表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

異世界到着

 いやあ、まじか! まさか自分が流行りの異世界転移に巻き込まれてしまうとはなあ。

 突然自分の足元にに召喚紋のようなものが浮かび上がっと思ったら俺、三好信一は次の瞬間にはだだっ広い何もない草原に立っていた。

 困ったことになったなあ。これからどうしたものか。てかこんな時に異世界とか勘弁してくれよ。やっと今の生活にも慣れたっていうのに。


 最近の小説では異世界召喚を望んでいたり、召喚されて喜んだりしていたが、俺は今は全く望んでいないよ。いや俺も男だし異世界での冒険とかに対するあこがれはあった。だから4年ほど前までは自分も異世界に行って冒険したい、ハーレム造って俺TUEEEEしたいとか思ってたよ。でも今はそんなことより平穏に暮らしたいし守りたいものもできた。だから異世界になんて行きたいとはもはや思えなかった。

 でも別に、異世界なんて非現実的なものは存在しないなんて考えてるわけではない。むしろ、非現実的な出来事にあってしまったから、異世界だって実際に存在するんではないかなんて思っていた。なんせタイムスリップなんて非現実な出来事を俺はすでに経験しているんだから。


 そう。俺は4年前、突然平成の現代日本から300年ほど前江戸時代の日本にタイムスリップしてしまったのだ。

 まあ、そんな体験をしているわけだから今回の異世界転移という事態に戸惑っているわけだが、なんとかなるだろうという気持ちがある。なんせ前回はタイムスリップできて浮かれていたはいいが、今にして思えば師匠に拾われなければ飢え死にしていただろう。師匠達には世話になりっぱなしだったからな。まだ恩を返せていない。娘を頼むって言われたからなあ。なんとしても師匠との約束は果たさなくては。



「信一さま、ここはいったいどこなのでしょうか」


 ひとりもの思いにふけっていた俺に一緒に転移させられたと思われる少女、師匠の娘で俺にとっては妹のような守るべき存在であり何より最愛の人、美雪が不安げに話しかけてきた。


「ああ、よくわからないが、江戸の府内でないことは確かだな」


 俺は美雪を不安にさせないように軽い口調で言葉を返す。

 なんとしても美雪は俺が守らなければいけないからな。タイムスリップした時の俺ではない。タイムスリップ後の4年間で師匠に滅茶苦茶しごかれたからなあ。これでも剣の腕に関しては自身がある。

 まあ、最初の頃の剣の腕はボロクソだったが。これでも野球部で結構きつい練習をしていたし、運動神経をある方だと自負していたが全く歯が立たなかったからなあ。ましてや2歳下の女の子の美雪に負けたのは結構ショックだった。後々知ったところ、師匠も美雪を剣の腕はものすごく高く、あの熾烈な稽古に四半刻も堪えた俺は結構すごかったらしい。その結果、伸びしろを見込まれて道場に住ませてもらい毎日地獄の稽古につき合わされた。

 1年ほどで美雪には負けなくなったし、2年で師匠とも互角に戦えるようになった。

 この腕があれば、まだこの世界について知らないが美雪を守りながら生きて行けるのではないかと思う。


「とりあえず、俺の側から離れるなよ。ここがどこかわからないしな」

「わかりました」


 とりあえず、美雪に警戒するように伝えておく。今の美雪の格好は道着姿で手には木刀を持っている。

 木刀でもあたり所がわるければ死ぬことだってある。相手が人間だったら美雪の腕なら余裕で対処できるだろうが、ここは異世界である。もしモンスターや完全武装した盗賊なんかでは木刀では戦えないかもしれない。

 運よく俺は着流し姿とはいえ、まだ稽古が始まっていなかったので、師匠から譲られた刀と脇差を腰にさしている。

 もともと美雪を危険な目に合わせるつもりはないが武器(本物の武士にとっては魂だろうが)をもつ俺が相手しなければな。


「とりあえずここが何処かもわからないからな、人がいそうな所に行ってみよう」

「わかりました。でもどちらに?」

「まあ気の向くままにだ。俺もどっちに行くべきか分からん。町が村がありそうな所を探そう」


 俺はそういうと歩き始める。

 美雪も俺の後ろをついてくる。改めて思うがやっぱ武家の娘って男の横に並んで歩いたりはしないんだな。

 そんなことを思ってる俺に美雪が困った表情で再び話しかける。


「信一さま、私たちは通行手形を持っておりません。お役人様に咎められてしまうのではないでしょうか」


 うん。当然だけど彼女はまだここが異世界で日本じゃないとは微塵も思っていないんだね。

 はたして江戸時代の人間は異世界転移という不思議現象を受け止めることができるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ