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閑話 天使達との出会い(義兄視点)

シスコン男に注意です。ちょっと短いです。

「「日本の高校へ進学?」」

「Yes♪」


綺麗にハモった義妹達に蕩ける様な微笑を浮かべながら義兄は言った。


“僕”が日本支社に“3年も”行かなければならないんだから、“僕の天使達”を連れて行くのは当たり前だろう?


「幸いな事にハルちゃんとチーちゃんの進学に会わせて3月に向こうへ行く事になったから」

「兄さん、試験は?」

「勿論受けるさ。1週間後にペーパーテストを受けて貰う手筈になっているよ。何でも日本では“有名私立女子高”と呼ばれている高校らしい」

「女子高なの?別に男女共学でも「絶対却下!(ガバッ)」……って!兄さん?」


突然抱きしめてきた義兄に戸惑う義妹達。

彼は両腕に抱きかかえた彼女達のほほにスリスリしながらシスコンモード全開で語り始めた。


「こんなに可愛い可愛い僕の天使達がいくら学校と言えども日本のオトコ共と長い時間を共にするなんて……喩え神が許しても僕が許さないよ。

それに、“学校の治安維持の為”にも“可愛い羊”を“狼がいる”群れの中に放し飼いにする訳にはいかないだろう?

勿論、通学だって僕の秘書が車で送り迎えする。電車なんて危ない乗り物に乗せたら僕の大切な大切なハルちゃんとチーちゃんが穢されてしまうからね。

ソコは専用の学生寮と送迎バスもあるんだ。だから車での送り迎えはOKさ。中には交通機関を使用している生徒もいるらしいが、少数派だそうだよ。

教職員は、校長も含め全員女性だが……別に問題無いよね?

校外学習も学校専用のバスに乗るから、万が…いや…億が一にも他のオトコの目に触れる確率は低いと言えるよ。

偏差値がちょっと高めらしいけど……大丈夫。ハルちゃんとチーちゃんの学力なら余裕だから。

そうそう。挨拶は全て“ごきげんよう”と言うそうだ。なんなら今から練習してみようか?

実は先日その『サン・ミッッシェル(聖天使)学園』の理事長達と会ったんだけど、いち早くスクールユニフォームを貰って来たんだよ。

それがさ、まるでキミ達の為に作られたようなベリーキュートなデザインなんだ。

ソレを着たキミ達を見る事が出来るなんて。僕と父さんは神から選ばれたオトコなんだと実感したよ。うん。

ああ。確かハルちゃんとチーちゃんとの記念すべき出会いの時もここと同じデザインのワンピースを着ていたなぁ………」


ペラペラと捲し立てながら、自他共に認めるブラコン義妹溺愛主義の義兄は彼女達と初めて出会った時の事を思い出していた。


10年前、彼がまだハイスクールの生徒だった時の事、初めて彼女達にLAの空港で会った時、一瞬ここはファンタジーの世界では無いか?……と本気で思った。


フレデリック・ラングストン16歳。

アッシュブロンドの髪に碧眼を持つ身長6フィート弱のイケメン。

そして、シニアハイの最小学年にして生徒会長を務め、アメフト部でも期待のルーキーと噂される文武両道の御曹司。

そんな彼が16年間生きてきた中で初めて体験した出来事だったのだ。



***********



早くに母親を病で亡くした彼は、父親の再婚話に一も二もなく頷いた。


……大企業の社長である父親の人を見る目を信じていたからである。


「フレッド。まもなく僕達の元に可愛い天使達が来るんだよ」

「何、天使達って?」

「リョーは本当に素晴らしい女性だ。美しくて、仕事も出来て、しかもあんなに素晴らしい天使ちゃん達まで女手一つで育てて……ああ。マディ!天国のキミが僕と彼女を引き合わせてくれたのか……!!」


妻を失って以来ずっと男やもめだった父ジョージ。

仕事の関係者や親戚共が再婚相手を探してきたが、ニッコリ笑ってそれらを全て突っぱねてきた。

そんな彼が日本支社への出張から帰って来た日、「ただいま」も言わず開口一番に言ったのが先ほどの台詞である。


天使…ねぇ。黒髪黒目の天使って聞いたこと無いんだけど……まぁ、リョーはエキゾチックな和風美人だし?その娘なら…ね。


など。期待半分で迎えに行ったところ………


「「はじめまちて……おにいちゃま」」


英会話が満足に出来ないせいか舌っ足らずで挨拶してきた双子の少女達。


母親譲りのまっすぐな黒髪に黒目の大きい瞳。

こじんまりした顔に収まる小さなパーツ。

小さな手と自分の膝くらいしか無い身長。おそらく足だって彼の手の中に納まるサイズだろう。

色違いのリボンとワンピース以外はまったく同じで、まるで対の人形のようだった義妹達。


何コレ?

日本人ってこんなにちまいの?

何その喋り方?

ああ。思いっきり撫でまわしたいっ!顔中にキスしたいっ!

黒髪黒目の天使?アリでしょ?だって今僕の目の前にいるし?


―――――――――彼には義妹達の背中や頭上に“幻の翼や輪っか”が見えていたに違いない。


「…抱っこしても良い?」

「「???」」


ひょい


「「っふぇっ…」」

「んんん……軽いなぁ。本当に天使みたいだぁ」

「「てんし?」」

「LAにようこそ。僕の天使達♪」


16歳の少年が6歳の少女達にソレをしたら、日本ではカクジツに危ない人認定である。

だが、ここは自由の国アメリカ。

従って、彼が可愛い妹達を片腕に一人ずつ抱きかかえ、ぷにっぷにのほっぺにチュッチュとキスしまくったところで、微笑ましい家族の図としか周囲の人間には見られないのである。


「自己紹介が遅れちゃったけど、今日からキミ達のお兄さんになるフレデリックだよ。よろしくね」

「「……あい。おにいちゃま」」


やや遅れて空港に駆け付けた父ジョージは、息子が両腕に一人ずつ抱っこしている義娘達を見て表情を険しくした。


「……フレディ。狡いぞ」

「早い者勝ちだよ。父さん」


両手…ならぬ両腕に花状態の息子をジト目で睨む父。

そんな親子を双子の母親は微笑ましく見守るのだった。



「………ディ」


――――あの時は本当に可愛かったなぁ。当時付き合っていた彼女達も皆小さくて可愛い系だったけど、この娘達の前では色あせたもんなぁ…


「………フレディってば!」


――――“僕の天使達”にちょっかいを出そうとする餓鬼や、興味を持った野郎共を駆除するのにどれだけ苦労したか……


完全にトランス状態の義兄。呼びかけても呼びかけても恍惚とした表情を浮かべているだけである。

そんな彼の対処方法を熟知している義妹達はお互いの顔を見合わせるとアイコンタクトをとって頷き合った。


「「(せーのっ)おにいちゃま!!」

「何だい?僕の天使達?」


舌っ足らずな英語で話しかけると、まるで条件反射の様に現実世界にご帰還あそばされた妄想の国の王子様は、幾多の女性を虜にしてきた微笑を浮かべられたのだった。


ご愛読いただきありがとうございましたm(_ _)m

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