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第2番
夜の海べ。どこまでも、どこまでも、波打ちぎわを。
いのちをもたないのに、いきもののように動くもの。ゆっくりと息をするように寄せては返す。
月あかりが指のように波をしろく奏でる。
あのむこうに故郷があるのかもしれない。それとも、海の底。
わたしは流線型のなめらかな存在。そよぐ水が顔をなでる。
すべてのものが眠っている。さかな、さんご、えい、くらげ。ここは永遠の夜。
肌にふれる波はつめたくてやわらかい。銀のちいさなあぶくが月をめざす。
はてしないところからだれかが呼んでいる。
ふかくへ。
見渡すかぎりの青い暗やみ。
ちからを抜けばみちびいてくれる。見ようとせず、聞こうとせず。充ちているものを受けいれるだけ。
すみずみに海がゆきわたる。海のすみずみがわたしになる。
細胞ひとつぶんの緻密なことがくっきりとわかる。
星ひとつを包むおおらかなゆらぎがじぶんのものになる。
ゆられる。ゆられる。
いっぱいに広がって、そのときを待っている。