彼女の記憶
誤字脱字が多いかもしれないので、余り酷かったら脳内で補完していただきたい。
ただ....笑うしかなかった、目の前の男はその肩に矢を受けながらも、必死に祈りをささげていたのだから。
私が男の肩の傷を抑えると、男は額に脂汗をかきながら私に微笑んだ。
つくづく馬鹿な男と私は思った、こんな状況、愛想笑いなんて・・・・
そんなことをする余裕なんて無かったのに、私は男に微笑み返してしまった。
自分の命よりも神を優先する男に、頑固者で、綺麗事しか言わない、理想主義者で、どうしようもないお人よしに、いつまでも私を子ども扱いする朴念仁に私は生きて欲しいと願っていた。
とある町では、神に祝福をする伝統があった、命は神からの預かり物で、いつか返さなくてはいけない、その儀式はそのときまで充実した生涯を送るための祈りなんだと。
だけど、私を祝福する人はいなかったと思う。
私が気づいた時にはもう、私は一人だったのだから。
寒い雪の中、古いバスケットに、私は捨てられていたらしい、おじさんが通りかけていなければ、私は犬に食べられていたんだと思う、そうして私は拾われた、それがただ唯一の、最初で最後の神の祝福だと思う。
私はその後もいろいろあって旅をしている、自分の普通じゃない身体、そしていくつかの道具と大切な剣と一緒に。
たまに旅をすることが好きなのかといわれるが、私はその答えにいつも決まって同じ返答をする。
「じゃあ、貴方は生きることが嫌いになったらやめるのか?」
私にとって旅は日常でしかなかった、当然のように歩き、休み、食事を探し、時には盗賊紛いのことも平然とやった、生きるために、出来ることをやっただけだ、誰にも否定はさせないし、誰にも迷惑をかけるつもりもなかった、ただこのまま、そうやって生きていくもの、そういうものだと、私は漠然と考えていたのだから。
私の生きている世界は説明が難しいほど面倒なことになっている、二つの考えが、お互いに戦争を生み、それからいつまでも同じことを繰り返している、私にとっては拾えるものが増えたり面倒ごとが増えたりで厄介なものだったが、私の生まれたときにそうだったから、私はそれになれてしまっている、今ではもうどうにでもなれば良いとおもってる。
私がそいつと出会ったのは、とある町での話しだ、そのとき私はお腹が減って泣きそうだった、泣いても助けてくれる人はいないし、野犬が寄ってきて余計疲れるだけだったから、泣きはしなかった。
少し先に町を守る扉が見えていたし、すぐ近くに農家も見えていた、心もとないが少しの金銭も持っていたし、食事を取ってそのまま帰るつもりだった、そんなことを考えながら、町に入ろうとした、そんなときの話だ。