護衛と商人
盗賊たちを全員捕えた後、護衛の代表と思われる男がやってきた。
「すまない、助かった。あのままでは全滅してしまっていただろう」
「いや、気にするな。困ったときはお互い様だ」
この男もエルフのようだな。髪の色は銀色のようだ。耳は長く先がとがっている。
顔はイケメンといっていいな。
「ありがたい、俺はロイスだ。一応この商隊の護衛の責任者だ」
「俺は三好信一だ。信一の方が名前だな」
「シンイチか。しかし珍しい恰好をしているな。髪も頭の上で束ねているのか」
「ああ、俺のいた国ではみんなこうしているんだ」
まあ、この世界には髷を結ってるような奴なんていないんだろうな。
俺は、江戸時代の一般的な髷であり月代とよばれる頭のてっぺんの毛を剃った銀杏髷ではなく、頭のてっぺんの毛は残っている。いわゆる浪人髷というやつだ。
「ほう。ここら辺の国ではないな。髪をそのように束ねるなど聞いたことがない。なんという国なんだ?」
「日本とか日ノ本とか言われているが。まあ国の事はいいだろ。とりあえず大分遠い場所にある」
まあ遠いというより異世界なんだがな。
「そうか、ところで俺らが護衛していた商隊の代表がお前に礼を言いたいそうだ。連れてくるからちょっとまっててくれないか」
「わかった。ああ、実は俺にも連れがいるんだ。そいつも一緒でいいか」
「構わない。じゃあ連れってやつを呼んでおいてくれ」
「了解した」
俺はそういうと美雪を連れてくるために、商隊から離れて美雪のまつ場所まで戻る。
「信一さま、大丈夫でしたか」
「ああ、なんの問題もない。大丈夫だ」
「よかったです。もし信一さまに何かあったらと」
「はは、あんな奴らにやられるほどお前の親父さんに軟な鍛え方はされてないよ。それより彼らがお礼を言いたいそうだ。それになにか情報も手に入れることができるかもしれないしな。美雪も来てくれ」
「分かりました。しかし信一さま、先ほどの人たちの格好を見たところここは南蛮なのではありませんか」
「うーん。まあ南蛮と言えば南蛮何だろうが」
南蛮どころか異世界だ。世界が違う。
うーん。異世界だということ教えなきゃいけないだろうな。
「美雪、とりあえず後で詳しい説明するから、奴らとの会話は俺に任せてくれ」
「はい、お願いします」
俺らはロイスと別れた場所に戻る。
そこにはロイスの他に1人の体格の良い男がいた。うんこいつは普通に人間のようだな。
「おお、あなたが我々を救ってくださったシンイチ様ですか。ありがとうございます。私はライルベンのノルンで商人をしているダイルと申します」
「いえいえ気にしないでください」
「そのようなことをおっしゃらずにぜひ何かお礼をさせてください。ところでシンイチ様とこちらのお嬢さまは冒険者なのですかな?」
「いや、俺たちは冒険者ではありません。この姿をみれば分かるかもしれませんが遠くの国からやってきたもので」
「なるほど。見たことのない恰好をしているとは思っていましたが、外国のかたでしたか」
「ええ。なので我々はこのあたりの地理などをよく知らないんですよ。それにできれば冒険者にもなりたいので町に向かうのであれば一緒に連れて行ってくれませんか?」
「おお。それくらいならお安いご用です。ちょうど私たちもノルンの町に帰るところだったのですよ。ここからならあと5時間ほどで町に着きます。そこで私は商売をしています。お礼もしたいですし、ノルンなら冒険者ギルドもあり登録もできます。ぜひ一緒にいらしてください」
「ありがとうございます」
これでなんとか町に入ることはできそうだな。
とりあえず異世界で町にたどり着けずに餓死という末路は回避できたようだ。
うん、せっかくまあ異世界に来たんだ。これまた定番の冒険者を目指すとするか。
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