3/3
第3番
こがね色の朝日がおぼろにひかる。
遠くにまばゆく輝くもの。風の吹かない世界。
ごく淡いきんもくせいの香りは粉のように溶ける。
金色の砂。すくいあげてさらさらとこぼす。
歩みがかすかに軽い音をたてる。足あとは残らない。
埋もれている柱と骨。白く乾いたはやすぎたものたち。はしからゆっくりと砂になる。
それらのひとつに頬をすり寄せる。いのるようにひざを折る。根元に寝そべる。心臓は下にある。
かつてさそりと呼ばれていたもの。とがった尾の先がどこにもない国を指ししめす。
木星の山羊が衛星をひとつひとつめぐってやって来るように、ゆっくりと音もなくわたしの上に砂がつもる。
かなたの砂を踏んで故郷をさがす。そんなじぶんの背中を見ている。遠く、ちいさくなっていく。まるで不時着した鳴きやもり。
見ている背中が砂ひとつぶより小さくなる。それでもきっと、横たわるわたしがそれを見失うことは、決してできない。