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Mr.Enigma  作者: 浦辺 京
Episode2:Grasp all,lose all.
34/69

Episode2 #10 Unknown

 ジェームズがバート達の前から立ち去った直後、バートはすかさず彼の後を追いかけて行った。だが、影にでも潜んでしまったのか、あっという間に行方を眩まされてしまった。しかしそれがバートにしてみれば、はぐらされたかのような気がして癪だったわけで。

「ジェームズ!!」

 彼は改めてジェームズの名を呼んだが、返事はない。だが、奥から気配は感じた。彼は駆け足でそちらへと行き――そして。

 バートはその人物の前で、思いっきり叫んでしまったのである。

「ジェームズ!!」

「わあっ!」

 だが、目の前にいたのは全くの別人。

 路地の影で僅かに薄暗い中、しかしそれでもよくわかる金糸のような見事な金髪。その髪は肩まで伸びていて、それをワンレンにして下ろしている。そしてこれまた綺麗な緑色の瞳。薄暗い中ではあるが、緑であることには間違いはなさそうだった。

 更に透き通ったその肌は、血色が悪く思える程に白い。しかも一見すると男か女か分からない顔立ちだ。しかし、185cmはある身長と、服装―これまたきちんと整ったスーツ姿だ―で、男だとバートは判断した。30代ぐらいかもしれない。どちらにせよまだ若い。

 突然バートに叫ばれて、その人物の顔は驚きに染まり、そしてバートもジェームズではないことに驚いてしまっていた。

 ――まさか、ジェームズじゃないなんて、と。

 しかし、このままではまずいと思ったバートは、慌てて口を開いた。

「ああ、ええっと……すみません。人違いみたいで――」

 そこまで彼が言ったその瞬間。男はバートの口の前に自らの人差し指を出し、そしてうっすらと笑みを浮かべた。どうやら「しゃべるな」と言いたいらしいが、その行為そのものと、意図が汲めないためにバートはきょとんとするばかり。

「君、ベネー商会の社員?」

「……へ?」

 男の質問に、バートは更に目を丸くした。

「え、ええ。そうですけど……」

「じゃあ、ウィリアム・ベネーにこれ、渡してくれる?」

 そう言って渡されたのは――薄茶色の紙に包まれた、何か。中身は何か硬いものらしく、30cm程度の大きさだ。一体、これは何なのか。そう思ってバートは首を傾げたくなったが、しかしそれ以上に聞いておくべきことを思い出し、男の方を向いた。

「あの、失礼ですがお名前は――」

 そこまで問いかけたバートに、男は再びクスリと笑って、そして今度は自らの口元を自分の人差し指で抑えた。

 今度は、言いたくないということなのだろうか。

「彼に渡せばわかるよ」

「……え?」

 予想通りというか何というか。しかしバートはその言葉に更に凍り付いた。名前を名乗らないなんて、おかしい。

「じゃ、頼むよ」

 しかしその一方で、男は気安くバートの肩を叩き、どこか知らぬ方向へと行こうとしていたのである。

「いや! ちょっと! そういうの困ります!!」

 バートの言葉も聞かず、男は路地の奥へと消えていった。バートも慌てて男を追いかけたものの――どうやら今日は路地に好かれていないらしい。あっという間に男を見失ってしまった。

「あーあ……」

 思わず落胆。溜息一つを吐き、元の道を戻ろうとした矢先の事。

「バートー!!」

 クリスの、バートを呼ぶ声が聞こえた。しばらくするとクリスとライラが彼の元へとやってきたのだ。

「ちょっと! 何で突然ジェームズ追いかけに消えちゃうのよ!! もう! ジェームズもろとも影ん中に消えちゃうと思ったじゃないの!!」

 ライラがバートを見かけるなり、キンキン声でどなり、バートは思わず苦笑い。

「……まあ、『ジェームズもろとも』はともかくとしてさ。ジェームズも、ジュードも見っかんなかったろ?」

「……ああ」

 今度はクリスの問い。バートは落胆を込めて頷きを返した。それを見て、クリスはバートの肩を叩いた。

「大丈夫だって。ジェームズの奴さ、約束だけは守るから」

「……確かに」

 クリスの言葉に、納得しつつ頷きを返す。彼が何故、ジュードと戦わねばならなくなったのかは――彼が約束してくれた以上、必ず教えてくれるだろう。

「じゃ、帰ろう。ジェームズの車使ってさ」

「……そうだな」

 クリスに促され、バートが頷いたその時。そこで初めて、クリスはバートが持っていた紙袋を指さした。

「ところでさ、バート。それ何? さっき、ジェームズを追いかけた時はそんなの、持ってなかったよね?」

「ああ、これ?」

 ――これを言ったらあんまりいい顔はしないだろうな。バートは一瞬そう戸惑いはしたものの、しかし黙っているのもおかしいので、覚悟を決めて、口を開いた。

「ああ、その……。……誰だかわからない人から、渡されたんだ」

 バートのその言葉に、クリスは思わず、怪訝そうに眉根を寄せていたのであった――。

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