合格と言われた僕はリフも合格と言われたのでそのまま試験会場をいくつも周り、最後に学力試験を受けて、その日の夕方。
「“ローデル・アーカム”“リファイン・マックス”どっちも合格だね。しかもクラスも同じ?」
「そうみたいだな」
「では明日からよろしく」
貼りだされた名前を見て僕は、リフと握手を交わしたのだった。




