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からて、がぁる(空手美少女)  作者: 鬼刀ヤオ
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《ぷろろーぐ》 間津離ひな、からてがぁるはこうやって

 




「ずっと好きでした。おれと、おれとつきあってください!」






 授業終わりの晴れた放課後。


 放課後というのに、まだ夕日というほど空はオレンジ色ではなく、

 春の半ばごろの心地良い風がすぅっと通るそんな放課後だった。


 それを聞いていた周りの大勢のクラスメイト、同級生達は内心皆思ったことだろう




 (またか)




 だがそれを一番思っているのは他でもない私なのだ


 考える間もなく私は





「ごめんなさい」






 の一言で終わった。


 相手の男の子は、がっくり肩を落としている。


 でも仕方ない。


 だってよく知らないし。


 別にあなたの事嫌いじゃないけど

 好きになれそうもないから。


 私は今、恋愛よりも夢中なことがあるから。







 ~からて、がぁる(空手美少女)~







 間津離ひなはこの宣明中学3年Cクラスの女子の一人である。

 幼いころ体が弱くて病気ばかりしていたが、小学2年生の時、

 両親のすすめで

 健康になるために家から近くの町道場で


 ”空手”


 を習い始めた。


 両親は少しでも体が丈夫になってくれたらとの思いで始めさせただけなので、ひなが空手をやめたいと言えばすぐやめさせるつもりだった。


 その道場では師範(空手を教える先生)、が若くて綺麗な女の先生でとても優しくひなに空手を教えてくれた。


 ひなはちょっとずつではあるが、がんばり、身体も丈夫になり、

 体調もあまり崩さなくなった。


 そんな時、これまでの努力が実ってか、ひなは白帯から黄色帯の

 昇級試験を受けてみないか、と女先生に言われた。

 ひなは受けてみたいらしく


「受けたい。受けてみたい。私がんばる!」と答えた。


 両親もひなが初めて自分から何かをしたいといったので喜んで試験を受けさせてくれた。



 昇級試験当日、緊張はしたが無事審査は終わり、ひなは手ごたえを感じていた。

 初めての試験、初めての緊張を味わい、ひなは充実感と疲れで胸いっぱいだった


 自分は病弱で運動も苦手だったためこんな気持ちは味わうことは無いと思っていたが

 味わえた。

 今までの努力の成果がでたような、そんな嬉しさと疲れでいっぱいだった。



 自分の試験が終わったのでひなは両親のもとへ戻り、帰る準備をしていると

 女先生があいさつに来てくれた。

 どうも話を聞くと、先生はすでに段持ちではあったが、

 これから先生も昇段試験(さらに上の段を取るための試験)を受けるらしいのだ。

 ひなはせっかくなので女先生の試験を見ることにした。



 女先生の試験が始まり空手の型が始まる。

 空手の型とは突き、受け、蹴り、構えなどで決まった動作を行う、

 簡単にいえば空手の基礎を集合させた演舞みたいなものである。

 ひなは、その姿に衝撃を受けた。






 それは女先生のあまりの美しさに、だ。






 普段から美人で優しい女先生。その先生が長い髪を揺らせて真剣な表情、真剣な雰囲気、

 そしてとても綺麗でキレがある正拳突き、正面蹴り、構え、受け。

 それらすべてが、別々のものではなく、まるで生きているかのように

 ひなの目には映った。



 昇段試験は型と組手の2部門があり両方合格なら受かることができるのだが

 型の昇段試験は女先生含め、全員が終わり、

 女先生は次に組手審査に移った。

 



 ”組手”というのは

 空手を全然知らない一般の人達が、イメージで良く想像するであろう

 俗にいう、空手の「寸止め」ではない。(拳や蹴りが当たる寸前でぴたっ、と止めるよくある、あれ)

 防具を付けての”組手”は、いわば実際に防具をつけて闘うことであるのだ。


 拳や蹴りをしっかり相手に当て、ポイントを取り

 時間内にポイントを多くとった方が勝ちなのだが、

 力加減を間違えたり、ちょっと当たり所が悪かったりしたら

 大怪我につながるものでもあるのだ。



 女先生の組手審査が始まろうとしている。

 女先生の相手は、女先生より体が2周りくらい大きい男の選手だ。

 相手は、先生を女の人だからと言ってなめてかかっては、いない。

 男選手の真剣に勝負をするという気迫が

 空手を始めてまだそんなにたってないひなでも十分に伝わるほどだった。


「はじめ!!」


 組手審査が始まった

 相手の男選手は速攻で女先生に左突きを出しに行った。

 ひなが相手選手の突きのあまりの速さに驚いていたら、


 あっというまに、男選手の左拳が、女先生まで届こうとしていた。

 その瞬間!!





 《だんっ!!!!》





 とても綺麗で大きな1つの音が、若干遅れて聞こえた。

 この審査会場は大きく、周りに審査を受けに来た人、受けている人、また応援の人等、

 沢山の人がいるのに、

 その女先生の組手審査を見ていた人は、ただ、ただ、その音を聞くしかなかった。


 先に動いたのは先生より、2周りもでかい、とても強そうな男の人だったのに、

 もう少しで先生に左の拳が届きそうだったのに、


 女先生はたった一発、

 だけど恐ろしいくらい綺麗で威力があろう右回し蹴りを、男の左顔面に決めていた。

 相手の男は意識が少し飛んでいたのだろう。数秒してから道場の床に倒れた。

 組手審査員が女先生の赤色の旗を右手で高く上げる。



「1本!!それまで!!」



 周りの人々の歓声、拍手、拍手、

 ひなは目を輝かせて先生を見た。

 なんてすごくて、なんて強くて、なんて綺麗なんだろう。


 女先生は、組手審査が終わり、正座して防具を脱ぐとき

 綺麗な髪がなびいた。

 その時わたしは、

 視線に気づき、汗だくの顔で

 女先生の今まで見たことがない、


 最高の笑顔を、見た。


どんな芸能人より、アイドルより、私は綺麗だと、思った。



 ひなはその笑顔が心に焼きついた。




 自分もこんな人になってみたい、なりたいと本気で思ってしまった。

 心を、魅了されてしまった。女先生に。空手に。






 そして現代・・・・・・。




 ひなは宣明中学の3年生になった。

 ひなはあれからずっと空手を続けていた。小学2年生の時に見た、優しくて、綺麗で、

 とんでもなく強くて、髪の長い先生に心を惹きつけられたから。


 そのかいあって、ひなは体は丈夫になり、なかなか体調を崩さなくなった。

 そればかりか小学生時代は”小学生全国空手選手権大会”に出場できるほど強くなった。

 中学に入ってからはさらにその強さはまし、型でも組手でも、出場すれば必ず3位以内。

 小さい市の大会レベルなら、

 ほとんど女子部門で優勝してしまうほどの実力を身につけていた。




 さらに、空手の実力だけではなかった。



 間津離ひなは、誰もが認める、


 圧倒的、あっとうてき、圧倒的、美少女になっていた。


 誰もが認める美少女。

 その長い髪は風が透き通るために生まれたかのごとく、

 肌は白く、若さに満ち溢れ

 歩けばふわっと香り、

 まるで自分が花の楽園に迷い込んだ蝶々のように錯覚させられる

 そんな美少女であった。




 その可愛さゆえ、宣明中学では知らぬものなどいない存在となっていた。







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