ノルンの町
今現在、俺らはノルンとかいう町に帰るダイルの商隊の馬車に乗せてもらい町を目指している。
馬車は2台あり俺と美雪はダイルが乗る馬車に乗り、もう1台に荷物や護衛のロイスたちが乗っている。
今のうちにこれから行く町の情報収集をしていた方がいいかもしれないな。
「ダイルさん、ノルンの町っていうのは、どんな町なんですか?」
「ノルンの町は、我が国ライルベン王国の東部では最も大きな町ですよ。まあ東部自体が辺境なので他に町があまりないのですが」
「そうなんですか」
「ええ、私たちは王都であるキュロスに商売にいきそこから帰ってくる途中なのです」
どうやら今向かっているノルンはライルベン王国とかいう国の辺境にあるらしい。
「ところで俺たちは冒険者になりたいと思っているのですが、登録の際に必要な物とかはあるのでしょうか?」
「ギルドに登録する際に登録料が銀貨2枚かかりますよ」
やっぱり登録料がかかるのか。
「ああ、それと身分を証明するもの、まあギルドのカードでもいいのですが、それがない場合は町に入るのに入城料もかかりますな」
まずいな、財布は持っているがこの世界の金は持っているわけがない。いくら二分と一朱もっているとはいえこの世界ではつかえないからな。
ダイルさんに貸してもらうしかないか。
「ダイルさん、その登録料についてなのですが」
「ああ、お二人は外国の方でしたな。それでは我が国の通貨を持っていないのですな」
「ええ。なので、できたら登録料を貸していただきたいのですが」
「そんなことですか。貸すなんてとんでもない。シンイチさまは命の恩人です。お二人の登録料ぐらい私が払いましょう」
「ありがとうございます」
登録料はなんとかなりそうだ。
まあ今後どうするかはそのノルンとかいう町に着いてから決めればいいか。
しかし、冒険者になれるとはなあ。やっぱり異世界にいったら冒険者になるしかないだろ。
そんなことを考えているとダイルさんが俺たちに話しかけてくる。
「ところでシンイチさまとミユキさまはどのような関係なのですかな?」
「信一さまは、私の父の弟子で一緒に剣の稽古などをしてきました」
ダイルさんからの問いに美雪はなぜか誇らしげに答える。
「ほお、それではミユキさまもお強いのですかな?」
「いえ、私はそれほどでは。今では信一さまに敵うお人は江戸にもわずかしかいないほどお強いですから」
いやいや、頼むからそこまで俺を持ち上げないでくれよ。
確かに、一度去年行われた剣術大会では準優勝したよ。江戸の剣術界ではそこそこ名前も上がってきたとは思っている。でもさすがに、江戸で1、2を争う剣術家だとまではうぬぼれていないよ。
はあ。一度美雪には言って聞かせないと駄目だな。
「いやあ、それほどお強いのですか。どうりで盗賊たちを簡単に屠ることができたのですね。しかしあれほどの腕をお持ちなら、冒険者としてもやっていけるでしょうな」
そんな話をしながら馬車は町を目指して進んでいく。
しばらくすると城壁に囲まれた町が見えてきた。規模は結構大きいようだ。
城門は開いており、そこに5、6人ほどの兵士がおり、入城する人を調べているようだ。
「シンイチさま、ミユキさまノルンの町が見えてきましたよ」
やっと、異世界で最初の町に到着だ。さしずめノルンの町は俺たちにとっては「冒険の始まりの町」ってやつだな。
あとは、何の問題もなく入城できることを祈るだけだ。
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