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Mr.Enigma  作者: 浦辺 京
Episode1:A bargain is a bargain
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Episode1 #12 Interests

「……何なんだ? ……あいつら、あんたの身内か?」

 しばらくしてから、眉間にシワを寄せて尋ねるバート。ジェームズは二人が去って行った方向を見ながら、ぼんやりとした様子で口を開いた。

「まあ、同業者……だね」

「同業者?」

 バートは目を見開いた。彼はその言葉に妙な違和感を覚えたからだ。

「あの同業者の人達もアンタらの"協会"の仲間っぽい気がしたんだけど。身内同士で縄張り争いなのか?」

「いや、身内じゃない。……でも、縄張り争いであることは認める」

「……どういう意味だよ?」

「僕は"トークス第一退魔師協会"の退魔師で、彼等は"トークス第二退魔師協会"の連中なんだよ」

「協会が二つあるのか……」

 それであそこまでいがみ合い、牽制し合っていたのだろうかと思うと、どこの世界でも派閥争いというものはあるのだな、と妙に納得してしまった。

「派閥か?」

「まあそんなとこだ。……GSCって知ってるか?」

「警備会社の?」

「ご名答」

 GSC。その名前はバートにとって、メディア―CMであるが―でよく耳にする名前だった。正式名称は『Gargoyle Security Company(ガーゴイル警備保障)』大体、GSCやガーゴイルなどと呼ばれていて、トークスでは『GSC』と言えばパッとその会社が浮かぶぐらいの有名な企業である。

 しかし、バートにはそのGSCと、協会が二つあることのつながりが分かるはずもなく。釈然としないまま首を傾げた。

「それと協会が二つあることと、何が関係あるのさ?」

 その一方で、ジェームズはバートの問いに、苦虫をかみつぶしたような、くしゃりとした顔のまま、口を開いた。

「……そこの社長が、第一協会に異を唱えて第二協会作った張本人なんだよ」

「え?」

 事の発端は20年ほど前の話らしい。トークスがスロニア連邦から独立して間もないころだ。完全に資本主義に移行した最中、GSCの現社長が現第一協会の存在を『市場を独占している』『カルテルまがい』などと糾弾したらしい。この指摘には当時の協会幹部も困惑した。


 そもそも退魔師という仕事は特殊なものだ。いくら表立った職業でないとはいえ、その地域の治安や安全に関わってくる。それに悪魔や幽霊などという、科学的に解明されていないものを取り扱う以上、それを退治しますなどと言えば一番重要になってくるのが信用問題だ。まず『ああ、この退魔師に任せておけば、まず間違いなく脅威はなくなる』という信頼があってこそ、仕事として成り立つというものだろう。

 したがって新人の育成にしてもある種の徒弟制度が存在していて、その上司なり師匠なりの下で実力をつけた退魔師が、独立して退魔の業務を行う、という形態が一般的であった。そんな中で協会は個人事業主たる退魔師をサポート、および管理するという役割を担った。

 例えばどうしても一人の退魔師では手に負えない悪魔が確認された場合、その仕事を協力してくれるような退魔師のあっせんを行ったり、他にも退魔師自体が不正―要するに悪魔を発生させるようなことを行ったり、あるいは依頼人との契約を破って報酬をだまし取るなどの行為―を監視したりなどが、協会の仕事となったのだ。そのため、退魔師は協会が管理する名簿に登録し、その名簿に登録した退魔師は時に協会の要請に応じることとなった。


 しかしそれを是としなかったのが、現GSCの社長であった訳だ。もっとも、GSC側としては、退魔師業界に新たに参入したかったという目論見があったのだが。

 時代の流れもあった。現第一協会の腐敗も少なからずあった。そしてGSC自体の影響力も大きかったため、現第一協会から脱退する退魔師が続出した。脱退者は当時の協会に登録していた三分の一にも及んだという。そしてGSCが母体となり、脱退者達が新たな協会『第二退魔師協会』を作ったのである。

 その後、GSCは主である警備業務のノウハウを生かし、退魔業界でもその実力を発揮した。当時最も業績を上げていたベネー商会の前身である退魔師事務所に迫る勢いを見せ、それに伴って第二協会が台頭するようになり、第一協会の影響力は急速に減っていくこととなった。


 現在ではベネー商会の前身の事務所の元所長が第一協会の会長の座に就任し、それに加えてウィリアムを理事に据えたことで何とか勢いを取り戻しつつある。結果として『ベネー商会対GSC』という構造が強化されることとなり、この二社の動向がすなわち二つの協会の勢力争いと一致することとなった。

「第一と第二って、他に違いがあるの?」

 バートの問いに、ジェームズはため息をついてから肩をすくめてみせた。

「いや。大体変わらない。組織の構造自体はな。まあいろんなものの定義が違うから……そこで退魔師の間で意見が食い違うこともあるだろうけど。でも、あとは利益の食い合いをしている有様さ」

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