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天使

「オーケイ、怒らないからおじさんにもう一回説明してみようか?」

「さっき殴ったじゃないですか!! 第一、僕にだって何がなんだか……!!」

「いいからさっさと説明しろ!! いっぺんにではない。丁寧にだ!!」

 思わず怒号が飛ぶ、俺はこんなキャラじゃないが仕方がない、しかたがないのだ。

 俺の怒号に驚いた通行人が数人こちらを眺める。無理もない、道のど真ん中で喧嘩しているのだ。いい大人がこれでは恥ずかしい――――はずなのだが、どうやら俺は今大人ではないらしい。推定年齢12歳、中学生か小学生といったところだ。

「じゃ、じゃあ。もう一回説明しますよ」

 俺と半べその”少女”が目をぐしぐしと擦りながら俺を見る。

「先ほども言いましたけど僕は新米天使でして。天使というのは自らが持つ不思議な力、我々は「天使の力」と呼ぶのですが、人の役に立たねば堕天してしまうのです。……が。僕はすっかりそのことを忘れていまして、焦っていたわけであります。」

「まぁ。こうして子供の姿になったわけだ。天使云々の件は信じよう。次。」

 手のひらを振って話の次を促すと少女はコクリと頷いた。

「で、人の役にたつと言ってもいろいろ制約がありまして。とりあえず一番重要なのが天使は契約者がいなければ天使の力を行使できないんです。まぁ、相性ってやつですね。」

「その天使の力とやらが今回の原因か?」

「そうです、はい。」

 少女は俺のチョップに警戒しながら話しているのか、にへっぴり腰でウルトラマンのようなポーズというはたから見ればアホの子全開の格好で言葉を続ける。

「ひとまずあなたの願いを叶えようと思って勝手に仮契約をした訳であります」

「……俺の願いは子供になることなのか?」

「いえ、あなたの願いは”あの時”をやり直すことです。つまり現在は貴方の元いた時代より17年前の2007年になります。」

 つまり、過去に戻って俺は”あの時”をやり直したかったってことか。……まぁ、人の気持ちなんて相反するものがあったっておかしくはないけど、天使を呼び寄せるほどに俺は後悔していたのか。

「よく出来ました。……と、言いたいところだが。」

「ところだが?」

 落ち着いたのか少女の瞳に涙はない。可愛らしく小首をかしげふんわりと柔らかそうな髪が僅かに揺れた。

 都合があるのがわかった。

 悪意がないのも分かった。

 エゴっぽくあるけれど一応親切で行ったことなのも分かった。

 けれど、けれどだ。俺にはひとつどうしても言わなけりゃならないことがある。

「な・ん・で、俺は女の子になってるんだっ!!!」

 俺はなぜ、幼女に転生したのか。ということだ。


 俺が大声で突っ込んでしまったために通行人から変な目で見られた俺達は、ひとまず別の場所へ移動した。自称天使が状況が飲み込め(たく)ない俺を引っ張って連れて行ったのはとあるマンションの一室。なかなか豪華な造りである。

 部屋につき、新たな説明を促すとそれはそれは頭の痛くなるものだった。

「―――と、いうわけでありますが。ご質問は?」

「ああ、そうだな。」

 人通り説明を終えた少女に握りこぶしを見せつけにっこり笑う。

「殴ってもいい?」

「ご、ご冗談をっ!!」

 再びも身構える少女を前に、俺はため息をつく。ああ、本当に頭がいたい。

「えーと、もう一度説明しましょうか?」

「……お願いしてもいいか?」

「……あ、はい。そりゃ、もう。」

 どんだけ怯えてんだコイツは。

「えー、では。ゴホン。説明させていただきます。」

 正直言って、さっきの説明である程度の状況は整理できた。箇条書きに表すならば以下のとおりである。

・今俺がいるのは2007年。俺が小学6年生の年である。

・俺は自分の体ではなく少女の体に入っている。

・この少女の体は天使が創りだしたもので本来この世に存在しないはずの人間である。

・つまり、俺が過去に戻ったことで僅かに歴史が改変された。

「―――で、ありまして。見た目は人間の少女ですが天使が創りだした存在であるために人間とは若干事ある身体のつくりをしており……」

「あー、そのへんはいいや。それより、もっと後のことを説明してくれ。」

「もっと後?」

「俺の願いを叶えるための具体的な方法のところ。」

「ああ、なるほど。」

 天使は手のひらをポン、と叩き自慢気に人差し指をたてた。

 ふむ、少女でなければぶん殴ってるところだ。

「はい、あなたにはこれから過去の貴方と付き合うことを目的に女の子として過ごしてもらいます!」

「ふざけるな!! 何だそれは!!」

「えー、だって。やり直したいんですよね?」

「うっ、それは。そうかもしれんが、俺が女の子をやる必要があるのか? 自分で自分に惚れるなんて、気持ち悪いじゃないか」

 妙に落ち着いた様子の天使が逆に怖い。どうやら、人間とは多少考え方が違うらしい。

「大丈夫ですよ。貴方はあくまで代理です。」

「……代理?」

「貴方は今天使の力で創りだされた存在。人間よりも多くの可能性を秘めた真っ白な存在なんです。」

 天使は指をくるくる回しながらさも楽しそうに続ける。

「貴方は「貴方の理想とする少女」を演じてください。初めの内は演技で構いません。」

「初めの内って……」

「演技でも何でも、そういう風に演じていればその身体に宿る真っ白な魂に色がつき、何れ本当の性格になるのです。つまり、貴方にはその少女の人格が形成されるまでその少女として振る舞ってもらいます。」

「振る舞うたって……三十路手前のおっさんがか?」

「三十路手前のおっさんが、です。」

「ええ、面倒くせぇ」

 面倒、というのは少女のふりをする事ではない。なんやかんや、全てが面倒なのだ。

「つまり」

 ああ、俺のローテーションには気づいてくれないのね。

「貴方はこれから7ヶ月の間「代理少女」として過ごしてもらいます。」


サブタイトルは割と適当なんです

いいのが思いつかないので素敵なのを思いついたらアドバイスしてくださると嬉しいです

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